ファッションショーからアウトレットモールまでもが出現!
これまでは単純にライヴを観たいという方々や、あるいはエイベックスのファンである客層だけをターゲットにしていた『a-nation』だが、昨年の変革後、より幅広いターゲットを見据えたコンテンツを用意している。
さらに小川氏は「今年は、コンテンツのブランディングをより深く行っています。『a-nation』が何をやっているのかという点については、昨年と比較にならない規模と計画でプロモーションに注力しています」と語る。
今年は去年に増して、他事務所、他レーベルの積極参戦がかなり目立つ。そしてライヴ以外でも、ファッション、フード、アトラクションなど多種多様な楽しみを強力に布陣している。
さらに今年は9日間限定で約50ブランド以上が集結したアウトレットモールを作ったり、人気女性誌9誌がプロデュースするファッションショーを日替わりで行ったり、100以上の日本や世界を代表するモデルが出演するとのこと。これも従来のライヴだけではなく、極端に言えばライヴに興味が無い層にも、来場客のターゲットゾーンを大幅に広げているといえる。
「変わりどころでは、フットサル大会もあるんですよ。このような感じで、一つ一つのコンテンツを大切にしたい。アイドルもあればロックもある。アニメもある。韓国・中国もある。一言で言うともはやジャンルという枠を超えたノンジャンル、いや……ないジャンルがないというべきでしょうか。」
一見なんでもありだが、ひとつひとつのコンテンツに手を抜くことは絶対にしないという姿勢を強く感じた。しかし、あるものが欠けている気がした。例えば世界的な人気を誇るテーマパークなどは、エントランスを入った直後から日常を瞬時に忘れる非日常世界が広がっている。ただのライヴではないエンタメ空間を目指す『a-nation』は、そんな”非日常の演出”をどうみせようとしているのだろうか。
「もちろん重視しています。開催場所は東京の国立代々木競技場ですが、しかし代々木にいる感覚にさせない。自分があたかもアメリカ西海岸にいるかのようなイメージの装飾を考えています。これはもちろん、ライヴだけではなく空間装飾もエンタテインメントのひとつと考えた結果です」
これを聞いて安心した。”非日常感の演出”はエンタテインメントでは重要要素である。今年の『a-nation』は、「単なる代々木第一体育館でのライヴイベントでしょ」という認識をみごとに消し去ってくれるだろう。
「エンタテインメントは、音楽だけじゃないぞ」
聞きづらい質問だが、やはり聞きたい。去年も変わって、今年も変わる『a-nation』。お話を伺うだけでもその大変さがにじみ出てくるのだが、あえて今年一番苦労している点を聞いてみた。
「代々木第一体育館のライヴだけでも、70から80のアーティストが出演します。しかもほとんどが他レーベル、他事務所のアーティストです。そこに対するキャスティングとブッキング対策が必須。また『a-nation』のコンセプトを完璧に理解してもらった上で出演してもらう、という流れを作り出すのが一番大変ですね」
また入場者が滞留するファッションショーやフードスペースの作り込みにも力を入れているという。ライヴという定時制のあるものに比べて、多種多様なコンテンツが並ぶ新しい『a-nation』の場合、観客の滞留時間が長くなった分、どうやって飽きさせないかという仕掛け作りが必須である。
「去年は『music week』というテーマで開催しましたが、昨年の反省を踏まえて、今年は”エンタテインメントは、音楽だけじゃないぞ”というコンセプトを明確にしたかった。音楽以外にもいろいろなコンテンツがあることを前面に出したいという気持ちが高ぶったんです」
その結果生まれたのが”island”というコンセプトだ。群島のようなイメージで、エリア=コンテンツの種類を明確に分けることによって、各コンテンツのコンセプトの見せ方が非常にわかりやすくなっている。今年の『a-nation』の成功の鍵は、この”island”という考え方の担うところが大きいのではないか。