『けいおん!』で大事なことは 唯たちの行動に耳を澄ますこと

(C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部
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――2009年に放送されたシリーズのことも振りかえらせていただきたいのですが、最初に原作の『けいおん!』を読んだときは、どんな印象でしたか?
 
「女子高生なのにギブソンのレスポールなんてナマイキだわ!」って思いました。本物の高価な楽器をしっかり持つ、というのが作品の良い“重し”になっています。
 
――山田監督は楽器を演奏するんですか?
 
いやいや、触ったことがある程度です! 楽器をやっていたとは言えません。
 
――女子高生を描くときに大切にしていたことは?
 
とにかく“唯たちを見つめる”ことでしたね。シナリオを最初に読むときもそうでした。唯たちが道具になってはいないか。ストーリーのために動かされてはいないか。唯たちの意識で動くことができるか。唯たちの動きに耳を澄ますことを大事にしていました。シナリオを作るときに、お話のためにキャラクターが動かすことは当然、私たちがやらなくちゃいけないことなんです。でも、唯たちにその役割を背負わせすぎると、『けいおん!』としてのバランスが崩れてしまう。唯たちは唯たちとしてしっかりと生活をさせておいて、そのうえで私たちが持っていきたい方向へお話を練り込んでいくことが大事なんです。「これはやらない」と作品の中に制限を作りたくなかったので、唯たちが楽しく過ごせるように導くのが大変でしたね。
 
――『けいおん!』という作品全体でどこに魅力を感じていますか?
 
音楽もストーリーも、どこか懐かしい。時代の最先端では決してない、昭和のような温かみがあることですね。私、80年、90年ぐらいの日本の音楽が好きなんですよ。外国の音楽だと60年代くらいからが好きなんですが。80年代の日本のヘンに盛り上がっている、多幸感がすごく好きで。あの80年代のお祭りのような感覚と、女子高生が持っている感覚って何か似ているんじゃないかと思うんですよね。音楽や劇伴をお願いするときも、懐かしいイメージでお願いすることが多いんです。テクノポップサウンドをお願いしても、昔ながらのテクノポップサウンドをお願いしたりして。「ちょっと懐かしい」を大事にしています、はい。
 
――映画『けいおん!』パンフレットでは「イモっぽく」とおっしゃっていますね。
 
そういう女の子が好きだというのもありますね。『けいおん!』は登場人物が高校1年生のころから物語を描いています。つまり、最初はついこの間まで中学生だったわけで、いってしまえば眉毛の手入れもしていない(笑)。そういう親しみやすさも、いろんな人がほっこりできる作品になると良いなと思っていたので。
 
――小さい子供たちに向けても作っていらっしゃるようですね。
 
むむ。私、5歳くらいの甥っ子がいまして、めちゃめちゃ『けいおん!』が好きなんですよね。5歳くらいの人が飽きないものを作れているんだと思うと嬉しいですし、そういう時期に観たものって忘れないですしね。そういうところは大事にしたいところだと思います。