前田敦子(写真:Fujimoto Kazuhiro)

 前田敦子が主人公の1人を演じるドラマ「かしましめし」が、4月10日からテレビ東京系で放送スタートする(毎週月曜午後11時6分~)。おかざき真里の同名漫画をドラマ化した本作は、美大を卒業後、同級生の自死をきっかけに再会したアラサーの男女3人が、それぞれの人生に悩みながらも、みんなで集まってはにぎやかな“おうちごはん”を囲み、やがて一緒に暮らすようになる物語。自死した同級生の元カノの小田千春を前田が演じ、千春と再会する同級生を成海璃子と塩野瑛久が演じる。前田がドラマの役作りや見どころ、さらには私生活での思い出深い食事のエピソードや、28歳で子どもを出産したときの心境などを語ってくれた。

-本作は、前田さんにとって独立後初、7年ぶりの民放連ドラ主演作となります。本作に懸ける思いを教えてください。

 自分では全く意識していなかったのですが、7年もたったのだなと感じています。今作では、千春たち同級生の3人がおいしいご飯を食べたり、準備したりしながら自然に会話していくので、見ている人たちの生活の一部のような感じで、何げなく見てもらえるような作品になればいいなと思っています。

-小田千春を、どんな人物と捉えて演じていますか。

 千春は自分をすごく持っていて、才能があるからこそ、何かにぶつかった後に、なかなか立ち直れないような人なのかなと思います。言葉数は多くないですが、1人の世界にひたっているわけでもなくて、千春のような子は現実の中で結構いるのではないかなと思ったので、周りにそういう子はいないかなと探して、参考にしながら演じています。

-成海璃子さんと塩野瑛久さんが共演すると聞いたときの感想を教えてください。

 成海璃子ちゃんは、デビューした作品でご一緒して以来、プライベートではよく同じカフェで会ったりしていたのですが、お仕事で共演するのがすごく久しぶりで。以前の作品も親友になる役だったのですが、今回はもともと親友の役なのでうれしいです。塩野さんは初共演ですが、すごくきれいな方で、原作の英治に見た目もぴったりな方だなと思います。見ている方にとって、癒やしのような存在になってくれるんじゃないかなと思います。

-おいしいご飯をみんなで分かち合うことが描かれる作品ですが、前田さんがこれまで食事をしてきた中で、一番心に残っているのは、どんなシチュエーションで食べた、どんな食事ですか。

 去年の秋頃に、京都に仲良しの趣里と一緒に2人で旅行したのですが、趣里が子どもの頃から行っている鶏鍋屋さんを予約してくれて食べたのが本当においしかったです。ちゃんとした外食をここ最近できてなかったなということを、そのときに改めて思いましたし、そのときの食事は、ここ数年の中でも特別においしくて楽しくて、全部が最高でした。

-一番幸せを感じる、好きなご飯のメニューは何ですか。

 私は基本的に年中、魚を食べているので、魚とお米と大豆と野菜があれば生きていけると思っているんです。だからこそ、たまにご褒美でお肉を食べたくなるので、お肉はすごく特別で。自分の中で日常的に食べる物ではないので、ここぞというときに、がっつりお肉を食べるのが幸せです。

-前田さんが、私生活で仲がいい友達と「おうちごはん」をして、幸せを感じたエピソードがあれば教えてください。

 私は子どもがいるので、友達とみんなでおしゃべりするときは、大体みんなが私の家に来てくれて鍋をやったり、出前を頼んだり、ご飯を食べながら楽しむことが多いんです。「何かジャンクな物を食べたいよね」「今日はチートデイ」と言って、みんなで食べたり、おしゃべりをしながら時間を過ごすのが好きなので、友達たちと、山ほど注文して食べたり、好きな物を入れたお鍋を作ったり、食べ物は大切な人たちとの交流の中では、絶対に真ん中にあるものだなと思います。

-元AKB48のメンバーや、今まで共演した芸能人と集まっておうちごはんを楽しむこともあるのでしょうか。

 友達がたくさんいる方ではないのですが、元AKB48のメンバーや共演した方たちと集まって楽しむこともあります。去年公開した映画『もっと超越した所へ。』という作品で共演した方たちが、みんな同世代だったので、すごく仲よくなって、みんなで私の家に集まって好きな物を食べたりしました。私が家でおもてなしをして、皆さんもお土産を持ってきてくれて、みんなで楽しく食べるという集まりはよくやるので、私もそういう意味では、千春に近い部分があるのかもしれません。

-物語に登場する3人は28歳で、恋愛をしても結婚がチラついたり、仕事上でも部下ができてきたりと、28歳という年代だからこその揺れみたいなものも描かれます。前田さんは28歳の頃を振り返るといかがですか。

 28歳は、ちょうど子どもを産んだ年です。私は26、27歳のときと28歳のときに人生で2回、ここからどっちに行こうかなということを考えたのですが、私は実際に行動することができて、あのときに子どもを産んでいて本当によかったなと思います。今1人でいたら隙間風が吹いてただろうなと感じますし、出産を経て、28歳の頃から自分の中でここを経験して良かったと思うものが見つかるまではいったんこれでいいのかなと思えたので…。自問自答ってずっと続くので、28歳という年代の心の揺れみたいなものは痛いぐらいに分かります。

-きっと同じように感じている人は世の中に多いような気がします。このドラマが、どんなふうに視聴者に伝わればいいと思いますか。

 おいしいご飯を一緒に食べられる人がいるのは幸せだなと思いますが、そういう人になかなか出会えないのが現実だと思うので、社会人として生きている方たちにとっては、箸休めのような時間になればいいなと思っています。私も誰かとご飯を食べようと思えたり、友達と集まって何かしたいなと思うきっかけだったり、こうしてみようというのが、たくさん転がっているドラマなので、皆さんにとって“幸せのヒント”があったらいいなと思います。

(取材・文/小宮山あきの)