数々の映画賞を受賞し、近年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22)の静御前役や、時代劇「まんぞく まんぞく」(22)で主演を務めるなど、若手実力派俳優として多彩に活躍し、注目を集める石橋静河。これまでに多くの人々を魅了し、社会現象を巻き起こしてきたアニメーション作品「エヴァンゲリオン」を、舞台ならではの演出による完全オリジナルの物語として舞台化する「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」に出演する。石橋に、本作への意気込みや見どころなどを聞いた。
-舞台版は「エヴァンゲリオン・シリーズ作品とは全く違うもの」と言われていますが、舞台化と、そこへ出演すると決まったときの心境は?
すごく面白そうだけどプレッシャーが大き過ぎるんじゃないかと思いました。当時は原作のアニメを見ていなかったので、内容も詳しくは知らなかったのですが、熱烈なファンの方たちがいる作品だとは知っていましたし、それを舞台化するというのはとても難しい挑戦だなと感じていました。ですが、(シディ・ラルビ・)シェルカウイさんと仕事がしたいとずっと思っていたので、彼が原案・構成・演出・振り付けをされると聞いて、こうした大変な作品で一緒にそこに挑戦できることはなかなかないことだと思ったので、出演することを決めました。
-しかも、新宿の新たなランドマークとなる東急歌舞伎町タワーの新劇場THEATER MILANO-Zaのこけら落とし公演となります。
本当にビッグプロジェクトです(笑)。なかなか経験したことのない規模感なので、大きいプロジェクトなんだというのを常々感じていますが、あまり恐れ過ぎずに、勢いに乗っかれたらいいなと考えています。
-原作となる「エヴァンゲリオン」の印象は?
出演が決まってからアニメシリーズを見ているところです。普段は出演する作品の原作を読んだり、見たりはあまりする方ではないんですけど、今回は知っておきたいという思いが強かったんです。やっぱりとても面白い作品です。現代の現実の問題とつながっている気がするけれど、それをエンターテインメントに昇華させているのがすごいと感じています。ただ、アニメに没頭し過ぎてしまうと、舞台では新たなオリジナルストーリーを作ろうとしているので、あまり情報を入れ過ぎずに舞台の脚本を大事にしていこうと思っています。
-本作の見どころは?
いろんなメンバーがそろっていて、物語の面白さやアクションシーンという見どころはいっぱいあると思います。いろいろな舞台装置や舞台表現を使っていて、視覚的な面白さが満載ですが、やっぱりアナログな人間の力を最大限に使っていくので、実物大のエヴァンゲリオンが立ち上がって戦うというわけではなく、それをお客さんが想像できるように私たちが手伝うようなものになると思います。そうしたものが見えてくる作品になったら、きっと「エヴァンゲリオン」の新しい舞台オリジナル作品になるんじゃないかと思います。
-憧れのシェルカウイさんの演出作品へ出演することで楽しみなことは?
やっぱり自分がステップアップできたらいいなと単純に思います。演劇、ダンス、舞台美術を総合的に創造している方なので、出演する側もその垣根を自分の頭の中から取っ払って、自分の限界を越えていかなきゃいけないと思っています。一緒に作品作りをするだけでもすごくたくさん影響をもらえると思うんですが、それをもっと自分が能動的にやることで、見えてくるものがあるんじゃないかと考えているので、一緒に仕事をすることで起こる自分の内面の変化みたいなものが楽しみです。
-そのシェルカウイさんの印象は?
すごく物腰が柔らかい方で、演出でも「こうしろ」と命令するのではなく、「こういうイメージでやりたいんだけど、やってみて」という感じで、「そうしたら、もっとこういう風にできるかな?」というように続けてくる方です。ですが、みんなをまとめていく方だから、物腰が柔らかいだけでなく、バランスがすごくいい方です。
-それでは、稽古はやりやすいですか。
やりやすいですが、求められるレベルが高過ぎて(笑)。物腰はすごく柔らかいんですが、実はめちゃくちゃ厳しいことを言ってくるみたいな感じなので、プレッシャーもめちゃくちゃあります(笑)。
-主演の窪田正孝さんの印象は?
窪田さんとは初共演で、お会いしたこともなかったんです。ですが、すごく信頼できる人柄という印象があったので、新しいものを作っていくときに、窪田さんが主演であるならば、一緒に戦える気がすると思いました。
-特務機関「メンシュ」の現場指揮官イオリを演じるに当たって考えていることは?
登場する14歳の少年少女たちとは違うけれど、イオリの上にはメンシュの最高司令官、叶サネユキがいて、その間でどっちのことも理解しつつ、ある意味それで葛藤もする人という印象の役柄です。それは私の今の状況にも近いんです。私は新人とか若いわけでもないし、ベテランでもないし、その間にいて、実際にそのもどかしさみたいなものがあったりするんです。そういう自分の普段から持っている感覚と役をつなげられたら、それがSFでもかけ離れすぎずに演じることができると考えています。
-2022年は時代劇での活躍も印象に残っているのですが、本作のようなSF的な作品への出演について考えていることは?
あまりそこを意識はしていません。時代劇は、その時代に沿った表現や衣装など全部が史実で決まっているものがあるので、それを一つ一つ教えてもらって、その時代背景を知った上でのこういう言動なんだというものがあるんです。それは学ばなくてはいけない部分が多いので大変なんですけど、そこが面白い。ただ、今回のようにSFとなると自分たちの想像力の方がもっと大事になってくると思うので、こうだと決めつけずに、柔軟でいたいと考えています。
-ビヨンドは「越える」などの意味ですが、プライベートでさらに超えたいと思っていることは?
自分の中に自分でストップをかけてしまっていることがあって、自分の中に眠っている力とか、自分の中にまだ使ってないものがいっぱいあるような気がします。こんなすごい作品に出演することで、限界をプッシュされてそれが出てくることがあると思うので、それをどんどん解放していって、そういう風に自分を越えていきたいです。
(取材・文・写真/櫻井宏充)
「舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド」は5月6日~28日に、都内・THEATER MILANO-Zaで上演。公式サイト