「ゆるやかな曲線で、奇抜な彩り。心がほぐれる感覚がして、もっとこの人の絵を知りたいと思った」。4月27日(木)~8月20日(日)東京都美術館で開催されている、『マティス展』で音声ガイドのナビゲーターを務める上白石萌歌。20世紀を代表するフランスの巨匠・マティスの作品との出会いをそう語った。それは、2019年に訪れた展覧会でのこと。その後、大学では芸術学科で西洋美術の授業を受け、マティスについても学んだそう。
 そんな彼女にとって、約20年ぶりに約150点のマティス作品が紹介される今回の大回顧展は「自分が携わらなくても5回くらいは行く予定でした」というほど。それだけに、音声ガイドの収録も気合は十分。
収録を通して作品を見つめたなかで、特に気に入っているのは『赤いキュロットのオダリスク』だとか。「ナレーションを読むなかで部屋の装飾などもマティスの手作りだと知りました。彼自身もこの絵にこだわりがあるような気がするし、早くこの目で見てみたいですね」
また、『金魚鉢のある室内』は「見ると心が涼むというか、リアルな絵柄じゃないのに金魚が動いているように見えたり、窓の向こうの町から音まで聞こえてくるような感覚になったり、すごく不思議な魅力があります」。『背中』などのブロンズ像も「作家がどういう風に人を見ているかが一番現れるのが彫刻なのかもしれません。例えばモチーフが女性だったら、どういう女性が理想なのか。立体だからこそ、より意図を感じられそう」と着目していた。
そして、「ご覧になる方それぞれの見方を自分の主観が邪魔してしまわないように、でも情報はきちんと伝えることを意識」するようにしたのだとか。「皆さんに寄り添って、作品に流れている文脈、世界をお届けできることが音声ガイドの魅力。それに、私も絵についてけっしてすごく詳しいわけじゃありません。でも、行けば絶対に感じとれるものがあると思うので、とりあえず足を運んでほしい。心の潤い、栄養になりますから」と語ってくれた。
彼女の声と共に色鮮やかなマティスの世界を味わうこの展覧会は、東京都美術館で4月27日(木)~8月20日(日)まで開催。

上白石萌歌
2018年公開の映画『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。数多くのドラマなどへの出演で今注目の若手女優。

取材・文:金井まゆみ