Kindle Scribeの使用感をレポート

【木村ヒデノリのTech Magic #164】 YouTuberがこぞって紹介していたKindle Scribe。長く使ってその真の力を発見した。これまで紹介されていたのはノートがスムーズに書けることや本の表示が早いこと。しかし真の実力は他の部分にあった。実は自炊PDFとの組み合わせが最強だったのだ。複数PDFも一括で転送できるようになったKindle Scribeはもはや読むだけのツールじゃない。これができるなら一家に1台欲しいかもしれない。

本を読まない人も欲しくなる新世代Kindle

Kindleと聞いて「自分は本(電子書籍)を読まないので」と選択肢から外していたそこのあなたは一度試してみたほうが良い。Kindle Scribeの書き心地は抜群なので、使い始めればほどなく紙のメモを使わなくなるだろう。

これまで色々なところに散らばっていたアイデアややることメモなどが1カ所にまとまるだけでも便利だが、Kindle Scribeの良いところは他にある。それはPDFの保管に使えることだ。

これまでのSend to Kindleに加えて、WebサイトでもPDFの送信が可能になった。これによって数秒でデスクトップからPDFを送信でき、整理しておける。基本的に読むという使い方のPDFはPC上に入れておいても読みづらいし、マニュアルなどは道具の横で読みたい時がある。そんな時にKindle Scribeは抜群に便利だ。

資料をフォルダに整理しておいても意外とパッと出せないことも多い。Kindleに入れておけばすぐに出せるし適度な大きさで読めて完璧だ。PDFなら自在に書き込める特典もあるので、プライベートだけでなく業務でも活躍するだろう。

流し読みができる電子書籍リーダーはほかにない

本を読むことに関しても抜かりはない。これまで電子書籍リーダーで問題だった「流し読み」がほぼ可能になっているのだ。

画面の左右を長押しすると高速でページが送られるが、それぞれのページが目視できるようになっている。これまでの電子書籍リーダーでは体験できなかった読み方だ。ぱらぱらっとめくる感覚で前後に進めるので「あれ、この本に載ってなかったかなー」という書籍と同じ読み方ができる。

この読み方を味わってしまうと、もうiPadですら不便に感じる。電池も1ヶ月くらい放っておいても使えるくらい長持ちなので安心だ。これまでKindleが培ってきた電子書籍リーダーの機能性が凝縮された最高のデバイスと言えるだろう。

音大生必見、楽譜はもう全部これでいいんじゃない?

音大出身者として音大生は全員買うべきだと言っておきたい。そのくらい楽譜と相性が良い。PDFで楽譜が入れられるのはもちろん、サラサラっと書き込める。さらにメモの背景には五線も用意されていて専用デバイスかのように使うことができてしまう。

これまで筆者はiPadやGVIDO(グイド)を使ってきたが、書き込みのしやすさからKindle Scribeに統一した。

推奨ではないが、サードパーティ製のペンが使えるのも良い。筆圧や傾きはタブレット側で感知しているようなので、別のタブレットについてきたペンでも純正ペンのように書くことができた。もちろん純正のほうが良いのだろうが、様々な形状のペンが作れる選択肢が広くオープンにされているのでユーザーにとっては嬉しいところだろう。

荒削りな部分もあるが、このKindleは誰もが欲しくなる

インフルエンサーの紹介で「Kindleの本には書き込めない、書き込めても下の枠に表示される」と思っている人が多いがそうではない。PDFと組み合わせればKindle Scribeはさまざまな場面で活用できるのだ。

これまで自炊で書籍をPDFにしてある人なら絶対買うべきだろう。業務でPDFの資料を多用する人もだ。顧客に説明するときに書き込みながら説明して書き込んだものを後で送信する、という使い方もできるだろう。

荒削りという表現をしたのは、こうしたPDFと本で機能性が分けられているからだ。例えば前述した流し読みの機能はPDFでは使えないのが残念。逆に検索できる形式にしてあってもPDFではテキストの検索が使えない。

また自炊本の表紙を設定したり、ページをどちらに送るか設定したりすることもできない。こうした機能は一般的な電子書籍リーダーには必ずある機能なので今後のアップデートで盛り込んでほしい。

PDFでも読み飛ばしができるようになったり、逆に本でも自由な場所に書き込みができるようになったりと双方の仕様が統一されてくると一層使いやすくなるだろう。ハードとしての実用度は非常に高いデバイスなので、今後のソフトウェアアップデートに期待したい。

■Profile

木村ヒデノリ

ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】

https://www.youtube.com/rekimuras

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