5月30日(火)、浅草の街に和太鼓の音が鳴り響いた。40年以上にわたって世界各地で演奏活動を行ってきた太鼓芸能集団「鼓童」が、2023年6~7月と10月、新作『いのちもやして』(演出:池永レオ遼太郎)で浅草公演を皮切りとしてツアーを開催する。それに先立ち幼稚園や小学校で、また “門付け”としていくつかの店舗、そして最後は浅草公会堂で、熱のこもった演奏を披露したのだ。
浅草公会堂では、まず建物の外で和太鼓と鳴り物による2曲を披露。彼らを待ち構えていたファンはもちろん、通りすがりの人々の耳目を一気に惹きつけた。そのまま公会堂1階に移動し、笛も加わって畳みかけるように演奏していく。観客は老若男女問わず、さらに浅草だけあって海外からの観光客も多く、ノリも抜群。自然と手拍子やかけ声を発して、フロアは一体となった。
予定していた演奏が終わると、すぐに観客からアンコールの声が。メンバーも熱気冷めやらぬ様子で、笛で、そして全員で、鼓童の人気楽曲「彩」を演奏。高らかにフィナーレを飾った。
「鼓童の活動でも、街中で太鼓を叩くことはほとんどない。不安はありましたが、皆さんすごく喜んでくださって何よりです。門付けは感謝の気持ちを伝えることが一番。この先、鼓童と浅草が共に歩んでいく一助になったと思いますし、今後も続けていきたい」と池永は語る。
『いのちもやして』で鼓童としては初めて、女性奏者・米山水木がひとりで大太鼓を叩くという。
「女性の太鼓打ちとしては、本当にすごいチャレンジだと思います。米山と話していると、鼓童に限らず日本で芸事を極めようとする女性にはさまざまな壁があると感じます。強く根付いた偏見やステレオタイプなものの見方を、自分たちの手でどんどん覆していきたい。そのためにも、彼女がまっさらな気持ちで大太鼓に向かえるような筋書きを創りたいと考えています」
鼓童では佐渡の伝統芸能・鬼太鼓を地元の方から教わり、要素として組み込んだ楽曲も創作している。今回の舞台では、各集落に伝わる鬼太鼓を基にした新曲も予定。まさに“温故知新”な創作を行っているのだ。
「能面をつけた表現や、新しい衣裳もある。僕たちのいろいろな挑戦を見ていただくことで、お客様にとっては元気や勇気が出るような舞台にしたい」和太鼓によって浅草に新風が吹き込む、そんな期待が高まる公演は6月22日(木)より。
取材・文:金井まゆみ