はたして『クロコーチ』で描かれる真相とは?

では、『クロコーチ』では三億円事件をどう描いているのか。警察官と警察OBによって組織された桜吹雪会が、三億円事件を契機に作られたということだが、7話の時点では、その理由がまだハッキリとしていない。

沢渡(渡部篤郎)や桜吹雪会の創設メンバーのひとりで元捜査一課の遠藤(山本學)は、犯人=少年Sが警察官の息子だったため、警察の威信を守るために真実を隠蔽したと話している。

しかし、毎回描かれている45年前の映像では、同じく桜吹雪会の創設メンバーである公安の城尾(眞島秀和)が、事件現場の近くに現れている。

しかも、少年S(小出恵介)が逃走用の車に乗り換える現場に来て、そこで三億円を受け取っている。逃走ルートまで知らなければこの現場には来られないはずなので、公安が最初から三億円事件そのものを画策したとも考えられる描写だ。

当時の日本は、安保闘争に揺れていた状況。だから警察の失態は許されなかったのか。それとも他の大きな事件に国民の目を向けさせる必要があったのか。

公安の城尾は、少年Sは自殺したということにして、少年Sに他の名前を与えている。それが現在は警視庁公安部で庶務係をしている高橋で、演じているのは森本レオ。『ショムニ』でも庶務二課課長を演じていたので、森本レオといえば庶務だ。

もし、三億円事件を少年Sが起こしたのなら、今も公安で働いているというのはちょっとおかしい。やっぱり公安の企画に少年Sが協力したと考えるほうが自然なのだろうか。いずれにしても、城尾はすでに亡くなっているので、高橋が今後どんな話をするのかに注目だ。

遠藤も7話の最後で殺されてしまったので、これで桜吹雪会の創設メンバーは全員いなくなり、城尾からあとを託された沢渡が桜吹雪会の事実上のトップに立ったと思われる。そして、設立の経緯はどうであれ、今の桜吹雪会は沢渡を中心に最悪の方向に動き始めているのは確かなようだ。

これを黒河内と清家がどう追い詰めていくのか。三億円事件の真相はどう描かれるのか。
最後までしっかり見届けたい作品だ。

 

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。