「お囃子」というと、お祭りで聞こえてくる軽快な鉦や太鼓の音を想像してしまうもの。ところが“あの音”はもちろん、もっと洗練された形で演奏を行い、歌舞伎などの舞台を支えているのが邦楽囃子だ。その魅力を知ってもらうため、囃子方の望月秀幸と望月左太寿郎が始めたのが、ライブユニット「お囃子プロジェクト」。第19弾となる今回は、「四拍子(しびょうし)」と呼ばれる締太鼓(しめだいこ)、大鼓(おおつづみ)、小鼓、笛の演奏に加え、ゲストに尺八やアコーディオン、ウッドベース、長唄三味線、さらにパーカッションの実力者も参加。洋楽から昭和歌謡まで多彩に聴かせるステージとなっている。
取材場所に入ると、ちょうど「お囃子体験教室」が始まるところ。テーブルにズラリと並べられた楽器は見慣れないものばかりだ。それもそのはず、囃子方が演奏するのは、「四拍子」を含めて約50種類。 歌舞伎の舞台では「雨や風、川の音、鳥や虫の声、お寺の鐘の音から幽霊が登場する音まで、どれも囃子方の担当なんですよ」と秀幸。実際に左太寿郎が奏でてみせると、たちまち歌舞伎の舞台が目の前に現れるかのよう。教室に参加していた子どもたちも大喜びで、手にした楽器から音が鳴るたび目を輝かせていた。
「普段は舞台のために、役者さんのために音を奏でているのが囃子方。じゃあお客様のために演奏するとなったら何ができるか、それが『お囃子プロジェクト』のテーマになっています」と秀幸は話す。13年前にライブを始めた頃は、古典の曲とコラボレーションの曲が5割ずつだったが、最近はコラボレーションが9割で古典が1割になっているという。左太寿郎も、「ゲストのミュージシャンの方たちに助けていただきながら、洋楽や日本の歌謡曲とミックスしたり、アレンジしたりしてお届けしています。特に美空ひばりさんや西城秀樹さんの曲に、邦楽囃子は合うんですよ」と笑う。「秀樹さんの曲は、アレンジしたときに完成形がパッと思い浮かぶくらい」(秀幸)というから、驚きだ。
バラードの曲では、「湖のほとりで聞こえるような、柔らかい波音を入れています」(左太寿郎)と、サラリ。楽曲作りはもちろん“効果音”の演奏まで当たり前に盛り込めるのは、囃子方ならでは。他にもクラシックやラテンの曲など、盛りだくさんで展開する本ライブ。トークコーナーでは舞台の貴重な裏話も聞けるというから、興味のある人なら見逃す手はないだろう。
公演は9月29日(金)文京シビックホール・小ホールにて。
取材・文/藤野さくら