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『JFK 新証言 知られざる陰謀 劇場版』(11月17日公開)

 1963年11月22日、オープンカーでダラス市内をパレードしていたアメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディが銃撃され、死亡する事件が起こった。容疑者として拘束された元海兵隊員のリー・ハーベイ・オズワルドも移送中に射殺され、真相は闇に葬られることとなった。

 事件から28年後、オリバー・ストーン監督が独自の視点で事件の真相に迫った映画『JFK』(91)が世界的にヒットし、翌92年には新たな法案が可決され、膨大な文書の機密が解除されるなど、事件の再調査が注目されたが、結局真実は解明されぬまま今日に至っている。

 この映画は、新たに解禁された数百万ページにおよぶ文書の中から重要と思われるものを再検証し、事件の目撃者をはじめとする関係者へのインタビューから浮上した“新たな証拠”を深く掘り下げて描いたドキュメンタリー。『JFK』と同じくロバート・リチャードソンが撮影を担当。ナレーションはウーピー・ゴールドバーグとドナルド・サザーランドが務めた。

 この映画を見ると、犯行に使われたとされる「魔法の弾丸」の存在など、事件を調査したウォーレン委員会の報告が、いかに欺瞞(ぎまん)に満ちたものだったのかということがよく分かる。もはやオズワルド単独犯説に信ぴょう性は薄く、興味は動機と真犯人の追及にある。

 その点でこの映画は、ストーン監督が『JFK』では描き切れなかったことを知らせようとする執念の一作だが、さまざまな人々が目まぐるしい証言する情報量の多さに辟易(へきえき)するのは否めない。つまりは映像と編集を駆使して主張するストーン独自の一種のプロパガンダ映画であるという言い方もできるだろう。

 そうなると、この映画や『JFK』のほかに、事件は元CIA幹部を中心としたグループが立てた計画を複数犯が実行しながら、オズワルドを単独犯として仕立て上げたものとした『ダラスの熱い日』(73)、さまざまな関係者を登場させ、事件前後の4日間を描いた群像劇『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(14)などを見れば、この事件をもっと多角的に捉えることができるはずだ。

 ラストのケネディ賛辞のくだりを見ながら、ベトナム戦争を回避させるためにタイムマシーンでケネディ暗殺の当日に飛び、彼を救うという『J.F.ケネディを救え』(作スタンリー・シャピロ)という小説のことを思い出したが、もしケネディが暗殺されずにいたら、果たしてアメリカのベトナム戦争への本格介入はなかったのか、アメリカはよりよい方向に進んだのだろうかといった想像が頭をもたげた。

『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』(11月17日公開)

 決してほほ笑まない、謎めいた少女モナ・リザ(チョン・ジョンソ)は、12年もの間、精神病院に隔離されていたが、赤い満月の夜、突如として他人を操る特殊能力に目覚める。

 自由を求めて施設から逃げ出したモナ・リザは、サイケデリックな音楽が鳴り響き、刺激と快楽に満ちたニューオーリンズの街にたどり着く。そこでさまざまな人々と出会ったモナ・リザは、不思議な能力を発揮して、月に導かれるように新たな世界を切り開いていく。

 独特の世界観で注目されるイラン系アメリカ人のアナ・リリー・アミールポアー監督が、オリジナル脚本で手がけた長編第3作。他人を操る特殊能力を持った、エキセントリックでミステリアスな少女モナ・リザが、居場所を探しながら繰り広げる逃走劇を描く。

 モナ・リザを利用するシングルマザーのダンサー、ボニー・ベル役をケイト・ハドソンが演じ、そのほかにエド・スクレイン、人気コメディアンのクレイグ・ロビンソンらが共演。撮影は『ミッドサマー』(19)など、アリ・アスター作品を手がけたパベウ・ポゴジェルスキが担当。

 「次世代のクエンティン・タランティーノ」と呼ばれるアミールポアー監督によるポップな感覚にあふれたダークなおとぎ話。極彩色に彩られた夜のニューオーリンズのサイケデリックで刺激的な映像が印象に残る。ただ、タランティーノの映画同様に癖が強いので、好みは分かれる気がする。

(田中雄二)