「大手の商社に勤めて年収が高く肩書きもある夫は、パート勤めで家事や育児を支える私を小馬鹿にするのが当たり前でした。

『もう少し子どもたちの世話をしてほしい』とお願いすれば『誰のおかげで生活できていると思っているのだ』と毎回返され、自分の苦労ばかり言われ、文句を言う私は『出来損ないの嫁』と義実家でも笑われていましたね……。

それでも離婚しなかったのはふたりの子どものためで、いつしか『この人の稼ぐお金だけあてにしよう』とまともな夫婦関係を諦めていました。

親がすでに病気で他界している私は頼れる親戚も遠く、自分の収入では子どもたちに満足な暮らしをさせられないのはわかっていたので、『この子たちが就職するまで』と腹をくくっていましたね。

嫌だったのは子どもたちの前でも私を『もっとちゃんとしろよ』と責めることで、そのたびに感情の消えた心で謝りながら、子どもたちがどう思うのかばかり気にしていました。

そんな苦労が報われたのは、長男が大学の進学で県外に出ると決まったとき。

合格はうれしいけれど寂しさいっぱいで涙ぐむ私に、『◯◯はまだ進路を迷っているけど、家を出ても俺たちはお母さんの味方だから』と長男はきっぱりした声で言ってくれました。

父親に懐かず笑い声も少ない家庭で、私を恨むときもあったと思うのに、『お母さんが耐えてきたのを見ているから』と言われたときは、涙が止まらなかったですね。

本当は離婚してほしかったのかもしれないとそのとき思いましたが、それでも、仮面夫婦を続けてきたつらさが和らぐようでした。

次男はまだ家にいて夫とも何とかやっていけていますが、この子が家を出るときは、私が自分と子どもたちのために離婚の決断をするタイミングだと思っています」(40歳/小売業)

仮面夫婦であったことがよかったとは決して言えませんが、それでも子どもたちは母親の苦労をちゃんと理解していたとわかるのは、少しでも胸がすくのではないでしょうか。

「こんなことを言わせるなんて」とあとになって苦しくなった、とこちらの女性は話していましたが、懸命に家庭に尽くしてきたのは事実です。

子どもたちの思いを無にしないためにも、次は自分のための人生の決断を、考えたいですね。

プロフィール:37歳で出産、1児の母。 これまで多くの女性の悩みを聞いてきた実績を活かし、 復縁や不倫など、恋愛系コラムライターとして活躍中。「幸せは自分で決める」がモットーです。ブログ:Parallel Line