(左から)奥平大兼(スタイリスト:伊藤省吾〈sitor〉/ヘアメーク:速水昭仁 〈CHUUNi〉)、鈴鹿央士(スタイリスト:梶原浩敬〈Stie-lo〉/ヘアメーク:永瀬多壱〈VANITES〉)(C)エンタメOVO

 日本の劇映画で初めて「eスポーツ」を本格的に取り上げ、実在の男子学生をモデルに、eスポーツの全国大会を目指す学生たちの姿を描いた青春ドラマ『PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』が、3月8日から全国公開される。本作で、徳島県の高等専門学校に通う郡司翔太を演じた奥平大兼と1学年先輩の田中達郎を演じた鈴鹿央士に話を聞いた。

-最初に脚本を読んだ時の印象と、実際に演じてみてどう感じたか。難しかったとか、楽しかったとか、そのあたりから聞かせてください。

奥平 最初に脚本を読んだ時は、もちろんゲームの魅力もありますが、本当に今っぽい青春映画だなという印象が強かったです。今の若い子からすれば普通の感覚でも、親の世代とか、大人から見たら、また新しい価値観を感じるきっかけになるんじゃないかなと思いました。クランクインする前に、(古厩智之)監督と翔太について話し合った時に、「若い君たちの世代の感覚をお芝居に出してほしい」と言われたので、一生懸命やりました。本当に自由にやらせていただいたので、それほど大変なことはなく、楽しかったことの方が多かったです。

鈴鹿 もともとゲームが好きなので、最初は「eスポーツのゲームだって。やった。うれしいな」と思いました。ただゲームをして、大会を目指して頑張るというのではなくて、彼らが日々過ごす中で、楽しそうな顔をしている裏でネガティブなものを抱えていたりするというのも見えてきたから、いろんなものを抱えている3人の高専生が、一生懸命に頑張っている姿は、きっと見る方たちにも届くだろうなと思いました。だから、その一員として頑張ろうと思ったのが一つです。でも達郎は、一番勝ちに執着しているというか、勉強ができればいい、正解をすればいい、ゲームにも勝てばいいという、勝ちや正解にしか価値を見いだせないようなキャラクターだったので、それを崩し過ぎずに、ほかの2人と混ざっていけるのかなと考えながらやるのが難しくはありました。でも、苦しくはなくて、2人ともすごく楽しみながらお芝居ができたので、楽しかったです。

-共演してみて、互いの芝居の好きなところや、役との向き合い方について聞かせてください。

鈴鹿 (奥平さんは)生きているというのが見える人なので、「いいな、すごいな」と思います。お芝居でも引っ張ってくれるし、「こうしたい」というのはあまり言わないけれど、 僕が困っている時にお芝居でも言葉でも言ってくれたりもしたので、すごく助かりました。

奥平 央士くんも(チームの一員の小西亘役の)小倉(史也)さんも、僕にはできないことができる人たちだなと思っています。僕もまだお芝居を始めてからそんなに時間がたっていないですし、万能な頭を持っているわけでもないので。ただ今回は、監督から「自由にやって」と言われたので、そうしていました。撮影中は、すごく大変なシーンもあったんですけど、その時に、僕の頭では分からないようなことについて、央士くんが「じゃあ、こうしよう」と言ってくれたりもしました。お芝居を見ていても、僕とは違ったベクトルで考えているので、見ていて面白いんです。だから、一緒にやっていて、「きっとこう来るだろうな」と想像しているのとは違うことをしてくるから、自由にリアルにできたところもありました。そこは素直に尊敬できるところですし、一緒にお芝居をしてみないと分からなかったことでもあります。

-奥平さん、監督から最初に言われたことは、具体的にはどんなことだったんですか。

 確か「翔太は、失うことで得る人」みたいに言われて、最初は意味が分からなかったんですけど、やっていくうちに、確かに翔太は失うものも多いけど、失うことによって何かを得るんだと思いました。撮影現場では自由にしていましたが、翔太にとってターニングポイントになるようなシーンでは、そういうことを考えながら演じました。基本的には、翔太は優しい子という印象が強いです。でも、優しいが故に、ちょっと情けないところもありますが、そこは、優しくしようと思ってお芝居をすればいいのかなと。自由にやって、駄目だったら監督が何か言ってくださると思ったし、監督を信じてやっていました。

-鈴鹿さんは、キャラクターについて、監督から何か言われたことはありましたか。

 監督から、「達郎は、人を人として見ていないひどいやつ。先生に対しても、自分がすでに分かっていることを教える人だから、意味のないことをやっている人だとか、ゲームができない人や自分よりも下手な人は、本当にそういう感じで見ているんだよね。でも、そういう人が一緒に戦う仲間ができて、この2人と一緒にゲームをして、目指すものがあって…と進んでいく中で、何かが開けていくところや、閉ざしていたものや、見ないようにしていたところにも視点が行くようになっていく」という話がありました。達郎は成長していくキャラクターなので、僕もその変化みたいなものは考えました。限られた時間の中で、どこら辺から翔太を許せるようになるのか、ゲームの下手なところもちゃんと見ていられるようになるのかなと。それは、家族に対してもそうだし、自分に対してもそうだし…。でも、そう考えていても現場でいろいろと変わるので、現場でやってみてという感じでした。

-今回は、実際にゲームのプレーはしたんですか。

奥平 していません。僕らがやった後に、プロの方々とスタッフさんたちがそれに合わせた映像を撮ってくださいました。だから完成版を見た時はびっくりしました。このゲームは、プレーするのがすごく難しくて、すごい技もやっていたので、僕らのお芝居のスピード感に合わせてやってくださったのがすごいなと思いました。

-この映画を経験して、もっとゲームがうまくなりたいと思いましたか。

奥平 僕はうまくなりたいというよりも、楽しんだ方がいいなと思いました。強くなるのも大事ですけど、そればかりだと楽しめない。まさに、この映画のタイトルのように、勝つとか負けるとかは、どーでもよくて、楽しめればいいみたいな感じです。

-最後に、映画の見どころも含めて、観客の皆さんに向けて一言お願いします。

鈴鹿 まずeスポーツを題材にした日本初の劇映画というところです。そのeスポーツと青春物語が、すごくいいバランスで描かれています。それから、ゲームの画面や僕らがプレーしながら盛り上がっているシーンは、やっぱり大きなスクリーンで見ていただきたいと思います。ぜひ、このワクワクと躍動感、臨場感をスクリーンで味わっていただきたいです。

奥平 1ゲームファンとして、こうして映画化されたのがうれしいですし、この映画を通して、eスポーツのことをもっと知っていただけたらと思います。今の若者の価値観や常識が詰め込まれた作品になっていると思うので、大人の方が見たら、驚くことがあるかもしれません。ただ、学生の時に何かに本気になった思い出があるのは、とてもいいことだと思うので、この映画を通して今の学生の人たちにそういうことを知っていただけたら、とても意味があることだと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)