大手町で富山が売っている。東京メトロ大手町駅、東西線ホームの上にある西出口を出て左、歩いてすぐの場所だ。まさかこんなところで富山が買えるとは。特に目を引いたのがホタルイカだ。富山といえばホタルイカ。生でよし干してよし茹でてよし焼いてよし。あらゆる調理法でビールのつまみにぴったり。特に浜干しや沖漬け、酢味噌和えなんかは最高だ。今年はホタルイカが例年にない豊漁だという。ここでは「ほたるいかの浜干し」を、豊漁のおこぼれとして通勤の途中でも買える。ほかにも「氷見はとむぎ茶」「しろえびせんべい」を一口サイズにした「しろえび小判」、鯛をかたどったカマボコ「豆鯛」、しょうゆベースの黒いスープで有名なブラックラーメンなどもラインアップ。よくよく見ると、黄色い洗面器でおなじみのケロリンのボディタオル、入浴剤「パパヤ桃源」なんかも扱っている。富山好きにはたまらない。
これは富山県が設置している、いわゆるご当地自動販売機。羽田空港にもあるという。「富山県のブランド力アップ」を狙った事業で、2023年度は、自販機の設置費用やレンタル費などの事業費が470万円。うち、デジタル田園都市国家構想交付金で半分が国から補助されている。ちなみに、22年度の売り上げは658万円で人件費を入れても黒字だった。メディアにも毎年何件か取り上げられ、ある程度のPR効果も出ているようだ。事業は18年度にスタート。コロナ禍初年の20年度にはやや売り上げが落ちたが、21、22年度と着実に売り上げを伸ばしている。ちなみに、22年度の売り上げトップは、やはり「ほたるいか浜干し」で、2位の「素干し糸するめ」の3倍近くを売り上げている。さすがホタルイカだ。
東京で各地の名産が買える場所といえば、有楽町駅前にある東京交通会館が有名だ。「北海道どさんこプラザ」を筆頭に、「徳島・香川トモニ市場」「秋田ふるさと館」「上越妙高 雪國商店 新潟食の蔵」、沖縄の「銀座わしたショップ本店」などが軒を連ねる。もちろん富山も「いきいき富山館」を出店。各地の名産がよりどりみどりで、なかなかに楽しい。「連休なのに、どこにも行けない」という人にも、ちょっとした旅行気分が味わえる場所だ。とはいえ、実際に店を構えるとなると、それなりに経費もかかる。一等地の有楽町なら、なおのこと。しかし自販機だけなら、富山の例から2カ所で、年間500万円程度でいけそうだ。地方都市のPRとして、自販機作戦はなかなか面白い。食品はもとより焼物や布製品、そのほか、ちょっとした小物など自販機で売れそうなものはたくさんある。地下鉄の駅に、あちこちから集まった地方自慢の自販機が並ぶようになれば、それだけで楽しそうだ。
面白い自販機といえばアラブ首長国連邦の首都アブダビの金の自販機だ。総工費が世界一高額といわれていた超豪華ホテル「エミレーツパレス」に設置されていた。ぜひ見たいと、のこのこ出かけて行ったのだが、結局誰も買わないという理由で撤去したという。現物は拝めなかった。残念。さて富山の自販機。本拠地の富山駅には「ますのすし」の自販機もあるという。こいつも、ビールのつまみとしてなかなかの手練れ。「ますのすし」なら、売れずに撤去なんてことはないだろう。この連休は無理だったが、折を見てぜひ一度見に行ってみたい。(BCN・道越一郎)