北杜市の長坂コワーキングスペース

【デジタルな仕事でスローな八ヶ岳暮らし・11】僕が暮らしている山梨県北杜市では、定期的に市営コワーキングスペースで異業種交流会を開催しています。僕も都合がつくときは、できるだけ参加するようにしています。地域でスモールビジネスを営んでいると、こういう異業種交流で得る知見とか人脈って大事なんですよね。

のんびり起業のスモールビジネスが多い

僕は今、「田舎でのんびり起業」って文脈で起業支援コミュニティプログラムを立ち上げています。これは僕自身が八ヶ岳で起業・独立して快適に暮らしているんで、同じような暮らしを目指す人を応援しよう、という目的で始めました。

今回も(これまでも)この異業種交流会に参加して感じるんですが、八ヶ岳ってのんびり起業(スモールビジネス)の人が多いんですよね。自分が暮らしていける収入を得るために働いているけれど、必要以上にガツガツ働くのではなく、自分が楽しめる範囲で働く。そんな人たちです。

ほら、起業ってなんかすごくハードル高く感じるところもあるじゃないですか。でも、あれってユニコーンとかベンチャーを目指すから大変なんです。実はスモールビジネスを目指すなら、そこまで起業のハードルって高くはありません。自分ひとり(もしくは家族)が暮らしていけるだけの収入があればいい、と考えると年商数百万円でも暮らせるものです。

もちろん、そこまで贅沢な暮らしはできないですよ。生活コストの適正化は必要です。でも八ヶ岳のような田舎で暮らしていると、そこまで生活コストをかけなくても楽しく暮らせるものです。

起業の業種はさまざま

異業種交流会に参加する人の業種はさまざまです。今回は民泊系とデジタル系が多く参加していましたが、他の人もユニークです。パン屋を営みながら、バードカービング(鳥の姿を木の彫刻で作るもの)を活用しようと考えている人。アレルギーや持病のある人が、自分専用の備蓄食を作れる施設を建てようとクラファンした人。なかなか珍しい仕事ですよね。

この手のユニークなビジネスをやっている人の話は面白いですよ。僕は主に不動産運用とコンサルティングを営んでいるので、店舗や工場などの実業を持っている人の話はいつも興味津々です。他にもペンション経営、地域イベント企画、写真家、アウトドア関連、アート・クラフト作家など、本当にいろんなことが仕事になるんだなあ、と思います。

スモールビジネスのいいところはお互いに狭い市場で勝負しているので、同業同士でも競合というより仲間の関係になれることです。同じ宿泊業、同じ飲食業であっても常連となる顧客層が異なるのでお互い競合になりません。そもそもご近所同士、そんなにギクシャクして暮らしていくのも大変ですものね。

かつての商店街仲間の空気に近いのかもしれません。実際には商店街のように同じ業種が並んでいるのではなく地域に点在しているのですが、心の商店街のようなつながりですね。

新しい事業アイデアも

今回は民泊系とデジタル系の参加者が多かった、とお話ししましたよね。僕はまだ民泊をやっていませんが、不動産運用(賃貸)とデジタル系コンサルティングが事業の柱なので同業同士の話も楽しいものです。

例えば民泊の場合、みんなの共通の悩みは清掃業者の不在。八ヶ岳エリアってリネン屋とか清掃業者がいなくって民泊運営しようと思ったら自分で動かないといけない部分が多いんです。それってオーナーの負担が大きいし、複数物件を運用しようとしたら体が持ちませんよね(そこまで集客できるのかは別として)。

でもデジタル系の人を交えて雑談しているうちに、隙間時間で清掃とリネン交換をバイト感覚でやりたい人をリスト化してウーバーイーツの配達員やタイミーのように共有していく仕組みも作れるんじゃないかって話題になりました。八ヶ岳はスモールビジネスが多いので、時間の融通が効く人もたくさんいます。ビジネスは波があるので、ちょっと現金収入を増やしたいな、って時にはお互いWin-Winになるんじゃないか、という話です。

他にもハードウェアエンジニアとWeb系、プログラマーなどで雑談していて簡易な農業IoTのアイデアも出てきました。いわゆる、害獣対策や盗難防止のセンサーです。八ヶ岳にはJAに参加しているような大規模農家もいますが、むしろ個人や家族でやっている小規模農家もたくさんいます。そこでは、害獣対策や盗難防止に大きな投資ができません。でも、ラズパイ(Raspberry Pi)とローラ(LoRa)を組み合わせるような簡易IoTなら費用も賄えるのでは、というアイデアです。

八ヶ岳の起業家をギルドのように

八ヶ岳のフリーランスでギルド的に連携することで、新しいビジネスも生み出せるかもしれません。Webを作れる人、ロゴなどのデザインができる人、ちょっとしたアプリを作れる人、写真家、動画編集など、1人1人のスキルは狭くてもギルドとしてなら大きなこともできそうです。

今、空き家問題や小規模農家の工数軽減はどの地域でも課題になっていることです。もしかしたら、八ヶ岳のフリーランスギルドが社会課題を解決する日がくるかもしれません(でも背伸びせずに楽しめる範囲でやっていきます)。異業種交流会は参加する度に新しい刺激があるので本当に楽しみです。

これからも八ヶ岳暮らしのリアルをお届けしていきます!

今回は、八ヶ岳暮らしというより八ヶ岳でスモールビジネス起業をしている人たちについてお伝えしました。とはいえ、移住と起業は表裏一体。フルリモートワークや居住地自由化を認めている一部の会社に勤めている人以外には、地域での起業が現実的な仕事になります。

僕は「田舎でのんびり起業」という文脈で、背伸びした起業ではなく自分の時間や暮らしを優先したスモールビジネスでの地域起業をおすすめしています。この起業モデルに興味のある人は「ヤツビジ(https://tmr-llc.jp/yatsubiz)」をご覧ください。

次回も八ヶ岳暮らしのリアル、ワーケーションや地方移住について詳しくお話ししていきますね。あなたの働き方、暮らし方がハッピーでありますように!(TMR・玉利裕重)