「昔、家出をしたことがあります。息子の反抗期や娘の素行の悪さで家にいても気が休まることがなかった私は、ある朝息子が壁に投げつけて割れた茶碗を片付けながら『もう限界だ』と思いました。

夫は子どもたちのことは私に丸投げで向き合うこともせず、仕事に逃げて毎日帰宅が遅い状態で、同じく仕事をしている私の大変さなど考えたこともなかったと思います。

その日は仕事が終わってから市内の実家に向かい、突然の訪問に驚く母親にすべてを話しました。

『そうはいっても、あなたが家を空けて子どもたちは大丈夫なの?』と母には言われましたが、正直に言えばもうどうでもいいと思っていました。

その夜は誰からも連絡はなく、それを見ていっそう惨めさが募りましたが、そのとき考えたのが離婚です。子育てから解放されたらこんな家はもう出ようと心に決めて、次の日には家に帰りました。

数年後、子どもたちの就職が何とか決まり、静かになった家のなかで『さあこれからどうしよう』と思ったときに、夫から離婚を切り出されました。

私が離婚を言い出す側で、夫から言われるとは露も思っていなかったので驚きましたが『昔、お前が家を捨てて出ていったときから考えていた』と冷たい声で言われ、衝撃が消えました。

『母親が無断で家を空けるなど言語道断』『無責任にもほどがある』と苦々しい口調で言う夫を見ながら、『この人は、私の気持ちなど本当にいっさい考えないのだな』と思ったら、逆にこれに乗って離婚するのが大正解なのだと、すぐ気持ちが切り替わりましたね。

夫婦の会話などとっくに消えた家庭で、夫は自分から離婚を言い出すことで私にショックを与えたかったのだと思います。

『そうね、私も離婚したかったからちょうどいいわ』と普通の声で返したら、夫は黙りました。

それからすぐ実家に連絡してひとまず身を寄せさせてもらうことを決め、すぐに別居。

子どもたちにはそれぞれLINEで報告しましたが、『そうなんだ』と冷めた反応で、私たちのことなど特に関心もないのがわかりました。

トントン拍子で離婚話は進み、『二度と言及しない』という約束で財産分与もし、別れることができました。

夫には『こっちから離婚を切り出して傷つけてやる』という気持ちがあったのかもしれませんが、長年の不和でとっくの昔に愛情など消えていた私には、まさに『渡りに船』でしたね」(50歳/総務)

こちらのケースでは、女性は自分が過去にしたことについて夫から「家庭の一大事だぞ」と言われたそうです。

その「一大事」をすべて女性の責任とし、自分については反省もしない人間と、この先同じ屋根の下で平穏に暮らしていけるでしょうか。

離婚を攻撃の切り札に使う人は多いですが、その姿こそ相手にとっては絶好の離別のチャンスになることもまた、よくあります。

熟年離婚でかえって幸せになれるケースといえますね。

プロフィール:37歳で出産、1児の母。 これまで多くの女性の悩みを聞いてきた実績を活かし、 復縁や不倫など、恋愛系コラムライターとして活躍中。「幸せは自分で決める」がモットーです。ブログ:Parallel Line