秋風羽織(豊川悦司)の漫画家事務所「オフィス・ティンカーベル」でアシスタントとして働くゲイの美青年ボクテ(藤堂誠)を演じる志尊淳。ドラマ10 「女子的生活」でのトランスジェンダー役に続き、ゲイというセクシャルマイノリティーのキャラクターを演じ、「責任を感じる」という志尊が、その胸中や、役の見どころなどについて語ってくれた。
-朝ドラ初出演ですが、オファーを受けたときの感想は?
朝ドラはたくさんの方が見る作品でもあるし、出たいという願望もあったので、すごく楽しみでした。今までとは違う表現ができたらなと思いました。
-ゲイの美青年という役柄についてはいかがでしょうか。
セクシャルマイノリティーの方に偏見を持つ人が多い1980、90年代が舞台ですが、決してハンディキャップとはせずに、アシスタント仲間の一人が、たまたまゲイだったというだけなので、劇中でもそんなに言及されていません。それよりも、純粋なところを見せたいし、口調や服装、髪形、身に着けるものの細かい部分で、ボクテくんらしさを出していきたいです。
-とはいえ、「女子的生活」での、見た目は女性だが実は男性というトランスジェンダーの役は大変話題になりましたし、このドラマでもゲイの役を演じることには注目が集まっています。なにか特別な思いはありますか。
「女子的生活」に主演してからは、LGBTの役に対して責任を感じるようになりました。このドラマでも、ボクテくんを“イロモノ”にしたくないという思いが人一倍強く、表面的な描き方にならないように、クランクイン前から何回も監督やプロデューサーと話し合いました。ボクテくんがゲイであることはあまり描かれてはいないけれど、ゲイの役である以上は責任を持って演じています。
-役との出会いが、ご自身に大きな変化をもたらしたようですが、他の作品で役者人生の転機になったようなエピソードがあれば教えてください。
去年、「春のめざめ」というストレートプレーに初めて挑戦したときに、何かが変わったと思いました。本番2日前まで、演出の白井晃さんから「こんなんじゃ幕は開けられない」と言われていて、自分でもよく分からなくなっていたときに、一度、振り切ってやってみたら「これだ!」と言われたんです。自分ではその感覚は分からなかったけど、白井さんいわく「殻を破った」そうで、自分では感じないことでも大切な経験になっていると思いました。ドラマ「植木等とのぼせもん」は、その舞台を関係者が見にきてくださって、オファーにつながったので、そういう一つ一つの積み重ねで今ができていると感じています。
-ボクテは「金沢の鬼才」と呼ばれるほど漫画家としての才能を持っていますが、志尊さんご自身に漫画家としてのポテンシャルはあるのでしょうか。
一番苦手、といっても過言じゃないぐらい絵が苦手です…。なので漫画家の先生に一から指導してもらいましたが、想像以上に大変な職業と感じました。シーンをこなすごとに慣れてきましたが、ぺン入れや、トーンを貼ったり、ベタを塗ったりするときは、集中力が必要で、お芝居と合わせてやらなければいけないので、とても難しかったです。
-ボクテは漫画家としての才能がある一方、呉服屋の跡取り息子ですが、人生の展開はどうなるのでしょうか。
ボクテくんが自分で引き起こしてしまったことが、後悔になり、成功にもなる部分が描かれています。人生を懸けて失敗を成功にすることがテーマのドラマなので、天真らんまんで優しいだけでなく、失敗を見たところから自分ではい上がっていき、筋を通して生きているという二面性をしっかりと表現していきたいです。
-朝ドラ特有の長い人生を演じることについてはいかがですか。
悩んでいます…。例えば、さっき撮った場面と、次に撮るのとでは10年ぐらい離れているので、どうしようかなと思いますが、ボクテくんはキャラが強いので、18から30歳はあまり変えずにいこうかなと考えています。たとえ、漫画家として売れて見た目が変わっても、純粋でかわいげがあるところは残していきたいです。大きく変えるのは30代からだと思うので、それまでは扮装でごまかしていきたいです(笑)。
-ボクテの恋愛事情も気になりますが。
男性にポッとしたり、キュンキュンするときはあります。秋風先生には、恋愛対象としても、憧れの男性としてもキュンとします。一番「美しい…」となってしまうのは律(佐藤健)くんに対してです。美しいからこそちょっかいを出したくなって、台本には書かれていないけど、自分で勝手に設定を立てて健くんに近づいて、「また近づいてきた…」って煙たがられています(笑)
(取材・文/錦怜那)