パナソニックホールディングス(パナソニックHD)とPHP研究所は11月27日、松下電器産業(現・パナソニックHD)の創業者であり、PHP研究所の創設者である松下幸之助の理念継承を目的とした人物再現AIを開発したと発表した。
パナソニックの目黒ビルで出迎える創業者 松下幸之助
創業者の経営理念を社員が正しく理解し、次の世代に継承
パナソニックグループでは、社員が「社会の発展への貢献」を実践する際に経営基本方針を拠り所としている。そのため、その経営基本方針の基となる創業者 松下幸之助の経営理念を社員が正しく理解し、時代を超えて受け継いでいくことが重要であると考えている。
松下幸之助から直接薫陶を受けた人物が年々少なくなるなか、グループ内で創業者の理念を探究・啓発し、次の世代に継承していくことを目指し、最先端の技術である生成AIを活用することとした。
PHP研究所には3000本にのぼる音声資料
また、PHP研究所では、創設以来、創設者である松下幸之助のPHP理念(繁栄によって平和と幸福を)研究を継承、その啓発の一環として出版事業、産業教育事業を展開してきた。
その基となってきたのは、創設者自身の3000本にのぼる音声資料であり、PHP研究所の研究はこのテキスト化を端緒にデジタル化を進め、その生産性を高めてきた。
生成AI技術の開発は、従来の研究課題の検証に新たなアプローチを与え、これまで不可能であった学際的な研究にも革新的な手法により挑戦できるものと期待している。
パナソニックグループでは、実世界の幅広い事業領域で、くらしの課題を解決する新しい製品やサービスを生み出すため、AI技術の研究開発・社会実装に取り組んでいる。
今回、PHP研究所が保有する、松下幸之助の著作物や講演・対談等の膨大な発言記録・音声データをもとに、パナソニックHDが人物再現AIを開発した。
「責任あるAI(Responsible AI)」の考え方のもと開発
同グループは人間を中心にした「責任あるAI(Responsible AI)」の考え方のもと、常に対象となる“人とユーザー”を尊重し、人を中心にした開発プロセスを実践している。今回の開発でも「責任あるAI」の考え方に基づき、著作物や映像、音声などの記録を活用して、“人の思考と話し方を究極的に再現するDigital Human”生成にチャレンジした。
また、この取り組みは、東京大学大学院工学系研究科 松尾・岩澤研究室の松尾豊教授が技術顧問を務める松尾研究所と共同で開発を行った。
今後、パナソニックHDとPHP研究所の両社は、松下幸之助から直接薫陶を受けた人物や松下幸之助研究者などの専門知識を取り込み、様々な状況や事例で「松下幸之助ならどう考えるのか」、「松下幸之助ならどのような経営判断を行うのか」など、より深い経営面での示唆を提供することのできる人物再現AIを目指していく。
また、パナソニックHDでは、今回の「松下幸之助」再現AIの開発を通して獲得する知見やノウハウを生かして、例えば多様化する顧客の要望に対応できるパーソナライズドLLM(大規模言語モデル)技術など、今後の製品やサービスに応用するための研究開発を進めていく。