数百年にわたりコツコツとこうじを使ったお酒を造り続けてきた職人の努力の賜物。登録はゴールではなくスタートライン。


鏡開きで「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録を祝う 【写真左から、「全国本みりん協議会」村松浩一郎会長、「独立行政法人酒類総合研究所」福田央理事長、「日本酒造杜氏組合連合会」中川博基副会長、「日本酒造組合中央会」大倉治彦会長、「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」小西新右衛門会長、「九州本格焼酎協議会」多田格会長、「伊丹市」藤原保幸市長】

全国約1,600の酒類(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)メーカーが所属する酒類業界最大の団体である日本酒造組合中央会(以下、中央会)では、「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことを祝い、「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」(以下、保存会)及び日本酒造杜氏組合連合会(以下、日杜連)とともに「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録記念セレモニーを、市立伊丹ミュージアムにある国の重要文化財「旧岡田家住宅・酒蔵」(兵庫県伊丹市)にて開催しました。

セレモニーでは、日本酒・本格焼酎・泡盛・本みりんなどに関わる全国の酒造関係者が一堂に集まり、一般参加者も含めた約80名が参加しました。冒頭の代表挨拶では、中央会の大倉治彦(おおくらはるひこ)会長から「数百年にわたりコツコツとこうじを使ったお酒を造り続けてきた職人の努力の賜物。これを機に国外でこれらのお酒の価値が見直され、大々的に売上が増えることを大変期待している」という挨拶で開会しました。

続いて、来賓を代表して伊丹市の藤原保幸(ふじわらやすゆき)市長から、「お酒との関わり、お酒を生かした街づくりを伊丹市の柱にしてきた。日本の伝統的酒造りが世界に認められ伊丹でセレモニーができ大変嬉しい。」という挨拶をうけた後、保存会の小西新右衛門(こにししんうえもん)会長による鏡開きの口上から「ヨイショ、ヨイショ、ヨイショー!」の掛け声とともに鏡が開かれ、会場では盛大な拍手が沸き起こりました。その後、参加者へふるまわれた日本酒で乾杯をおこない、会場が一つになりこの度のユネスコ無形文化遺産への登録を祝いました。

「中央会」大倉治彦会長による代表挨拶

「保存会」小西新右衛門会長による乾杯の発声

丹波流酒造り唄保存会による「酒造り唄」披露

また、時計のない時代に、酒造りの各工程を作業を行いながら唄うことで、作業のリズムや、作業時間の目安としてはかる際などで使われてきた「酒造り唄」も、丹波流酒造り唄保存会により披露され会場を盛り上げました。

関係者からの祝辞でも、 「酒造りに関わる方の想いと、感性が深く理解されたものと思う」、 「日本の酒は世界に二つとないもの。」など口々に想いを語るとともに、文化庁高橋一成(たかはしかずなり)参事官からは「文化庁としても、この素晴らしい文化を日本だけでなく世界に向けて広げていきたい。」といった趣旨の挨拶があるなど、業界全体として「伝統的酒造り」のユネスコ無形文化遺産登録に対する多くの期待の言葉が寄せられていました。


パネルディスカッション
後半のプログラムでは「伝統的酒造りの価値と継承」をテーマにパネルディスカッションが行われました。司会進行を行った保存会の宇都宮仁(うつのみやひとし)副会長からは「長い間こうじ菌を使って最適な条件で生育する工程を工夫して、職人たちが伝統的な製法で酒を造り続けている。また、祭礼や結婚式、通過儀礼など社会的文化面ともつながりがある。日本の国としてこれらの伝承を行ってきた事などが評価され登録へ至った。」と登録となった経緯を説明。



保存会の小西会長からは「ユネスコ無形文化遺産への登録はゴールではなくスタートライン。農家や酒造りに携わる人たちだけでなく、様々な関係者の底上げになる機会。伝統的酒造りを将来にどうつないでいくのかなど引き続き考えていきたい。」とコメント。


左から「酒類総合研究所」福田央理事長、「丹波杜氏組合」小島喜代輝相談役
これまで約60年間にわたり酒造りを行ってきた丹波杜氏組合の小島喜代輝(こじまきよてる)相談役からは、「毎年この時期になると、仲間の杜氏から、新酒の良いお酒ができたと喜んで電話がかかってくる。今の時期はお正月用のお酒を一生懸命搾っており、みんな子供を育てるように大事にお酒を造っている。そういう仕事を杜氏・蔵人たちが続けていることが、今回のユネスコ無形文化遺産に登録された。涙が出るほど喜んでいる。」とコメント。



酒類総合研究所の福田央(ふくだひさし)理事長からは、人材育成について「1905年より、酒類醸造講習を継続し人材育成を行ってきた。今年からは講習の目的の中に、伝統的酒造りの継承というものも含み実施しているところ。」 と人材育成の重要性について話されました。
九州本格焼酎協議会の多田格(ただいたる)会長からは「本格焼酎は、人間の知恵で切り開き時代に応じて変化してきている酒。今後の本格焼酎がどのように変化していくのか楽しみにしてほしい。」とコメント。

全国種麹組合の今野宏(こんのひろし)理事長からは「10万種類もある菌類の中で酒を造るたった1つのこうじ菌を見つけ出し、醸造文化を作り上げてきたことは驚愕すべきこと。」「これまで酒造りの黒子としてこうじ菌を供給し続けてきた。」などとコメント。



左から「全国種麹組合」今野宏理事長、「九州本格焼酎協議会」多田格会長

こうじの話題に関しては、このほか、関係者からも、「種麴(たねこうじ)メーカーがいなければこれだけ安定して酒造りが出来なかった。世界で最初のバイオテック企業と言う方もいるほど。」「酒造りの世界では、一、こうじを学ぶ、二、酒母を覚える、三、もろみを学ぶ、という順番があるように、酒造りはこうじが基本。」といったコメントがあり、「伝統的酒造り」におけるこうじの重要性についても多く語られました。

その後も、参加者からも引き続き、様々な質問や意見が寄せられ、白熱した議論が展開されました。


「中央会」佐浦弘一副会長による閉会の挨拶
閉会の挨拶では、中央会の佐浦弘一(さうらこういち)副会長より、関係者へのお礼の言葉と共に「多くの方が言っていた通り、今回のユネスコ無形文化遺産への登録はゴールではなくスタートであると考えている。皆さまからも沢山の取り組むべき課題もいただいたと思っている。次の世代への継承・発展に向かって取り組んでいきたい。」という言葉とともに、この度のユネスコ無形文化遺産への登録の喜びと、次世代へ継承していくという想いを伝え閉会となりました。



会場からも多くの拍手があり、この度のユネスコ無形文化遺産への喜びと、「伝統的酒造り」の未来へ向けた多くの期待が伺えるセレモニーとなりました。

「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産登録記念セレモニー概要
【日時】2024年12月8日(日) 14:00~16:00(受付開始:13:30~)
【会場】市立伊丹ミュージアム 旧岡田家住宅・酒蔵 (兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20)
【主催】日本酒造組合中央会、日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会、日本酒造杜氏組合連合会
【後援】伊丹市
【協力】公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団
【対象】招待者(行政関係者、業界関係者)、一般参加者
【内容】
1. 代表挨拶
・日本酒造組合中央会 会長 大倉治彦
2. 鏡開き・乾杯
・日本酒造組合中央会 会長 大倉治彦
・日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会 会長 小西新右衛門
・日本酒造杜氏組合連合会 副会長 中川博基
・九州本格焼酎協議会 会長 多田格
・全国本みりん協議会 会長 村松浩一郎
・(独法)酒類総合研究所 理事長 福田央
・伊丹市 市長 藤原保幸
3. 来賓祝辞
・東京農業大学 名誉教授 小泉武夫
・鹿児島大学 名誉教授 鮫島吉廣
・日本醸造学会 会長 北本勝ひこ
・(一社)和食文化国民会議 代表理事会長 伏木亨
・国税庁 酒類振興・輸出促進室長 遠山秀治
・文化庁 参事官 高橋一成 
4. 酒造り唄披露
・丹波流酒造り唄保存会
5. 伝統的酒造りの価値と継承
<登壇者>
・日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会 会長 小西新右衛門
・九州本格焼酎協議会 会長 多田格
・丹波杜氏組合 相談役 小島喜代輝
・全国種麹組合 理事長 今野宏
・(独法)酒類総合研究所 理事長 福田央
<司会進行>
・日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会 副会長 宇都宮仁
6. 閉会挨拶
・日本酒造組合中央会 副会長 佐浦弘一


<日本酒造組合中央会について>
全国約1,600社の酒類(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)メーカーが所属する酒類業界最大の団体。酒類業界の安定と健全な発展を目的とし、1953年に設立。「國酒(こくしゅ)」とされる日本酒、本格焼酎・泡盛について情報発信することで、国内外へ幅広く認知向上させる活動に取り組んでいる。
https://japansake.or.jp/common/about/
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