「“おざなり”にするなよ」「“なおざり”にするなよ」というように、日常生活や仕事で使うことのある二つの言葉。それぞれの発音が似ているため、「どういう意味なんだろう」「どっちが正しい言い方なのか分からない」など、よく分からずに使っている人も多いのではないだろうか。実際には微妙に使い方が異なる“おざなり”と“なおざり”だが、どのような時に使うのが正解なのか、言葉の意味と成り立ちをみていこう。
御座敷で芸者が何かをする様子
(画像はイメージ)
大きな違いは“行動”を起こしているかどうか
まず「おざなり」は、漢字で「御座形」や「御座成り」と表し、“御座”とは「御座敷遊び」のことを指す。宴会の席(御座敷)で、芸者が客に表面上だけの言動で適当に場をごまかす様子から、「その場逃れのためにいい加減な言動をする」といった意味合いで使うのが「おざなり」だ。
一方の「なおざり」は、漢字で「等閑」と表し、“そのまま”という意味の「なほ(直)」と、“しない”という意味の「せざり」を組み合わせたのが語源といわれている。また、「ざり(去り)」は「遠ざける」という意味もあり、「そのまま放っておいて何もしない」といった、いい加減な様子のことを「なおざり」という。
「おざなり」も「なおざり」も“いい加減”という意味においては同じだが、それぞれの大きな違いは「“いい加減”であっても、何かしらの“行動”を起こしているか」という点だ。
例えば「おざなり」は、宴会の場で芸者が客をもてなすために、何かしらの“行動”を起こしている。反対に「なおざり」は、そのままの状態で何もせず“行動”すら起こしていない。つまり“行動”を起こしているかどうかという部分が、二つの言葉を区別する大きなポイントといえる。
どちらの言葉を使うのが正しいのか迷ってしまった時は、行動しているかどうかでイメージすると分かりやすいだろう。
言葉の使い分けに混乱してしまう「おざなり」と「なおざり」だが、それぞれ違いを理解しないまま「おざなり」にも「なおざり」にもしないように、使い方には気をつけていきたいものだ。(フリーライター・井原亘)
■Profile
井原亘
元PR会社社員の30代男性。現在は流行のモノや現象を追いかけるフリーライターとして活動中。ネットサーフィンとSNS巡回が大好きで、暇さえあればスマホをチェックしている