控除の見直しのあった年は年末調整や確定申告の際に注意が必要だ

【家電コンサルのお得な話・274】 年末調整といえば、以前は指定の書類にボールペンで書き込むしかなかったが、今は企業によっては指定のオンラインフォームに必要事項を入力して送信するといったオンライン方式を採用している。本記事では、従来の「紙の書類への手書き」を想定して説明するが、勤務先の年末調整がオンライン方式の方は「書く」を「入力する」、「書類」を「入力画面」に置き換えて読んでいただきたい。

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https://www.bcnretail.com/market/detail/20251111_571679.html

控除の見直しのあった年は年末調整は要注意

さて本題に入ろう。2025年12月の年末調整では、昨年までと書く内容が少し変わる。理由は、基礎控除や給与所得控除の見直しに加え、新しい控除制度が始まるためである。なお、給与所得控除については55万円から65万円に引き上げられている。

原則、確定申告をする必要のない給与所得者にとって、年末調整はその年の「税金の最終調整」といえる。書類に記載する内容を間違えると、払いすぎた税金が戻らないこともある。そこで、今年の年末調整で気をつけたい3つのポイントを整理しておく。

まず一つは、「扶養控除等申告書」の書き直しである。改正により、扶養の対象となる親族の所得要件が変わった。たとえば、子どもや配偶者の収入が昨年より少し増えても、今年から扶養に入れるケースがある。年末調整の前に、配偶者など家族の年収をざっくり確認しておくといい。該当しそうなら、会社から配られる「扶養控除等(異動)申告書」を新しく書き、提出する。これを出さないと、会社は正しい税額を計算できない。

もう一つは、「特定親族特別控除申告書」という新しい書類である。聞き慣れないが、これは19~22歳の子どもがいる家庭向けの新制度だ。大学生の子を持つ親などが対象で、申告すると最大63万円の控除が受けられ、その分、負担が軽くなる。この申告書は、該当する人だけが会社に申告書を出せばよく、該当しない人は何も書かなくていい。

最後は、「基礎控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の見直しである。基礎控除は今回から、年収に応じて金額が変わる段階制になった。自分の年収を見て、どの金額(95万円・88万円・68万円・58万円)に当たるかを確認して記入する。配偶者控除も同じく、「相手の収入がいくらか」で金額が変わるため、ざっくりでも把握しておく必要がある。「去年と同じでいいや」とそのまま書き写すのが一番危険である。

年末調整の計算は、これらの申告書をもとに会社が行う。改正後は「給与所得控除後の給与等の金額表」も新しくなるため、会社側も新しい表を使って税額を再計算する。従業員は、必要な書類を期日までに正しく出すことが最重要だ。提出しないと、控除が受けられず、税金が年明けに自分で確定申告をする羽目になる。

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所 堀田泰希を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実践的内容から評価が高い。