多部未華子【HAIRMAKE/中西樹里 、STYLIST/岡村春輝(FJYM inc.)】(C)エンタメOVO
WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。
主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。そんなある日、彼女は命懸けで逃げ出した病院で出会った女性に導かれ、DV被害者のシェルターとなっている江ノ島のシェアハウスで、同じ境遇の女性たちと共同生活を始める。その生活の中、本来の自分を取り戻していく紀子。だが、その家には“秘密のルール”があった。それに気付いた紀子は、いかに決断すべきか葛藤する…。
主人公の紀子を演じるのは、これがWOWOW連続ドラマ初主演となる多部未華子。DV被害者という難役に挑んだ舞台裏を語ってくれた。
-主人公の紀子は、夫からの暴力に苦しんだ末、DV被害者のシェルターとなっているシェアハウスに逃げ込み、そこで自分を取り戻していく一方で、“秘密のルール”を巡って葛藤するという難しい役です。演じてみた感想はいかがでしたか。
紀子は口数が極端に少なく、せりふも「…」が非常に多いんです。しゃべらない分、何かを感じたり、悟ったり、相手の気持ちに寄り添ったりと、いろんなことを「…」で語るので、そこに込められた紀子の思いを、どのように表現したらいいのかと。さらに、夫からDVを受けて季節もわからなくなるくらいつらい毎日を送っていた紀子が、次第に自分の生き方を見つけていく成長の過程も表現しなければいけなくて。だから、演じるのは難しかったです。
-そこからどのようにお芝居を作り上げていったのでしょうか。
山田(篤宏)監督をはじめ、皆さんと話し合いながら解釈していった感じです。山田監督から「もう少し疑問を感じてもいいかも」などと指示をいただいたり、カメラマンや照明のスタッフの方々を交えて、「もう少し目線を上げた方が、決意の表情に見えるのでは?」と工夫したり…。
-チームワークで作り上げていったわけですね。
そういう意味で今回は、山田監督をはじめ、話をしやすい方が多かったことにも助けられました。撮影前は、山田監督とも初対面でお人柄もわかりませんでしたし、シリアスな作品でもあるので、空気も重く、静かな現場になるんだろうな…と想像していたんです。でも実際は、予想と真逆の明るい現場で。山田監督は、助監督の意見にも耳を傾ける懐の広い方だったので、私も「もう少し決意が伝わるような表情の方がいいかな?」とか「もう少しわかりにくくても伝わるかも?」と迷ったとき、気軽に相談ができたんです。おかげで、撮影はとても楽しかったです。
-WOWOWの連続ドラマ初主演ということで、座長として特別な意気込みもあったのでしょうか。
私は普段から、主演のときも「自分が座長だから」と気負うことはありませんが、今回は特にその意識が薄く、ひたすら皆さんと楽しく過ごしていた印象です。というのも、主人公は紀子ですが、シェアハウスの住民それぞれの背景が見えるような描き方になっていたので、「みんなの物語」という意識の方が強かったんです。
-そういう現場で、ムードメーカー的な方はいらっしゃったのでしょうか。
ムードメーカーはたくさんいましたが、寺島しのぶさんや石田ひかりさん、須藤理彩さんといった先輩方が、現場を盛り上げてくださいました。キャストは女性ばかりだったので、みんなで育児やおいしいお菓子の話など、たわいのない雑談をしつつ、和やかな空気の中でときには作品について話し合ったり…。そこからお芝居のヒントをいただくこともあり、とても助けられました。
-雰囲気のいい現場だったようですね。
中でもしのぶさんは、「これはこういうことなのかな?」といった感じで、積極的に質問をされるんです。その上、「私、緊張しちゃう」などと、ご自身の気持ちを織り交ぜながら現場にいてくださるので、私も質問がしやすくて。そんなふうに、「これはこういうことでいいんだよね?」「それでいこうよ」と和気あいあいと、みんなで発見していくような現場は今まであまり経験がなかったので、学ぶことがとても多かったです。
-そういう現場でDV被害者の役を演じて、DVの問題について気付いたことはありますか。
事前に調べてみたのですが、周りに実際のDV被害者の方がいるわけではありませんし、体験談をつづったブログを見ても、嫌な体験を思い出したくないのか、あまり詳しいことは書かれていなかったんです。ところが、撮影に入ってほかのキャストの皆さんと話をしてみたら、DVの被害者が身近にいるという方もいて。旦那さんのことも知っていたそうですが、離婚するまで全く気付かなかったというんです。離婚後に話を聞き、壮絶な経験をされていたことを初めて知ったらしくて。それがDVの実態なのかなと。だから、気付かないだけで、意外と身近に存在するのかもしれません。それはすごく怖いことで、同時に難しい問題だなと。それを知ることができたのは、この作品に参加したおかげだと思っています。
-そういう問題をドラマという形で提起する一面もある作品ですが、最後に本作をご覧になるお客さんへのお言葉をお願いします。
紀子が主人公ではありますが、彼女だけでなく「生きよう」という気持ちを忘れなかった人たちが、自分の人生を切り開いていく物語になっています。言ってみれば、「自分で変えようとすれば人生は変わる」という勇気の物語であり、エンターテインメントとしても最後まで目が離せない作品になっているので、多くの方に楽しんでいただけたらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)
配信期間:2025/11/23 22:00~2026/01/09 18:00







