「仕事の取引先の社員だった元妻とは、向こうからアプローチがあって俺も好きになり、交際が始まりました。

熱心に好きだと伝えてくれるしふたりの関係を大事にしてくれるから、この人とならと結婚を決めたのが10年前、お互いに自分の仕事が好きで昇進の意欲も強かったので、子どもは持たないことを決めました。

子を産まない選択に、向こうの親より俺の両親のほうが『私たちは孫も抱けないの』と落胆して、『親のために子どもを作るとか、ありえないよ』と二人で呆れたのを覚えています。

俺も妻も仕事に集中して昇進が叶い、夫婦ふたりの生活は慌ただしいけれど休日にゆっくり過ごす時間を持てて、何でも自分たちのペースで決められるのを気に入っていました。

ただ、お互いの親からは『もっと顔を見せに来て』と催促があって、特にうちの両親は『もっと親孝行するべき』と、子どもがいないことをいつまでも責める空気はありました。

元妻は仕事を理由にうちの両親との接触を避けていて、俺は元妻の実家に行くけれど、俺の実家に元妻は足を向けないことで何度か喧嘩にはなりましたね。

『あなたがいないときに女が仕事を優先するなんてって、嫌味を言われるのよ。自分の親なんだから、何とかしてよ』

『俺から離れなければいいだろう。変なことを言うなとはいつも伝えているよ』

元妻に対する親の態度は俺も気になっていましたが、頑なになった両親は聞き入れないし、元妻から責められるのもストレスで、お盆や正月は毎年気が重かったですね……。

それでも、『自分が専業主婦だから世間知らずなのよね』『家庭に入るのが妻として当然とか、頭の悪い女がよく言うのよね』と、親を貶める発言を平気でする元妻には、嫌悪感が募りました。

仕事の成功は確かに幸せで、子がいない暮らしに不満がないのも本当だけれど、それとは別にお互いの親についてはもっと関係を改善するべきじゃないかと思いました。

ある年の年末、父親から母が肺炎で入院したと連絡があり、元妻に『今年はうちの実家に行こう』と言ったら『え、病院にお見舞いとか絶対に嫌よ。何かうつされたら迷惑だし、あれこれ用事を言われたくないし。私の親じゃないしね』とあっさり返されて、ショックでしたね……。

『自分の親だったら見舞いに行くのか』と言ったら『当たり前でしょ。私の両親はそっちと違って私を応援してくれるもの』とのたまう元妻に、ああもう駄目だなと思いました。

確かに俺の親は古い価値観で元妻を責めたかもしれないけど、普段の悪口だけじゃなくて、病気になったときまでないがしろにされるのは許せませんでした。

『俺の親をそんな風に思っている君とは、正直もうやっていけない』と言ったら『やっぱりあなたもそんな人間なのね』と返されて、離婚が決まりました。

上昇志向の強い妻は、いつしか俺の役職についても『まだまだよね』と笑うようになっていて、尊重のない結婚生活への疑問もあって、別れることに未練はなかったですね。

皮肉な話ですが、子どもがいなくてよかったと本当に思います」(男性/38歳/営業)

自分の親の態度にも問題があるのは確かですが、だからといって他人である妻がそれをむやみに貶めていいことにはならず、逆の立場ならどう思うのか、の想像力がない妻に愛想が尽きるのは当然ともいえます。

結婚生活を続けるうえで互いの親との関係は切っても切り離せず、仲の改善を考えずに拒否する自分だけを正解に置こうとする姿に、夫婦としての愛情が育つでしょうか。

仕事の成功すらともに喜べないような配偶者と夫婦でいる意味があるのかどうか、決断をするのは自分のため。

一番近い配偶者を大切にできない人間に、ほかの成功も難しいのでは、と感じます。