アンカー・ジャパンに話を聞いた
【完全ワイヤレスイヤホン最前線・8】さまざまなメーカーが製品を発売している完全ワイヤレスイヤホンですが、メーカーの担当者は自社製品のどこが強みだと考えているのでしょうか。そこで、主要メーカーの1社であるアンカー・ジャパンに力を入れている点について聞きました。
Ankerが重視する「コスパ」と「信頼」
「Anker」というブランドはモバイルバッテリーなどで知られていますが、オーディオ関連にも力を入れています。特徴の一つはやはりコストパフォーマンスの高さでしょう。「Soundcore P41i」は1万2990円、「Soundcore Liberty 5」は1万4990円と、アップルの「AirPods Pro 3」(価格は3万9800円)の約3分の1を実現しています。手を出しやすい価格設定については、競合他社からも「エントリー層をしっかり取っている」という声があります。
「当社の製品に関しては、充電関連の製品で培った知見、ノウハウをオーディオ製品に生かしながら、いかに高い品質のものを皆さんの購入しやすい価格で提供するか、という点を大切にしています」と話すのは、同社でイヤホンを担当するマーケティング本部ブランド戦略リードマネージャーの蒲田華惠氏。
製品作りで最も大事にしていることは、顧客の声を起点にした「ものづくり」。毎年、消費者調査を実施していることに加え、直営店「Anker Store」での会話やECサイトでのレビューなどをもとに顧客が求めている機能を分析し、迅速に開発に生かしているとのことです。
「レビューで不満を見つけると逐次、本社の開発担当にフィードバックして、改善を実現できるように動いています。このサイクルをスピーディに行えていることが、販売にもつながる好循環を生んでいるのではないでしょうか」(蒲田氏)。
最近は初めて買うエントリー層だけでなく、旧機種から新機種への買い換えも増えているといいます。ECサイトへ書き込んだ要望が次の製品に反映されていることが、ブランドの信頼感へつながっているということでしょう。
本社へは日本市場で求められる傾向も伝えているそうです。その一つがカラー。同じピンクでもパステル調のピンクなのか、スモーキーなピンクなのかなど、日本の社内で検討して日本に合った傾向を本社にフィードバックしているとのことです。
快眠をサポートする「Soundcore Sleep」シリーズ
同社の完全ワイヤレスイヤホンにはエントリーモデルのP41iやフラッグシップのLiberty 5以外にも、スポーツをしているときやアウトドアでの使用を想定した「Soundcore Sport X20」、耳を塞がないインナーイヤー型の新製品「Soundcore Liberty Buds」などがあります。
中でもユニークなのは「Soundcore Sleep」シリーズでしょう。これは睡眠時に使用することを想定したモデル。寝るときに横向きになっても邪魔にならない小型の完全ワイヤレスイヤホンです。
2025年9月25日には、初めてノイズキャンセリング機能を搭載した「Soundcore Sleep A30」を発売しました。家族のいびきを充電ケースが検知すると、音の大きさや高さに合わせて最適なマスキング音を自動再生する「いびきマスキング機能」も搭載しています。
「最近は、スポーツで使ったり、睡眠時に使ったりするといった、これまでとは異なるシーンでイヤホンを使用するケースも増えているので、そういった付加価値を持つ製品も開発していきたいと考えています。特に睡眠時に使う“スリープテック”は、市場として伸びていく可能性が高く、今後も力を入れていきたい分野ですね」(蒲田氏)。
同シリーズに関しては、就寝時だけでなく、「つけ心地が軽いから」と仕事に集中するときに使う人や、出張の移動時間に使用している人もいるそうです。
イヤホンは複数使い分けの時代へ
蒲田氏が感じているのが、Sleepのような付加価値型イヤホンの増加に伴い、複数のイヤホンを使い分ける人たちが増えているということ。「通勤中にはノイズキャンセル機能を持つ完全ワイヤレスイヤホンを使い、会社に行ったら同僚からの声かけにも気づくことができるオープンイヤー型イヤホンに切り替えるという人もいます。同じ機種を2台購入して、会社用と自宅用で使い分けている人もいます」といいます。
こういったニーズが増えるほど、Ankerのような、手を伸ばしやすい価格設定の製品が求められるようになることも考えられます。
ただ、そういった状況を踏まえた上で、「イヤホンでベースになる機能は、やはり音質、ノイズキャンセル機能、長時間再生だと考えていますので、それは高めていく必要があると常に考えています」と蒲田氏は力を込めます。
特にモバイルバッテリーを長く手掛けてきた同社にとって、長時間再生は譲れないポイント。音質に関しては、人によって好みが分かれる場合もありますが、再生時間に関しては誰もが「長い方がいい」と考えているのは間違いありません。実際、Anker製品を選んだ理由について、「充電するのが面倒」という人や、充電し忘れて困ったという経験から同社製品を選んだという人は多いそうです。
外出するときに音楽を楽しむために使われていたイヤホンですが、最近では会社に着いたらリモート会議で使用したり、休み時間に動画を見るために使ったりするケースも多くなっています。用途が多様になった分、連続して使用する時間も延びています。
「そういった人に向けての連続再生時間に関しては、Ankerのイヤホンは他社に負けない自信があります」と蒲田氏は胸を張ります。電池切れに悩んでいる人は、同社のワイヤレスイヤホンを視野に入れてはいかがでしょうか。(マイカ・秋葉けんた)
秋葉けんた
編集プロダクションのマイカに所属するITライター。雑誌、書籍、新聞、Web記事など、多岐にわたるメディアで執筆活動を行っている。特に家電やガジェット、IT関連の記事に豊富な実績があり、生成AIに関する書籍も多数手がけている。







