2026年度から、日本全国どこにいても「出生届」をオンラインで提出できるようになる見込みです。これまでは、手続きのために出産後のママ・パパが赤ちゃんを抱えて役所の窓口へ行くのが当たり前でしたが、今後はスマートフォン(スマホ)やPCから手続き完了という時代に。すでに一部自治体では、画像添付方式でのオンライン手続きがスタートしています。今回は、出産を経験した筆者のリアルな声も交えながら、「出生届オンライン化」の仕組みとメリット、そして今後の広がりを紹介します。

「役所に行かなくてもOK!」出生届がオンラインで出せる時代へ

赤ちゃんが生まれた直後の数週間は、とにかく“手続きラッシュ”です。出生届、健康保険の手続き、児童手当の申請、マイナンバーカードの申請……。どれも大事だと分かっていても、日々の育児と寝不足の中でこなすのは想像以上にハードモード。

筆者も春に娘を出産しました。里帰り出産だったため、住民票のある自治体と滞在先が別という状況に。「出生届は子どもの人生最初の大事な手続きだから、本当は自分で確認しながら出しに行きたい」と思っていたものの、産後の体で長距離移動は現実的ではなく、最終的には夫にお願いすることになりました。

もちろん夫に悪気はないし、育児も協力してくれています。それでも、

・本当に書き方は合ってる?

・提出期限(出生の日を含めて14日以内)に間に合う?

・連休をまたいでいて役所はちゃんと開いている?

と、離れた場所からずっとヤキモキしていたのが正直なところです。

一方で、児童手当の手続きやマイナンバーカードの受け取りは自分で行く必要があり、首も座っていない生後1カ月の娘を連れて役所へ行くことに。待ち時間に泣かないか、授乳タイミングはどうするか……行きの車の中からずっと不安でした。

そんな経験をした筆者からすると、「出生届がオンラインで出せるようになります」というニュースは、まさに“もっと早く欲しかった!”と叫びたくなるレベルの朗報です。

いつでもどこでもOK 「オンライン提出」の仕組みを解説

国は、2026年度を目途に、マイナポータルから戸籍情報連携システムを介して出生届をオンラインで提出できる仕組みを整備し、全市区町村での実施を目指しています。では、その「オンライン出生届」はどんな仕組みでしょうか。ざっくりと提出の流れを見てみます。

オンライン提出は「マイナポータル」から

マイナンバーカードとスマホ(またはマイナンバーカードを読み取り可能なカードリーダーとPC)でオンラインポータルサイト「マイナポータル」にログインすると各種行政手続きがオンラインで可能です。出生届のオンライン提出も、このマイナポータルから行います。

まずは「画像添付方式」からスタート

すでに2024年8月から、一部自治体では出生証明書の画像を添付する方式での出生届のオンライン提出が可能になっています。紙で受け取った出生証明書をスマホで撮影し、その画像データをアップロードして申請する方法です。

この段階では、

・赤ちゃんが生まれた病院・産院で紙の出生証明書を受け取る

・それを自分で撮影し、マイナポータルから画像を添付して送信

という形なので、「紙ゼロ」ではないものの、役所の窓口に行かずに済むという点で大きな一歩です。

2026年度には“完全オンライン”に近づく

2026年度には、医療機関と自治体間で出生証明書を電子データとしてやりとりする仕組みを整備し、マイナポータルからのオンライン届出を本格展開する方針です。

これが実現すると、

・病院側が電子的な「出生証明書データ」を発行(医療機関→自治体)

・利用者側はマイナポータル上で必要事項を入力して送信

・紙の出生証明書を受け取って撮影する手間が不要

という流れになり、かなり「紙ゼロ」に近づきます。

オンライン化でここがラクになる! ママ・パパ目線のメリット

制度の中身を見たところで、実際にママ・パパにとってどんなメリットがあるのかを整理してみます。

・生後すぐの外出が減る

猛暑や極寒の中、赤ちゃんを連れて役所へ行く必要がなくなります。

・24時間いつでも手続きできる

夜間や休日でも申請可能。共働き世帯や里帰り出産にも便利。

・入力ミスや書類不備をシステムがサポート

必須項目チェックやフォーマット入力で再提出リスクを軽減。

・その後の手続きにもスムーズにつながる

デジタル庁やこども家庭庁の資料では、出生届のオンライン化をきっかけに子育てに関わる複数の手続きをワンストップで申請できる環境を整備する構想が示されています。

将来的には、出生届の入力情報をベースに、関連する手続きの申請画面が自動的に立ち上がり、同じ情報を何度も書かなくていい――そんな世界が見えてきています。

現在の課題とは? 全国導入に向けたハードル

一方で、いいことづくめに見える申請手続きのオンライン化にも、いくつかクリアすべき課題があります。

・自治体対応のばらつき

システム導入や職員研修、利用者への周知が必要。

・医療機関・自治体・国のデータ連携

出生届の場合、病院(出生証明書)・自治体(戸籍)・国(制度設計・システム)の3者が関わり、中小病院の電子化対応に時間とコストがかかる。

・セキュリティ・個人情報保護

安全なデータ連携と利用者認証の強化が不可欠。

出生届だけじゃない! ライフイベント手続きも続々オンライン化へ

出生届のオンライン化は、実は「ライフイベント手続きDX」の一部にすぎません。デジタル庁が公表している「行政サービスの導入計画(ロードマップ)」によると、妊娠・出生だけではなく、引っ越し、婚姻、介護、死亡など、人生の主要イベントに関する手続きも順次オンライン化・ワンストップ化していく予定。スマホひとつで複数の手続きが完結する時代が近づいています。

たとえば、

・引っ越しの際に、転出・転入の届出、マイナンバーカードの住所変更、子どもの転園・転校の手続きをオンラインで一括申請

・将来的には、マイナポータルで「人生の手続き」を一覧し、必要な手続きをまとめて案内

といった世界観が描かれています。

改めて振り返ると、出生届は、書類の書き方を間違えたらどうしよう、期限に間に合わなかったらどうしようとかなり不安の多かった手続きで、当事者として「もっと安心して、もっとラクにできる仕組みが欲しい」と強く感じていました。

本格導入までは、もう少し時間があります。今のうちにマイナンバーカードを取得してマイナポータルにログインできるようにしておくと、各種手続きが必要になった際に便利でしょう。

2026年度に向けて進む出生届のオンライン化は、「子育て×デジタル」の大きな一歩です。未来には『赤ちゃん抱えて役所に並んでいた』ことが昔話になるかもしれません。そのスタートラインに立っているのが、いまの私たちです。

武田千冬

美容誌や女性ライフスタイル誌、コスメのクチコミメディアで10年以上の編集・ディレクター経験を経て、現在は美容やライフスタイル領域をメインに活動するフリーライターに。2025年春に第一子を出産し、妊娠・出産・子育てなど女性のライフステージに関連するカテゴリでも実体験をベースにコラムなどを執筆。