台湾デザイン研究院(TDRI)との共創事業が本格始動。台湾視察の成果を踏まえ、デザイン思考で沖縄の地域課題に挑む2026年度へのキックオフセミナーを那覇市内で開催。
2026年2月4日、一般社団法人デザインイノベーションおきなわ(DIO、代表理事 神里 僚子)は、財団法人台湾デザイン研究院(TDRI)との共同事業の報告会を兼ねて、那覇市内にて、「沖縄型デザイン共創モデル事業キックオフセミナー『地域資源』を起点にした、地域デザインの可能性~」を開催しました(TDRIメンバーは台湾からオンラインにて参加)。

本セミナーでは、デザインを「見た目」ではなく、地域の価値を再編集し、仕組みとして実装していくための考え方を共有。2025年度の台湾視察と共創ワークショップの成果を踏まえ、2026年度から本格化する「台湾×沖縄の共創プロジェクト」のキックオフとして開催しました。
当日は、DIO代表の神里僚子から挨拶を兼ねて、参加者とともに「デザイン」という言葉の目線合わせからスタートしました。

本事業で考える「デザイン観」の提示(DIOが捉えるデザイン)
デザインを「見た目を整えること」から明確に拡張して捉えている点に言及。DIOが扱うデザインは課題を起点にして価値を生み出すために、つまり、デザインを「見た目」ではなく「動く仕組み」として捉え直します。・何を価値として定義するか(問いを立てる)
・誰と誰の関係性をどう編み直すか(関係性のデザイン)
・どのような仕組みにするか(制度・運用・ビジネスモデル等の設計)
上記を含めた“仕組みをつくる領域”ということを明示しました。
なぜデザインプロセスが社会課題に効くのか
昨今の社会課題は正解が1つではなく、要因が複雑に絡み合い、状況が変化し続けます。だからこそ、いきなり解に向かって動くのではなく、「ビジョン(目指す姿)」→「リサーチ(文脈理解)」→「共創(関係者とつくる)」→「プロトタイプ(試し、学び、直す)」というデザイン思考の進め方が、社会課題と相性が良いと考えています。小さく試し、学習し、改善しながら前に進めることで、現場に根づく解へ近づける、ということです。
ただ、本事業は「台湾から学ぶこと」自体が目的ではなく、学びを踏まえながら「沖縄の文脈・文化・産業構造に合った地域デザインのかたちを、参加者と一緒に“共につくる”」ことが狙いです。
外からのモデル移植ではなく、沖縄側の現場や当事者性と結びつけながら、実装できるやり方へと編集していく--その起点として本日の場がある、というメッセージで締めくくりました。
2025年度の取組を報告
2部構成の第1部は2025年10月に行った台湾での視察ツアーやワークショップの様子をリポート。台湾の視察ツアーの参加者は、行政職員、支援機関、投資家、クリエイター、民間企業、学生などさまざまな分野で活躍する12人を選定し、事前勉強会を経て視察に向けた意識合わせを実施した上で台湾入りしました。
視察のテーマは、DIOが今後の沖縄にデザイン力(デザイン思考)が必要と考える「サーキュラーエコノミー」「(地域)コミュニティの形成」「データ・AIの活用」の3分野を設定。2日間で各テーマにおけるTDRIの先進事例を学び、3日目の最終日に沖縄のメンバーとTDRI・台湾のクリエイターが4チームに分かれてワークショップを行った様子を、動画を交えて報告しました。
参加者からは「台湾のサーキュラーエコノミーには歴史的な文脈があることを強く感じた」「デザインの価値がデザイナーだけでなく一般の人たちにも伝わっていることに感銘を受けた」といった声もあり、大きな刺激を受け、すでにご自身の業務に生かしている方たちもいます。
全ての事例でTDRIがデザインやデザイン思考を注入することで、産業が発展し、コミュニティの仕組みが形成され、社会課題を解決するデータ×デザインの最新研究が進んでいることを間近に体験し、参加メンバーそれぞれの刺激となり、次年度の共創に向けた足がかりとなる確かな感触を得られました。
【2025年10月に実施した台湾視察の模様】
<1日目> https://www.dio.okinawa.jp/topics/the_journey_of_circular_social_design01/
<2日目> https://www.dio.okinawa.jp/topics/the_journey_of_circular_social_design02/
<3日目> https://www.dio.okinawa.jp/topics/the_journey_of_circular_social_design03/
2026年度へのキックオフとなるトークセッション
第2部は、視察ツアーにも参加した行政職員、データ活用の専門家、デザイナー、そして、知財戦略の専門家を交え、以下の3つのテーマでトークセッションを展開していきました。■オープニング:TDRIの紹介―デザインを「社会に実装する」国家レベルの仕組み
台湾デザイン研究院(TDRI)・産業フォーサイトチーム /チームリーダーのVivian Wuさんがオンラインにて、台湾ではデザインが産業支援の手段から社会の基盤へと役割を変えてきた変遷を事例とともに紹介しました。

TDRIの前身は1979年に設立された輸出産業支援のためのデザイン組織で、当初は製品の付加価値向上を目的とした産業支援機関でした。そして、2020年に政府系機関として「台湾デザイン研究院」へと再編され、デザインの役割は公共サービスや社会課題、政策領域までを扱う国家的基盤へと拡張されました。
現在は中央省庁・地方自治体・民間企業を横断し、プロダクトに限らず公共空間、サービス、メディア、イベント、制度設計までを対象にしています。成果物の制作にとどまらず、社会の仕組みとして機能させる「実装」を担う組織である点が特徴です。
取組としては、廃材活用のプロダクト開発だけでなく、市民が自然に分別できる回収導線の設計、AI回収機の導入、パイナップル葉の繊維素材化など、行動変化を前提とした循環の仕組みづくりが進められています。また、防災施設や医療空間の設計など公共サービスの質向上にもデザインが活用されています。
さらに、「文化博覧会」や「台灣設計展(台湾デザインエキスポ)」といった大型イベントを通じ、市民が新しい価値観を体験する機会を生み出し、理解促進と都市への人流創出を同時に実現しています。
Vivianさんは、デザインとは「形を整える行為ではなく、社会の行動を変える仕組みである」と説明。TDRIの実践は、デザインを政策・産業・生活をつなぐ基盤として活用することで、社会変化を継続的に生み出せることを示しています。

⬛ テーマ1「行政政策におけるデザイン視点(地域×デザイン)」
南城市職員の喜瀬斗志也(きせ・としや)さん、デザイナーの久田友太(くだ・ゆうた)さんとともに、台湾での行政・社会デザインの実践事例を基に、地域政策へのデザイン導入の可能性と課題について共有。喜瀬さんは10月の視察を通じて得られた視点や、DIO×TDRIの連名によるパブリック・コメントをベースに知念エリアの過疎計画の施策に向けてデザイン思考を入れたアプローチを展開していきたいと発言。

また、久田さんは行政課題に対してデザイナーが直接「解決策」を提示する存在ではなく、関係者が課題を自分ごととして捉えられる状態(関係性)をつくること。すなわち人と人、人と地域の関係性の変化を促すプロセスを設計していく存在と位置づけました。

また、「台灣設計展/台湾デザインエキスポ」を中心に、一連のデザインに関するイベントが台湾全域のデザイン力向上に与える可能性についてコメントしました。

⬛ テーマ2「産業×デザイン(サーキュラーエコノミー/AI・データ等)」
本パートでは、視察先の1つ・台湾電力を中心に議論。まず、DIOの大城直也から、なぜ電力会社にデザインが必要だったのかを歴史的・社会的背景から紹介し、社会との関係を再構築するためのデザインの一環としてクリーンエネルギーの体験施設「TAIPOWER D/S ONE 電幻1號所」を設立したことを言及しました。さらには、送電施設等の廃材を“企業の物語”に変える切り口でデザインを導入し、プロダクトへと再生していきました。会場内にはそのプロダクトの一部も展示し、来場者の理解促進に役立てました。

トークセッションでは、DIOの共創パートナーでもある、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)・佐藤久信(さとう・ひさのぶ)さんとのトークをメインで進行。今後、電力会社がサーキュラーエコノミーを担う視点、電力会社が他業種のサーキュラーエコノミーを支える視点について議論を深めていきました。そこから、インフラ企業は社会を次の状態へ移行させることの役割があることから「トランジション」まで話が及びました。

ラストは、インフラ企業がデザインの考えを再定義するということは、単に見た目を良くすることではなく、「次の社会へ、市民と一緒に無理なく移行するためのリーダーシップを持つこと」ではないか、と定義。

沖縄の社会と産業界との関係性を考えるセッションとなりました。
⬛ テーマ3「地域デザイン力と知財活用」
第2部の最後のパートは、オンラインにて参加した、知財戦略エキスパートの平林篤哉(ひらばやし・あつや)さんとのセッション。最初に、DIOの繁田謙より、地域デザインと知的財産の関係性について言及。地域デザイン力を向上することで、地域に有形・無形の知的財産が生まれる土壌が築かれることを伝えました。


その後、平林さんは、地域デザイン力が向上することで生まれたデザインの独自性が地域の価値を持続的に守ることにつながり、持続可能性が担保されることを解説しました。
つまり、デザインが価値を生むプロセスだとすれば、知財はその価値が継続し、流通し、協業につながる状態をつくるための設計です。
TDRIに聞く「デザインと知的財産」-価値を生み、守り、社会に流通させる仕組み
セッション後半では、TDRIに対し、プロジェクトを進める上での知的財産の考え方について質疑応答が行われた。そこで示されたのは、「知財は最後に整理するものではなく、デザインと同時に設計されるべきもの」という明確な姿勢でした。
例えば、製品イノベーション型のプロジェクトでは、計画開始前に特許調査を行い、開発の初期段階から権利化の方針を設計。一方、ブランドデザインの場合は、参入する市場に応じて商標を整備し、将来の展開を見据えて保護を行っていきます。重要なのは、特許取得そのものを目的化しないことで、技術やサービスの市場性・事業性を踏まえ、将来の協業関係を守るために権利を使うことを強調しました。
また、取得する知財については、新規性と進歩性を持つ技術は発明特許、外観の特徴は意匠、識別性のある名称や表示は商標、AIなど公開しない方が価値を保つものは営業秘密を選択。これは単なる防御ではなく、市場参入や技術移転を成立させるための戦略でもあり、政府投資を産業成長へつなげるKPIとして、特許と技術移転が位置づけられている点も特徴的でした。
そして、知財取得の効果について、TDRIは4つの側面を挙げました。
1:紛争コストを下げ、交渉力を高める。
2:市場での独自性を確立する。
3:競争優位を守る。
4:無形の成果をライセンスや技術移転として取引可能な資産へ転換する。
さらにTDRIは、デザインと知的財産の関係を次のように表現しました。
「デザインは価値を形にし、知的財産はその価値を守り、取引できる権利へ変える。両者は対立するものではなく、企画段階から並走する関係にある」
この考え方が示しているのは、知財が法務処理ではなく「社会実装の設計」という点です。デザインが価値を生むプロセスだとすれば、知財はその価値を持続可能な関係と経済活動に変換するプロセスで、このTDRIの実践は、地域プロジェクトにおいても、創造と運用を同時に設計する必要性を示唆するものとなりました。
2026年度、沖縄×台湾の共創がスタート
台湾はすでに、デザインを「産業支援」ではなく「社会を前に進める仕組み」として実装しています。その実践は、沖縄がこれから直面する人口・産業・地域コミュニティの課題に対する1つの現実的なヒントとなります。ただし、それは輸入するモデルではありません。沖縄には沖縄の歴史や関係性があり、その文脈に翻訳し直す必要があります。だからこそ、このプロジェクトは“支援”でも“導入”でもなく、共に試しながらかたちをつくる共創として進めていきます。

キックオフ会を終えて、TDRIのVivianさんは「最も印象的だったのは、皆様が『この土地(沖縄)をどう永続的に運営していくか』を自分ごととして捉え始めている姿です。次年度のワークショップが、外部の事例を導入する段階から一歩進み、沖縄の資源や課題を独自の文脈で『再編集』し、沖縄発のモデルを構築する場となることを願っています。そして、議論で芽生えた『行政情報の届け方』や『公共施設の新しい活用法』『地域資源の再編集や可視化』といった素晴らしい着眼点を、次年度は具体的なプロトタイプ(試作)や仕組みへと昇華させることを期待しています。単なる議論に留まらず、まずは小さく試してみる。台湾の視察で感じた『まずやってみる』というスピード感を沖縄の現場に実装していく、実践的なワークショップになることを楽しみにしています」と総括しました。

台湾電力のグッズと台湾視察の際にプラスチックごみからつくったサングラスを会場内に展示

会場にて台湾茶とパイナップルケーキを提供した「琉求茶館」(那覇市)のお2人
2026年度より、沖縄×台湾の共創プロジェクトが本格的に始動します。持続可能な地域のかたちをともに描き、地域デザイン力を育てていく仲間として、ぜひご参加ください。
【DIOは共創パートナーを募集しています】
https://www.dio.okinawa.jp/membership/

【デザインイノベーションおきなわ(DIO)について】
2022年設立。「デザインの力で、沖縄をもっと前へ」をパーパスに、沖縄を拠点に地域資源を生かしたブランド戦略、デザイン経営の導入、デザイン思考を持つ共創型人材育成など、地域に根ざした実践を進めている。
公式サイト:https://www.dio.okinawa.jp/
【台湾デザイン研究院(TDRI)について】
2020年に設立。台北に拠点を置く台湾のデザイン振興組織。産業や行政、社会におけるデザイン活用を多角的に支援している。人材育成から企業マッチング、国際的なネットワーク構築まで、デザインを軸にした広範な活動を通じて、モノ・コト両面からイノベーションを創出している。
公式サイト:https://www.tdri.org.tw/zh-TW
撮影:大湾朝太郎(Chotaro Owan)
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