
味は、味そのものだけで決まりません。消費者は食品の風味や栄養素を客観的に分析・評価するのではなく、総合的に判断します。その結果、客観的な製造品質は優れていても消費者に受け入れられない商品が多数あり、それは多くの企業・農家の悩みの一つになっています。本研究で取り上げた食品はノンホモジナイズ製法で製造された牛乳(以下、ノンホモ牛乳)です。一般的な市販の牛乳は、物理的安定性を高めるために乳脂肪分が均質化されています。一方、ノンホモ牛乳は乳脂肪分を均質化しないため、より自然の生乳に近い状態です。しかし、名称の印象や訴求点の抽象性により、これまで消費者に受容されてきませんでした。そこで本研究では、素材ブランディングの知見を活かして、当該技術の価値転換を検討しました。ノンホモ牛乳の特徴の一つは、表層に「クリームライン」が形成されることです。そして、飲料におけるクリームこそ、消費者にとって大きなニーズがあると推察されます。そこで、色の面からクリームを際立たせるために、カフェラテの素材としてノンホモ牛乳を導入し、商品名を「クリームが浮かぶカフェラテ」とし、パッケージデザインにクリームのシズル感を伝える実写を採用することが有効であることを示しました。本研究成果は、タカナシ乳業株式会社と明治大学商学部加藤拓巳准教授の共同研究として、International Conference on Knowledge-Based and Intelligent Information & Engineering Systems 2026に採択され、Procedia Computer Science (Elsevier)から出版されます。
出典:Takumi Kato , Mitsuhiro Ishida, Honami Moriya, Nanako Tanaka, Etsuko Hasegawa, Yuto Tamura, Mayuko Kuwabara, Ryota Minamiura, Shinichi Kitamura, Taro Kida. (2026). Make the cream stand out!: Concepts and packaging designs that enhance the perceived value of non-homogenized milk. Procedia Computer Science, 1-10.
本研究のポイント
- 「マーケティングとは、商品の戦いではなく、知覚の戦い」と言われるとおり、客観的な商品の性能・品質では価値が決まりません。消費者の知覚こそが現実です。よって、消費者が主観的に判断する総合体として、商品・サービスを設計する必要があります。食品においては、味は味そのものだけでは決まりません。コンセプト、ブランドネーム、パッケージの質感、パッケージデザイン、価格など多様な面から総合的に判断されます。その結果、客観的な製造品質は優れていても消費者に受け入れられない商品が多数あり、それは多くの企業の悩みの一つになっています。
- 本研究で取り上げた食品は、ノンホモジナイズ製法で製造された牛乳(ノンホモ牛乳)です。一般的な市販の牛乳は、物理的安定性を高めるために乳脂肪分が均質化されています。一方、ノンホモ牛乳は乳脂肪分を均質化しないため、より自然の生乳に近い状態です。乳業界や酪農家の視点からは、ノンホモ牛乳の品質の高さが評価されてきましたが、名称の印象や訴求点の抽象性から、これまで消費者に受容されてきませんでした。
- そこで、素材ブランディングの知見を活かして、当該技術の価値転換を検討しました。素材ブランディングは、あるブランドの主要な特性が別のブランドの原料として組み込まれる方法です。食品業界では、素材ブランディングは代表的な商品価値づくりの手段の一つです。そこで、ノンホモ牛乳そのものを訴求するのではなく、それを素材として組み込むことで、消費者価値を創造する商品設計を検討しました。
- ノンホモ牛乳の特徴の一つは、表層に「クリームライン」が形成されることです。そして、飲料におけるクリームこそ、消費者にとって大きなニーズがあると推察されます。実際、カフェでもクリームの浮かぶ飲料は人気を博しています。しかし、それを小売店で提供する例は乏しいことから、オフィス・車・自宅で飲む場合にも、カフェでクリーム付き飲料をテイクアウトする消費者が多く観測されました。そこで、本研究では、色の面からクリームを際立たせるためにカフェラテの素材としてノンホモ牛乳を導入しました。そして、従来のノンホモ牛乳の技術的訴求(図1)と比較して、商品名を「生乳本来のクリームが浮かぶカフェラテ」(図2)とすることで顕著に購入意向が高まることを確認しました。さらに、パッケージデザインとしては、シンプルにシンボル化(図3)するよりも、クリームのシズル感を伝える実写のパッケージデザイン(図4)の方が高く評価されることが明らかになりました。
- 高い技術力を有する商品・サービスを活かすには、消費者のニーズに基づく価値の定義(コンセプト)と、一目でわかる訴求(デザインや広告)が不可欠です。消費者に受容されず、企業に眠ってしまっている技術は、「価値を高める努力」ではなく、「価値とわかってもらう努力」が不足している可能性があります。

図1. 「ノンホモ牛乳」を訴求する従来のコンセプト

図2. 「クリームが浮かぶカフェラテ」を訴求する新しいコンセプト

図3. シンボル化したパッケージデザイン

図4.実写のパッケージデザイン
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加藤拓巳准教授Webサイト:https://takumi-kato.com/
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