
キービジュアル
AIが脳をハックし、人々を自殺させている――。
AI が人類と同等の知性を持った近未来を舞台に、立場の異なる 3 人の主人公が事件の謎に挑む SF 群像劇ノベルゲーム『三位一体の単一点』。プレイヤーは三つの視点を切り替えながら、それぞれの『アイデアの種』を別の主人公に伝えて物語を分岐させる、新感覚の体験を作る。2026 年~2027 年に Steam リリース予定の本作について、開発を率いるそんちょー氏に話を聞いた。
- そんちょーさん、改めて自己紹介をお願いします。
そんちょーと申します。元々はフリーのエンジニアで、今はインディーゲーム開発者として、『三位一体の単一点』というゲームを開発しています。
『三位一体の単一点』とは - どんなゲームなのか
- 開発されている『三位一体の単一点』はどんなゲームなのですか?
3人の主人公を切り替えながら進める 群像劇タイプ のノベルゲームです。
AIが人類と同等の知性を持つようになった近未来で起きる、連続自殺事案の謎を中心として三つの物語が複雑に絡み合い、やがて一つに収束していきます。
このゲームのテーマは、ひとことで言えば「人間は、これからAIと一緒にどう生きていくのか」というものです。3人の主人公がそれぞれ異なる立場・異なる価値観で、この問いに直面することになります。
影響を受けた作品 - 『428 ~封鎖された渋谷で~』
- 制作にあたって影響を受けた作品はありますか?
『428 ~封鎖された渋谷で~』というノベルゲームです。15 年ほど前に発売された作品なのですが、ノベルゲーム愛好家の間では名作として色褪せず語り継がれている群像劇ノベルゲームです。
- どんなところに惹かれたのですか?
『428』は、5 人の主人公を切り替えて進める群像劇です。それぞれの主人公は、顔も名前も知らない者同士で、全く違う課題に取り組んでいる。
しかし、彼ら 5 人は 「同じ日の渋谷」 にいる。それぞれの主人公が別々の目的で動いていると、誰かの行動が知らず知らずのうちに別の誰かに影響を与えてしまう。バタフライエフェクト的に物語が連鎖していき、最後はひとつの大きな物語に収束していく―― そういう構造になっているんです。
このゲームをプレイしていくと、ある瞬間、プレイヤーがはっと気づくんですよ。「この物語、ひとりだけの物語じゃないんだ」と。
誰かのちょっとした行動が、別の誰かを救うこともあれば、誰かを破滅させることもある。私たちは不思議なことに繋がっていて、行動の連鎖が、めぐりめぐって誰かを救うこともある―― その手触りが、『428』の本質だと思っています。
15 年経った今でも、これを超える作品がなかなか出てこない。それくらいの名作なんです。ゲームというメディアにしかできない表現
『428』のさらに向こうへ。 - エングラムシステムと「アイデアの伝播」
- 『428』との関係性で、『三位一体の単一点』が新しく挑戦していることは何ですか?
『428』が描いていたのは「行動の連鎖」でした。私が本作で描きたいのは、「アイデアの連鎖」です。
- アイデアの連鎖、ですか。
本作の3 人の主人公はそれぞれ全く違う価値観を持っています。プレイヤーはゲームを進める中で、3 人の 価値観、アイデア、視点を「収集」 していく。「この人はこういう考え方をする」「この人はこういうアイデアを思いついた」というのが、プレイの過程で蓄積されていくわけです。
そして、ある主人公が持っているアイデアを、別の主人公に 「伝える」 役割を、プレイヤーが担います。そのとき、伝えられた主人公の中で異なる価値観が混ざる。その結果、一人では辿りつけなかった、「A でも B でもない C」という第三の選択肢が、その主人公の中で閃く―― これが、本作の中核となる「エングラムシステム」です。
- プレイヤーは「アイデアを伝える役割」というわけですね。
その通りです。「言う」「言わない」を選ぶ場面もあれば、「いつ、誰に、どのアイデアを伝えるか」というのも選択になります。場合によっては、伝えたアイデアを主人公が拒絶することもあるかもしれない。逆に、自分にはなかった視点として受け入れ、新しい一歩につながることもある。プレイヤー自身の試行錯誤が、物語を動かしていきます。
- なぜノベルゲームというフォーマットでこのテーマを描こうと考えたのですか?
私が「なぜ『428』が名作として多くの人の心を打つのか」を分析する中で、『428』はゲームシステムが指し示す方向性と、物語のメッセージの方向性が一致しているという点で他の作品と比べても突出しているということに気づいたんです。
プレイヤーは「物語を前に進めたい」という動機から、色々な行動を試します。それを何度も繰り返していくうちに、ある瞬間、物語の側から教えられるのではなく、自分自身の試行錯誤の手触りとして何かに気づく瞬間がある。「この物語世界は、誰か一人ではいつか行き詰まる。でも誰かのちょっとした行動の変化によって、道は切り開ける」ということに、はっと気づく。
映画も、漫画も、アニメも、素晴らしいコンテンツだと思います。でも、これらのメディアができることの最大限は「伝える」ことまでだと思うんです。
ゲームというコンテンツは、それを超えて、プレイヤー自身に「発見してもらう」ことができる。誰かから言われて納得する、というのを上回って、自分で試行錯誤した結果として「ああ、そういうことか」と腑に落ちる。これが、ゲームというメディアにしかできない表現だと、私は思っています。
『三位一体の単一点』では、これを「アイデアの連鎖」というテーマでやりたい。自分一人のアイデアでは行き詰まる場面でも、誰かの視点を組み合わせれば、突破できることがある―― この物語世界の構造を、プレイヤー自身に発見していただきたいんです。
どんな人に届けたいか
- このゲームはどんな方に遊んでほしいですか?
2 つの層を想定しています。
ひとつ目は、ノベルゲームが好きな方。私自身ノベルゲームが大好きなので、ノベルゲーム的なギミックを本作にしっかり盛り込んでいます。『428』や『Ever17』のような、骨太なノベルゲームが好きだという方に、まずは手に取っていただきたいです。
もうひとつは、AIと人類の未来に関心がある多くの方。これからの社会がAIでどう変わっていくのか、興味はあるけれど、分厚い専門書を読み込むのは正直しんどい―― そういう方に、もう少し気軽に手に取って、楽しみながら「考えるきっかけ」にしていただけたら、作った甲斐があるなと思っています。
リリース予定と、これから
- 現在の開発状況と、今後の予定を教えてください。
20 万文字超のメインシナリオとゲームシステムは完成しており、現在はベータ版の準備、イラスト・音楽の仕上げといった、作品としての最終調整を進めています。
2026 年~2027 年のリリースを目指して、現在も開発を進めているところです。
- 読者の方へメッセージをお願いします。
『三位一体の単一点』は、Steam ストアページを公開しています。気になっていただけた方は、「ウィッシュリスト」への登録で応援していただけると、本当に開発の励みになります。
「分厚い本を読まなくても、ゲームを通じて、AI 時代のこれからを少し考えてみたい」―― そんな方に、楽しんでもらえる作品にしたいと思っています。よろしくお願いします。
ロングインタビュー、note にて公開中
本記事は、VTuber 導師真ショウ氏が 2026 年 5 月 19 日に実施した開発者インタビューをもとに構成しています。本記事に収まりきらなかった開発の裏側、テーマの背景、ノベルゲームというメディアへの想いを、note にて公開しております。
note: https://note.com/trinity_nexus/m/m175ed9392f74
- なぜ群像劇ノベルゲームというフォーマットを選んだのか
- AI 時代と「アイデアの伝播」が交差する地点
- 『428』が 15 年経った今も色褪せない理由
- ゲームというメディアにしかできない表現とは何か
作品概要

開発者プロフィール
そんちょー
インディーゲーム開発者。元システムエンジニア。大学時代にゲーム開発を専攻したのち、IT 企業でシステム開発・課題解決に従事。フリーランス転身を機に、AI 時代の人間と社会というテーマを「ゲームというメディアでしか表現できない形」で描きたいと考え、本作の開発を開始。
主要制作メンバー
神馬譲(劇伴・音楽制作)
映画『温泉シャーク』音楽(iTunes Store サントラ・トップアルバム日本 2 位)、第 2 回「GACKT × 東京フィル」オーケストラアレンジ、GACKT WORLD TOUR 2016「LAST VISUALIVE 最期ノ月 LAST MOON」劇伴音楽アレンジ、「K-1 シンフォニックオーケストラ」アレンジ・バンドマスター、「プロジェクトセカイ」アレンジ、「キングダム乱」音楽制作などを手がけてきた劇伴家。2017 年度「第 5 回サウンド・クリエイター・オブ・ザ・イヤー」ファイナリスト選出。
白木原怜次(シナリオライター・シナリオプランナー)
『Memories Off -Innocent Fille-』『食戟のソーマ 友情と絆の一皿』『Re:ゼロから始める異世界生活-DEATH OR KISS-』のシナリオを一部担当。『星影のミラージュ』では原案・全シナリオを手がける。第3回俺的小説賞ラノベ奨励賞を受賞。BLAST ARTS 代表。
厳男子(アートディレクター)
漫画家。2009 年に アフタヌーン四季賞 萩尾望都賞を受賞してデビュー。代表作『ムラサキ』は 「次にくるマンガ大賞 2018」Web マンガ部門でTOP20 入り。ホラー短編アンソロジー『東京ネームタンク ホラー選集』にも参加。2026 年発売のノベルゲーム『アイリス・オデッセイ』にてアートディレクションを担当。
鮭まゆ(キャラクターデザイン)
バンドリ! Ave Mujica MV イラスト、株式会社 THINKR「春猿火」MV イラストなどを手がけるイラストレーター。
godzy(テックリード)
「サンダーフォースシリーズ」「仮面ライダー・バトライドウォー」などの開発に携わってきたエンジニア。業界歴20年以上のキャリアを持ち、自社ゲームエンジンの開発チームを率い、ゲームリリースまで導いた経験を持つ。
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