離職を想起したことがある人は全体の6割、上司との仕事の進め方の相性が職場定着に影響
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山崎 淳 以下、当社)は、若手の離職に関する実態を明らかにすることを目的に、社会人の1~3年目を対象として「若手の離職実態調査2026」を実施しました。
【エグゼクティブサマリ】
■離職・離職想起の実態(2023年調査との比較)
・離職を想起した経験の割合は約6割と、3年間で大きく変わらず。辞めたいと思った理由は仕事のやりがいや給与水準が上位(図表1・2)
・早期離職に至った理由は、「労働環境・条件がよくない」がトップであるものの、2位以下は3年間で大きく変化。給与よりも仕事での能力・持ち味の発揮が重視される(図表3)
・離職しない理由の1位は「転職も検討しているがリスクがある」だが、選択率は大幅に低下し、成長環境や仕事のやりがい・意義が大きく増加(図表4)
■離職・離職想起を防ぐための示唆
・上司との関係性:上司との相性を考える際は、まず仕事の進め方に意識を向ける(図表5)
・職場との関係性:率直に言い合えるか、目標をともに達成したいと思えるかが鍵(図表6)
・個人の状態:仕事を自立的に進め、成長実感を得られる状態を(図表7)
近年、少子化による若手人材の確保が困難になっています。人的資本経営への関心も高まる中、いかに従業員に定着・活躍してもらうかは経営にとってより重要な課題になってきているといえるでしょう。一方で従業員側でもキャリア自律の意識が高まる中、労働条件や待遇改善だけでは離職防止につながりにくいケースも増えており、仕事そのものの意味づけや、能力発揮・成長機会の提供が重要性を増しています。
調査の結果、在職者の62.2%が「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答しており、その割合は前回調査(2023年)の58.8%と同水準でした。「辞めたいと思った理由」としては、「仕事にやりがい・意義を感じない」「給与水準の不満」「やりたい仕事ができない」「労働条件がよくない」といった項目が上位となりましたが、実際の離職理由としては、給与面以上に「仕事で能力や持ち味を生かせないこと」が大きな要因となっていることが明らかになりました。
また、離職を防ぐ要因としては、従来の「転職リスクへの懸念」に加え、「会社のビジョンへの共感」「会社の知名度」「成長できる環境」「仕事のやりがい・意義」といった前向きな理由を挙げる割合が増加しています。特に、自立的に仕事を進められる環境や、仕事を通じた成長実感を得られることが、離職防止において重要な役割を果たしていることが示唆されます。
さらに、上司や職場との関係性も離職に大きく影響しており、若手に合った仕事の進め方をする上司と、「思ったことを率直に言い合える」という心理的安全性の高さを背景に「職場メンバーから学び」「目標をともに達成したい」と思える職場が離職防止につながる可能性が確認されました。
若手の離職を防ぐためには、待遇改善のみならず、従業員が「自分らしく能力を発揮できるか」「成長できるか」「安心して意見を言えるか」といった観点を踏まえた職場設計を行いながら、若手に関わっていくことが重要であると考えられます。本調査が、今後の人材定着施策や職場づくりを検討する際の一助となれば幸いです。
1.調査担当のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
技術開発統括部 研究本部 測定技術研究所
主任研究員 松本 洋平(まつもとようへい)

2023年の前回調査から3年後の調査となりますが、離職理由や辞めない理由の変化は想像以上に大きいものでした。離職を思いとどまる理由として、「転職に伴うリスクが不安」といった消極的なものが減り、成長できる環境や仕事のやりがい・意義といった前向きなものが大きく増加したのは、若手の価値観や外部環境の変化だけでなく、労務環境の改善や現場のマネジメントの努力があってこそではないかと思います。また、実際の離職要因として、給与水準といった人事側でコントロールできる要因が減り、現場の運用力が問われる部分や、仕事の内容・職場との関係性など現場のマネジメントの要因が大きく示されたのは、これまでの改善努力が一定の成果を出したために新たなステージに入ってきたのだと考えられます。
また、今回の結果は若手が自身の成長を求めるとともに、職場メンバーから学び、ともに成果を出したいと思っているさまがうかがえるものでした。これは非常に健全なことであり、この思いに応えることは職場、ひいては企業を強くすることにつながると考えます。多忙な現場マネジャー及びその支援を行う人事の方にはより難度が高まり手間が増える面もありますが、本調査も参考にしながらぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。
2.調査の結果
<離職・離職想起の実態(2023年調査との比較)>
- 離職を想起したことがある割合は約6割と、3年間で大きく変わらず。想起した理由は仕事のやりがいや給与水準への不満が上位
- - 在職者のうち、「会社を辞めたいと思ったことがある」と回答した人は62.2%であり、前回調査
(2023年)の58.8%と大きな差はみられなかった。
- - 辞めたいと思った理由として最も多かったのは、「仕事にやりがい・意義を感じない」(21.
8%)であり、次いで「給与水準が満足できない」(19.5%)、「自分のやりたい仕事ができない」(14.1%)が続いた。上位項目は前回調査と同様の傾向となっている。
- - 一方で、「会社の将来性に不安がある」(12.3%→4.0%)や、「昇進・昇格が見込めない」(8.1%→2.9%)といった項目は前回調査から低下していた。
⇒辞めたいと思う理由は、「仕事にやりがい・意義を感じない」といった仕事の内容に対する不満に加え、「給与水準」などの労働条件面が引き続き中心となっている。一方で、会社の将来性や昇進への不安よりも、自身の仕事内容や能力発揮、働きがいへの関心が相対的に高まっている状況がうかがえる。
図表1:離職を想起した経験

図表2:離職を想起した理由

- 早期離職に至った理由は、「労働環境・条件がよくない」がトップであるものの、2位以下は3年間で大きく変化。給与よりも仕事での能力・持ち味の発揮が重視される
- - 実際の離職理由として最も多かったのは、「労働環境・条件がよくない」(22.4%)であり、次いで「仕事で自分の能力や持ち味を発揮できない」(21.6%)、「希望する働き方ができない」(19.2%)が続いた。
- - 「労働環境・条件がよくない」や「希望する働き方ができない」は前回調査でも上位に挙げられており、離職理由として継続して影響が大きいことが確認された。
- - 一方で、前回調査では12位だった「仕事で自分の能力や持ち味を発揮できない」が今回2位まで上昇しており、「給与水準に満足できない」は前回2位(18.4%)から今回6位(8.0%)へ低下した。
⇒実際の離職理由としては、労働条件や働き方に関する不満に加え、「仕事で能力や持ち味を生かせないこと」が大きな要因となっていることが明らかになった。待遇面だけではなく、自身の強みや能力を発揮できる実感、仕事との適合感が、定着において重要性を増している状況がうかがえる。
図表3:実際の離職理由

- 離職しない理由の1位は「転職も検討しているがリスクがある」だが、選択率は大幅に低下し、成長環境や仕事のやりがい・意義が大きく増加
- - 離職を思いとどまる理由として最も多かったのは、「転職を検討しているが、リスクがあると感じる」(15.6%)であり、前回調査と比較すると選択率は低下したものの、引き続き最上位となった。
- - 次いで、「職場の人間関係がよい、合っている」(13.0%)、「給与水準に満足している」(11.1%)、「福利厚生が充実している」(11.1%)が続き、人間関係や待遇面への満足が定着要因となっていることが確認された。
- - 一方で、前回調査で上位だった「会社がつぶれる心配がない」(18.0%→10.9%)や、「転職を検討しているが、条件に合うものが見つかっていない」(14.2%→8.6%)は低下していた。
- - また、「会社のビジョン・価値観に共感している」(0.9%→6.9%)、「会社の知名度が高い」(3.8%→9.7%)、「仕事にやりがい・意義を感じている」(2.8%→8.4%)、「成長できる環境がある」(3.3%→8.6%)など、前向きな理由の選択率が上昇していた。
⇒会社の安定性や転職リスクの高さが主な定着理由だった前回調査に対し、今回は「人間関係」「給与・福利厚生」などへの満足に加え、「成長環境」や「仕事のやりがい・意義」「会社への共感」といった前向きな理由が増加していることが確認された。働き続ける理由として、単なる消極的定着ではなく、仕事や組織への納得感・共感が重要性を増している状況がうかがえる。
図表4:離職を思いとどまる理由


<離職・離職想起を防ぐための示唆>
以下では在職と離職を分ける要因を考察するために、自己都合退職の有無・離職想起の有無により「A)在職者・離職想起なし」「B)在職者・離職想起あり」、「C)離職者」の3群に分けて考察する。
- 上司との関係性:上司との相性を考える際は、まず仕事の進め方に意識を向ける
- - 上司との相性については、いずれの項目においても「A)在職者・離職想起なし」が最も高く、次いで「B)在職者・離職想起あり」、「C)離職者」の順となっていた。
- - 特に、「私と職場の上司の仕事の進め方は合っている」については、「B)在職者・離職想起あり」が3.3であるのに対し「C)離職者」が2.8と差が大きく、上司との仕事の進め方が合っているかどうかが定着に影響していることがうかがえる。
⇒離職防止においては上司と気が合うことも重要だが、メンバーと上司の仕事の進め方にズレがないか、メンバーがやりにくさを感じていないか、といった仕事軸を意識した関わりができるとより有効である可能性が示唆される。
図表5:上司との関係性

- 職場との関係性:率直に言い合えるか、目標をともに達成したいと思えるかが鍵
- - 組織成果へのコミットメント、職場の心理的安全性、職場への貢献意欲のいずれも「A)在職者・離職想起なし」が最も高く、次いで「B)在職者・離職想起あり」、「C)離職者」の順となっていた。
- - その中でも相対的に「B)在職者・離職想起あり」と「C)離職者」の差が大きいのは「職場の目標や成果をメンバーとともに達成したいと思う」「職場のメンバーから学ぶことが多い」といった組織成果へのコミットメントに関わる点、「職場のメンバーには思ったことを率直に言い合える安心感がある」といった心理的安全性に関わる点であった。
⇒離職を防ぐためには、待遇や制度を整えるだけではなく、「率直に意見を言い合える」といった心理的安全性の高い職場づくりが重要であることが示唆された。また、メンバーから学びを得られる環境づくりを通じて、メンバーとともに目標を達成したいといった組織への主体的な関与を高めていくことが、定着促進につながる可能性がうかがえる。
図表6:離職を防ぐ職場とは

- 個人の状態:仕事を自立的に進め、成長実感を得られる状態を
- - 多くの項目において、「A)在職者・離職想起なし」が「C)離職者」を上回っており、仕事に対する前向きな実感が定着につながっていることが示唆された。
- - また「B)在職者:離職想起あり」が「C)離職者」より有意に高かった項目として、スキル習得・自立的な仕事遂行・成長実感・成果志向・会社への誇りが挙げられる。これらは離職想起がありながらも実際の離職に至らなかった人が相対的に保持していた要素であり、実際の離職を踏みとどまらせることに関連している可能性が示唆される。
⇒離職を防ぐためには、仕事を自立的に進められる環境を整え、成長実感や達成感を得られる状態をつくることが重要であると考えられる。そのような取り組みを通じ、高い成果への志向や会社への誇りも培われていくと想定される。
図表7:どのような状態になると離職を防げるか

3.調査概要

リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・ 戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp
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