独立行政法人国立科学博物館(館長:真鍋 真)は、2026年7月30日(木)から10月18日(日)まで、上野本館地下2階ディスカバリーポケットにて、学術変革領域研究(A)「pH応答生物学の確立」に関する研究紹介をおこないます。

 当館は、2025年度より文部科学省科学研究費助成事業 学術変革領域研究(A)「pH応答生物学の確立」(理化学研究所、京都大学、岡山大学、国立科学博物館、順天堂大学、北海道大学、東京大学)に参画しています。海洋酸性化や体内環境の変化など、生物はさまざまなpH変化にさらされています。これまで生命科学では、「細胞の中のpHは常に一定に保たれている」と考えられてきました。しかし近年、細胞はpHの変化を単に受けるだけでなく、自らpHを変化させ、その変化を生命活動の調節に利用していることが明らかになりつつあります。
 本研究は、この従来の常識を大きく転換し、生物がpHをどのように「感じ」、どのように生命活動に活用しているのかを、多様な生物を対象に解明することで、「pH応答生物学」という新たな学術分野の確立を目指す先駆的な研究です。
 この研究プロジェクトでは、生物がどのようにpHの変化を感知し、生命活動に利用しているのか、そのしくみの解明に取り組んでいきます。当館では、有孔虫という単細胞の生物を用いて、pH変化と生物応答の関係を明らかにする研究に取り組んでおり、現在進行中のホットな研究を紹介いたします。また、2026年10月11日(日)には、当館にて研究内容をわかりやすく伝える一般向けのシンポジウムも開催いたします。
※シンポジウム等の詳細は本研究のWEBサイトをご覧ください。
 https://phbiology.rcast.u-tokyo.ac.jp/

※pH(ピーエイチ / ペーハー)
 pH(ピーエイチ / ペーハー)とは、液体が酸性かアルカリ性かを示す尺度です。 0から14までの数値で表され、7が中性、7より小さければ酸性(数値が小さいほど強い酸性)、7より大きければアルカリ性(数値が大きいほど強いアルカリ性)になります。海水はもともと弱いアルカリ性ですが、二酸化炭素が溶け込むことでpHが下がり、海洋酸性化が進みます。

研究紹介概要

【期間】 2026年7月30日(木)~10月18日(日)
【場所】 国立科学博物館(東京都台東区上野公園7-20)
     地球館地下2階 ディスカバリーポケット




展示概要】

 学術変革領域研究(A)「pH応答生物学の確立」の内容をわかりやすくパネルで伝えるとともに、研究で用いているわずか数mmほどの有孔虫実物標本、有孔虫の3D拡大模型、ターコイズキリフィッシュの休眠胚を展示します。
 また、モニターを使って、学術変革領域研究(A)に参加している研究者が、研究内容や研究の面白さなどを映像で伝えます。
 以下、展示パネルで紹介している詳しい研究内容です。
<大きな研究テーマ>
 この研究プロジェクトでは、海にすむ有孔虫やサンゴ、陸上のイネ、湖に生息するキリフィッシュなどの生物、また、ヒトのからだのがん細胞などが、どのようにpHの変化を感じ取り、それに適応しているのか、あるいは細胞内pHをどのように制御しているのかを明らかにすることを目的としています。
 また、pH応答の研究が進まなかった大きな理由の一つは、生物の体の中で起こる小さなpH変化を観察することが難しかったためです。わたしたちの研究では、高感度MRIや遺伝子・代謝物の解析技術を活用し、生体内で起こるpHの変化を「可視化」する新しい技術の開発を進めています。

<詳しい研究内容>
1. 単細胞の生物、有孔虫のpH応答を探る(国立科学博物館、久保田好美)
 星の砂として有名な沖縄に生息する有孔虫は、カキやホタテと同じ炭酸カルシウムの殻を作ります。沖縄や茨城の海の有孔虫を使って、低いpH海水での成長の違いや細胞や殻の作り方の違いを研究しています。その結果、低いpH海水では、成長が抑制されることがわかりました。

大型有孔虫が生息する沖縄の海。こうした海で有孔虫をサンプリングします。






左:現在と同じpH(8.0~8.4)で飼育した有孔虫。全長3mmほど。右:現在よりも低いpH(7.6~7.7)で飼育した有孔虫。全長1mmほど。


1. ターコイズキリフィッシュの発生休眠のしくみを解き明かす(理化学研究所、荻沼政之)
 アフリカ原産のターコイズキリフィッシュは、乾季を生き延びるために胚の状態で発生を一時停止する「発生休眠(ディアポーズ)」という特殊な能力をもつ魚です。私たちは、この発生休眠を支える細胞内環境の変化に着目し、細胞内pHなどの環境が発生休眠にどのように関わるのかを研究しています。

ターコイズキリフィッシュのライフサイクル

企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ