「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」の石田美佐緒氏が、ブランド・地域連携・人材育成を語る

 文京学院大学(学長:福井勉)は、経営学部主催のトークイベントシリーズ『ビジネス×コンテンツ=未来をプロデュースせよ』の第三弾として、「音楽フェス×経営学:人・空間・時間を編成するビジネスプロデュース」を2026年7月11日のオープンキャンパスで同時開催しました。
 本イベントには、音楽フェス「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」(通称:ラブシャ)を日本有数のフェスへと成長させた、株式会社スペースシャワーネットワークの石田美佐緒氏と、本学経営学部の高橋円香准教授が登壇。音楽・エンタテインメント分野にも精通する吉田尚記アナウンサーの司会のもと、フェスのブランド形成や地域連携、非財務的価値を経営学・会計学の視点から語りました。経営学部の学生スタッフが企画・運営に参加し、本学が重視する「現場で学ぶ」実践的な機会にもなりました。

写真左から:石田美佐緒氏、高橋円香准教授、吉田尚記氏

■トークイベント開催の背景と見どころ

1.反対の声から始まった、山中湖での音楽フェス
 「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」は、日比谷野外音楽堂で実施していた音楽イベントの生放送企画を前身として、2007年に山中湖畔へ会場を移す形でスタートしました。
 石田氏は、立ち上げ当時、社内から「なぜ東京から山中湖まで行くのか」「本当に集客できるのか」といった反対の声があったことにも言及。また、放送局が独自に大規模フェスを主催することに対し、既存のイベント業界から戸惑いや反発もあったと振り返りました。
 初年度は現在の5分の1程度の集客規模で、協賛企業も1社からのスタートでしたが、その後、3年目に桑田佳祐氏が出演したことを契機にメディア露出が拡大しました。一方、東日本大震災後には開催継続について悩む時期もあり、6年目頃からようやく「毎年開催できる」という手応えを得たと語りました。
 現在では3日間で約8万5,000人を動員し、協賛企業も19社に拡大。石田氏は、短期的な成果を求めるのではなく、毎年の挑戦と改善を積み重ねることが、フェスを継続的な事業へと成長させる上で重要だったと説明しました。



2.会計学から見る「財務諸表に表れない価値」
 高橋准教授は、音楽フェスが生み出す経済的な効果について、1.会場設営やイベント開催に伴う直接的な効果、2.宿泊、飲食、交通、土産品など地域への波及効果、3.音響、輸送、人件費などを通じて生じる間接的な効果、という3つの構造から解説しました。
 さらに、動員数やチケット売上といった数値だけでは測れない、ブランド価値、ファンコミュニティ、アーティストや地域との信頼関係といった「無形の価値」に着目しました。
 こうした価値を生み出すための支出は、会計上、当期の費用として処理されることが多く、企業の資産として財務諸表に表れにくい一方、中長期的には企業価値や事業の持続性を支える重要な基盤になると説明しました。
 音楽フェスを会計学の視点から捉えることで、売上や利益だけでは把握できない、コンテンツビジネスならではの価値創出の構造が示されました。

3.約20年続く理由は「正当性」「伝統」「コミュニティ」
 吉田氏は、長く支持されるフェスにとって重要なのは、動員数や経済効果だけではなく、「誰が、どのような思いで開催しているのか」が来場者や地域から理解されていることだと指摘しました。
 スペースシャワーTVが長年にわたりアーティストと築いてきた関係性が、出演者からの信頼や来場者の共感につながり、会場での自発的なマナーや一体感を生み出しているのではないかと分析しました。
 また、「伝統は1年目には作れない」とした上で、継続によって伝統が生まれ、伝統がコミュニティを育て、コミュニティが次の開催を支えるという循環について示唆し、こうした積み重ねこそが、財務諸表には表れにくいフェスの価値であると語りました。
 石田氏からは、山中湖村と連携したふるさと納税返礼品としての展開、地域の観光施設との割引企画、富士吉田地域の織物工芸とのコラボレーション、地元メディアとの連携など、地域とともにフェスを育てる具体的な取り組みも紹介されました。
 石田氏は、外部調査において2019年の経済効果が約80億円と報告されたことに触れ、事前の買い物や準備に伴う消費まで含めると、現在は約100億円規模に達する可能性があるとの見方を示しました。



4.AI時代だからこそ重要になる「人の心を動かす体験」~次世代・学生へのメッセージ~
 学生や次世代の担い手に向けて、石田氏は、フェスやコンテンツ業界で仕事をする上では、「アーティストをはじめとする、人へのリスペクト」が欠かせないと語りました。
 また、専門的なスキルを身につけることに加え、好きなものに対する気持ちや、経験のないことにも挑戦する意欲が、仕事を前に進める力になると説明しました。
 AIによって業務の効率化が進む時代だからこそ、音楽ライブやイベントの現場で生まれる、人と人とが直接関わり、互いの心を動かす体験の価値は一層高まっていくとの考えも示しました。
 自身が大規模フェスを手がける女性プロデューサーとして歩んできた経験にも触れ、今後、性別を問わず多様な人材がイベントやコンテンツをプロデュースする立場で活躍することへの期待を語りました。

5.本イベントを実施した背景と参加者の声
 高橋准教授は、本学経営学部が「実践的な学び」「現場で学ぶこと」を重視し、学生がトライ・アンド・エラーを重ねながら成長できる教育環境を整えていることを紹介しました。
 今回のトークイベントでも、学生スタッフがオープンキャンパスの企画・運営に参加しています。来場者に楽しんでもらうために何が必要かを考え、準備や当日の運営に主体的に携わりました。授業で学んだ経営学の知識を、実際のイベントの企画、集客、会場運営、情報発信へと結びつけることで、学生がビジネスプロデュースを実践的に学ぶ機会となりました。
 参加した高校生たちからは、将来性が見えて、意欲がわいてきたや自分の夢と一致したなどの声があり、大学での学びを意識できる機会となりました。
文京学院大学経営学部では、今後もコンテンツ業界の第一線で活躍する実務家との交流や、学生が主体的に関わる学びを通じ、創造性と経営の両方の視点を持つ人材の育成を進めてまいります。

■出演者プロフィール

石田 美佐緒 氏
(株)スペースシャワーネットワークコーポレートエグゼクティブ、(株)SKIYAKI取締役。(株)H.I.P.、FM AMERICA(株)勤務などを経て(株)スペースシャワーネットワーク入社。
様々な音楽事業に関わる中、音楽フェス「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER」総合プロデューサーとして日本有数のフェスに育てる。
その後、執行役員・スペースシャワーTV事業本部長、(株)MASH A&R代表取締役社長(兼任)、上席執行役員、アーティストプロデュース事業本部長就任などを歴任し現職。





高橋 円香 准教授(文京学院大学経営学部)
文京学院大学経営学部准教授。博士(商学)。明治大学大学院商学研究科博士後期課程修了。専門は財務会計・会計理論・企業経営分析・簿記教育。企業活動を支える基盤としての会計に着目し、その社会的意義と組織・経営との関係を研究。数字の裏側にある意思決定や価値創出の構造を捉えることに関心を持つ。
著書に『企業簿記論』(創成社、共著)、『内部留保の研究』(唯学書房、分担執筆)、『現代日本の多国籍企業』(新日本出版社、分担執筆)がある。






■司会プロフィール

吉田 尚記 氏
慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサーを経て、現在はアナウンサー。2012年第49回「ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」受賞。ラジオのレギュラー番組のほか、テレビ番組やイベントでの司会進行などで年間200本ほど出演。特に、マンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、「マンガ大賞」発起人でもある。2019年には、いち早くVtuberとしての活動をスタート。バーチャルアナウンサー「一翔剣(いっしょう・けん)」としてVRイベントの司会を多く務めるだけではなく、VRのビジネスとしての側面についての知見も持ち、アナウンサーという肩書を越境した活動を続けている。東京大学大学院在学中。





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