専門家自身が「ノネコのみの掲載では実効性が失われる」と指摘。見分けることができないものを防除対象とする――環境省検討会の議事録が、その矛盾を示しています。
公益財団法人どうぶつ基金(理事長:佐上邦久、本部:兵庫県)は、環境省が進める「生態系被害防止外来種リスト」の改定について、2026年8月4日に報じられた方針転換が環境省自身の記録と明らかに矛盾していることを指摘します。あわせて、イエネコ・ノネコ・イヌ・ノイヌを防除推進外来種から除外することを、改めて要望します。

- 報道された方針転換
2026年8月4日、環境省は、対象を野生化した猫に限っていた従来の扱いを広げて野良猫なども含めるとしていた改定案を撤回する方針を明らかにしたと報じられました。従来どおり、野生化した猫だけを「ノネコ」として掲載することとし、8月7日の専門家会合で修正のうえ正式決定する方針とされています。石原宏高環境大臣は同日の会見で、飼い猫まで逃げれば殺処分の対象になるかのような誤解を招き、リストの目的とは異なる影響が出る危険性が高い、という趣旨の説明を行っています。
大臣の指示による最終段階での方針転換は極めて異例と報じられています。
2.しかし、検討会の議事概要は別のことを記録している
環境省が公開している「生態系被害防止外来種リストの見直しに係る検討会」の議事概要には、複数の委員が「ノネコ」という名称のままでは対策として機能しない、という趣旨を繰り返し述べた記録が残されています。
■ 第4回検討会(2025年2月19日)【哺乳類について】の項
亘悠哉委員(森林研究・整備機構 森林総合研究所)は、ノネコ・ノイヌは生物名であるイエネコ・イヌと書くべきであり、この提案が受け入れられないことは許容できない、と述べています。理由として、実態としてノネコとノラネコは区別できないこと、ノネコとすると生態系・感染症の影響が最も強いノラネコを外来種として評価できなくなることを挙げています。
川上和人委員(同)はこれに賛成し、小笠原諸島で希少種が捕食されているにもかかわらず、ノラネコの可能性があるために対処できない事例を経験したと述べたうえで、区別して「ノネコ」しか掲載しないのではリストを作る意義が損なわれる、という趣旨を述べています。
石橋徹委員(いのかしら公園動物病院 院長)は概ね賛成としつつ、運用の際に現場での焦点になると指摘し、奄美でのノネコ捕獲において外に出していた飼い猫を混獲した事例があったと記憶している旨を述べています。
これに対し、環境省事務局(野生生物課外来生物対策室 田口知宏係長)は、ある個体がノラネコなのか飼い猫なのかを一概に判別できない状況等、外来種対策としての捕獲を推進するうえでの問題があるため、積極的にリストに掲載することはしていない、と説明しています。
石井実座長は、本件については継続して検討したいと述べ、この回では結論に至っていません。
■ 第5回検討会(2025年10月23日)【掲載種の名称について】の項
亘委員は改めて、「ノネコ」は鳥獣保護管理法上の呼称であって許可を得なければ捕獲等ができず外来種対策になじまないこと、人に依存しないノネコは非常に限定された場所にしかいないこと、ネコ問題の主役であるノラネコが含まれなくなること、そして「ノネコ」と掲載することでノラネコを除外してしまっては実効性が失われてしまうという趣旨を述べています。川上委員も改めて賛意を示しています。
3.どうぶつ基金が指摘する矛盾
以上の記録から、次の三つが確認できます。
(1)委員側の説明によれば、ノネコとノラネコは区別できず、「ノネコ」のみの掲載では実効性がない。
複数の委員が、実態としてノネコとノラネコを区別することはできず、ノネコのみを掲載するのでは対策としての実効性が失われる、と述べています。
(2)事務局側の説明によれば、ノラネコと飼い猫は区別できず、それが捕獲を推進するうえでの問題である。
環境省事務局は、ある個体がノラネコなのか飼い猫なのかを一概に判別できない状況等があり、外来種対策として捕獲を推進するうえでの問題となるため、積極的にリストに掲載することはしていない、と説明しています。
(3)そして今回、環境省は「ノネコ」の掲載を維持する方針を示した。
ここで、(1)と(2)を並べてください。
委員は、ノネコとノラネコは区別できないと言う。事務局は、ノラネコと飼い猫は区別できないと言う。両者を合わせれば、環境省自身の記録によって、ノネコ・ノラネコ・飼い猫の三者はいずれも現場では判別できないことが確認されていることになります。これは外部の主張ではなく、環境省が公開した議事概要に記された、環境省側の説明です。
その三者が判別できないという前提のもとで、そのうちの「ノネコ」だけを防除推進外来種として掲載すればどうなるか。判別できない以上、防除の対象には、ノラネコも、飼い主のいる猫も含まれうることになります。 現場に残るのは、区別のつかない猫を前にして誰かが判断を迫られる状況だけです。
そして、その帰結はすでに現実のものとして検討会で言及されています。第4回検討会で石橋徹委員は、奄美でのノネコ捕獲において外に出していた飼い猫を混獲した事例があったと記憶している旨を述べています。
さらに(1)を加えれば、こうなります。専門家が「実効性が失われる」と述べ、事務局が「判別できないため積極的な掲載はしていない」と述べたものが、実効性の回復も掲載理由の追加もないまま、そのまま防除推進外来種に残されようとしている。
どうぶつ基金は、これを明らかな矛盾として指摘します。掲載の根拠が環境省自身の記録の中に存在しない以上、「ノネコ」を防除推進外来種に残すことは、行政の判断として正当化できません。
4.どうぶつ基金の要望
どうぶつ基金は、次のことを要望します。
イエネコ・ノネコ・イヌ・ノイヌを、防除推進外来種から除外すること。
どうぶつ基金は、すでに環境省に対し、防除推進外来種からイエネコ(ノネコを含む)およびイヌ(ノイヌを含む)を削除するよう求める意見書を提出しています。
出典
● 環境省「生態系被害防止外来種リストの見直しに係る検討会」開催概要
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist/gairailist.html
● 令和6年度 第4回 議事概要(2025年2月19日)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist/gairailist/byseitailist4/gaiyou.pdf
● 令和7年度 第5回 議事概要(2025年10月23日)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist/gairailist/byseitailist5/gaiyou.pdf
● 令和5年度 第2回 議事概要(2024年2月28日)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist/gairailist/byseitailist2/gaiyou.pdf
※ 環境省が公開しているのは逐語の議事録ではなく「議事概要」です。本リリースにおける各委員および事務局の発言は、同議事概要の記載に基づくものです。
累計署名7万筆以上ー。
この国民の切実な声と不安を受け止め、環境省におかれましては、単なる周知不足としての「誤解の払拭」ではなく、専門家や動物愛護の当事者を交えた透明性の高い再検討の場を設置し、「イエネコ」「ノネコ」「イヌ」「ノイヌ」を防除推進外来種に指定しない決断をされることを深く期待いたします。

■ 引き続き署名活動を行っています!
どうぶつ基金では、Change.orgでオンライン署名を引き続き行っています。集まった声は、環境省への働きかけに活用させていただきます。皆様のご協力をお願いいたします。
▶ 署名ページ:イエネコを「防除推進外来種」にしないよう、環境大臣に求めます
公益財団法人どうぶつ基金
公益財団法人どうぶつ基金は、1988年の創設以来、一貫して猫をはじめとする動物の福祉と適正管理に取り組んでいます。全国598の自治体(行政)と協働して「さくらねこ無料不妊手術事業(TNR)」を実施し、これまでに44万頭を超える(累計441,876頭)の野良猫・多頭飼育崩壊の猫に無料で不妊手術を行ってきました。環境省とも動物愛護管理の分野で連携し、これまでに35を超える自治体から表彰状・感謝状を受けています。
<組織概要>
名称:公益財団法人どうぶつ基金(Animal Action Fund)
住所: 兵庫県芦屋市奥池南町71-7
設立:1988年6月
理事長:佐上 邦久
公式サイト:https://www.doubutukikin.or.jp
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