「個人の注意」だけに委ねない暑熱対策、プラネタリーヘルス教育、保健医療・福祉分野の脱炭素化を政府に提言
特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)(所在地:東京都港区、代表理事:乗竹 亮治)は、下記の緊急声明の発表を、プロジェクトの事務局として支援しました。

医療・公衆衛生を学ぶユースが活動する、アジア医学生連絡協議会日本支部(AMSA Japan)、国際医学生連盟 日本(IFMSA-Japan)、日本国際保健医療学会学生部会(jagh-s)の3団体は、2026年8月7日、「猛暑から命と未来を守る、ユースからの緊急声明―誰も取り残さない気候変動対策を求めて―」を発表しました。
2026年7月20日から26日までのわずか1週間に、全国で18,591人が熱中症により救急搬送され、初診時に死亡が確認された人は45人、重症者は713人に上りました。欧州でも、2026年夏の熱波により、7月中旬までに5か国だけで約1万人の超過死亡が報告され、猛暑が国内外で深刻な健康危機となっています。
こうした状況を受け、3団体は、熱中症対策を個人の注意や現場の裁量だけに委ねず、命と健康、学び、労働、保健医療体制を守るための社会の仕組みとして整備するよう、日本政府および社会に呼びかけています。
■声明の背景と重要性
2026年7月、日本各地で40℃以上の酷暑日が相次ぎ、熱中症による救急搬送者数は1週間で1万人を超えました。欧州でも、熱波による超過死亡や救急要請の増加が報告されています。猛暑の影響は熱中症にとどまらず、学校や部活動、労働、医療・福祉の現場へと広がっています。気候危機は、将来の環境問題ではなく、現在の命と健康、学び、労働、医療提供体制を脅かす健康危機となっています。気候危機による負担はすべての人に等しく生じるものではなく、年齢や健康状態、所得、住環境、労働環境などによって大きく異なり、既存の健康格差をさらに拡大させています。また、学校や職場、家庭など、それぞれの場で暑さへの対策が求められていますが、施設や設備、運営体制、経済状況などの制約により、個人や現場の努力だけでは十分な対策を講じられない場合があります。特に、暑さの影響を受けやすい人々を確実に守るためには、個人の心がけに加え、活動環境や労働環境の整備、必要な支援につなぐ仕組みなど、社会全体で対策を進める必要があります。
若者は、猛暑による学び、活動機会、健康への影響をすでに受けていると同時に、今後さらに深刻化する気候危機の影響を長期にわたって受け続ける世代です。本声明は、医療・公衆衛生を学ぶ次世代の立場から、気候危機への対応を中長期的な環境保護施策にとどめず、命と健康、学び、労働、保健医療体制を守るための最優先の社会課題として位置づけることを求めるものです。そのうえで、暑さから命を守ることを個人の努力や現場の裁量だけに委ねるのではなく、社会全体で支える仕組みを構築すること、そして将来にわたってすべての人が安心して暮らせる社会の実現に向け、脱炭素社会への移行を誰も取り残さない形で進めることを提起しています。
■3つの主要提言
本声明は、気候危機への対応を中長期的な環境保護施策としてではなく、命と健康、学び、労働、保健医療体制を守るための最優先の社会課題として位置づけるよう求め、以下の3つの提言を行っています。1. 次世代医療・公衆衛生人材への「プラネタリーヘルス教育」の実質化と現場連動
気候変動と健康、ワンヘルス、プラネタリーヘルスに関する教育を、制度上の明記にとどめず、教育現場および医療・福祉現場で実践できる形で実装することを求めます。医学・歯学・薬学・看護学の各モデル・コア・カリキュラムへの位置づけが進む一方、その内容を実践的な学びや現場での行動につなげる教育体制は十分とはいえません。指導できる教員の養成、教材の整備、実践的な演習の拡充を進めるとともに、学びと医療・福祉現場の取り組みを連動させ、卒前教育から生涯教育までを通じた計画的な人材育成を求めます。
2. 社会全体で命を守る適応策の制度化
熱中症対策を一人ひとりの注意や努力だけに委ねず、社会の仕組みとして整備することを求めています。具体的には、学校・スポーツ施設への空調整備、暑さ指数(WBGT)に基づく活動基準、地域の脆弱性評価と早期警戒システム、医療・福祉機関が地域の支援につなぐ気候適応型「社会的処方」の導入などを提言しています。あわせて、全国で継続的に対策を実施するための安定的な財源の確保を求めています。
3. 温室効果ガス排出の大幅削減と、誰一人取り残さない脱炭素社会への移行
気候危機のさらなる深刻化を抑え、人々の命と健康、生活基盤を将来にわたって守るため、温室効果ガス排出を大幅かつ速やかに削減し、脱炭素社会への移行を進めることを求めています。保健医療・福祉分野についても、エネルギー消費や排出の削減を明確な目標として掲げ、その取り組みを、患者・職員の健康、療養・就労環境の質、災害時のサービス継続性を同時に高める形で進めることを提言しています。あわせて、脱炭素化に伴う費用や負担が、地方・中小の医療機関や福祉施設、そこで働く職員に偏らないよう、施設の状況に応じた財政的・技術的支援を整備し、地域間・施設間の格差を広げない仕組みを構築することを求めています。
■なぜ今、ユースが声を上げるのか
近年の記録的な暑さは、熱中症の増加にとどまらず、学校やスポーツ活動、屋外での労働、医療・福祉の現場など、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼしています。猛暑のたびに水分補給や外出の自粛を呼びかけるだけでは、特に子ども、高齢者、疾患を抱える人、経済的に困窮する世帯など、暑さの影響を受けやすい人々を十分に守ることはできません。発起団体である3団体のメンバーは、猛暑による健康や学び、活動機会への影響をすでに受けていると同時に、今後さらに深刻化する気候危機の影響を長期にわたって受け続ける世代です。また、医療・公衆衛生を学ぶユースは、将来、保健医療・福祉の現場で患者や地域の健康を守り、対策を実装する担い手でもあります。
こうした当事者と将来の担い手という双方の立場から、3団体は、気候危機への対応を単なる将来の環境問題ではなく、現在の命と健康、学び、労働、保健医療体制を守るための最優先の社会課題として位置づけるよう求めています。
■発起団体によるコメント
本共同声明に対して、本声明の発起団体であるAMSA Japan、jagh-s、IFMSA-Japanは以下のようにコメントしています。【AMSA Japan】
平田 竜都(AMSA Japan)
気候危機はもはや将来の課題ではなく、酷暑による救急搬送や医療インフラの機能停止といった形で、現在の現場と日常を脅かす巨大な健康危機です。アジアの医学生ネットワーク(AMSA)をはじめとする次世代の医療・公衆衛生系学生は、極端な気象に晒される当事者であると同時に、将来この危機に立ち向かう医療を担う責任ある存在として、深い危機感を持って本声明に関わっています。 社会および政府に対しては、気候変動対策を単なる環境保護にとどめず、人命と健康を守る「最優先の危機管理投資」と位置づけることを求めます。具体的適応策の法制化や医療現場の脱炭素化(グリーンヘルスケア)を進めるとともに、現場で即座に実践できる体系的なプラネタリーヘルス教育の完全実装を望みます。次世代の健康と未来を守るため実効性ある施策の実行を強く訴えます。
【IFMSA-Japan】
石井 はる香(公衆衛生に関する委員会(SCOPH)責任者)
田村 晃子(Healthy Lifestyle Project(HLP)責任者)
片山 紗良(HLP コアメンバー)
倉澤 日向子(HLP コアメンバー)
鈴木 絢葉(HLP コアメンバー)
IFMSA-Japan 公衆衛生に関する委員会(SCOPH)では、全国の医療系学生を対象にプラネタリーヘルス教育を進めています。 主な活動として、プラネタリーヘルス実践のために学生ができることを検討する勉強会や、プラネタリーヘルスダイエットに基づく調理イベント・講演会を実施し、「自分ごと」として問題を捉え、議論する機会を設けてきました。 その学びを深める中で私たちが強く感じているのは、気候変動は遠い未来の問題ではなく、今まさに医療や生活の場を脅かしている健康危機であるということです。 今回の提言では、未来の医療従事者の立場、そしてユースの立場から、自らの学びや行動にとどまらず、誰も取り残さない、抜本的な気候変動対策を求めます。 私たちはこれからも、持続可能な医療と社会の実現に向けて、積極的に取り組み、発信していきます。
【jagh-s】
増田 健人(順天堂大学国際教養学部4年)
土井 賢太郎(大分大学医学部医学科2年)
速水 沙恵(聖路加国際大学看護学部看護学科4年)
近年、毎年のようにニュースで「最高気温を更新しました」という表現を頻繁に目にします。また、司会者や街のおじいさん・おばあさんが「今の夏は昔より暑いですね」と発言するのをよく耳にするようになりました。私たち学生は20数年しか生きていませんが、今の夏は私たちが子供の頃よりも暑くなったと感じます。気象庁によって今年から酷暑日が新たに設定され、既に1週間で1万人の熱中症による救急搬送者が出ていることが報告されています。その中には命を落とす方も複数生じており、無視できない数字です。これはプラネタリーヘルスにおける暑熱問題が新たな時代に突入した現れと言えます。持続可能な未来に向けた暑熱対策に取り組むことは今を生きる私たちの責務であると考えます。そこで公衆衛生系学生団体3団体が中心となり、暑熱に関する緊急声明を作成いたしました。本声明は学生目線で暑熱に対する提言をまとめました。今回の声明文が社会に広く行き渡り、社会実装に繋げられますことを切に願います。
■発起団体・事務局
発起:アジア医学生連絡協議会日本支部(AMSA Japan)、国際医学生連盟 日本(IFMSA-Japan)、日本国際保健医療学会学生部会(jagh-s)事務局:特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)
■賛同者
本声明の趣旨に、個人19名、団体5件のご賛同をいただいています。(2026年8月18日時点)本声明では、引き続き賛同いただける団体・個人を募集しています。ご賛同くださる方は、こちらの賛同フォームよりご登録ください。
賛同する
※本声明への賛同は、2026年9月30日まで受け付けています。
賛同者一覧・詳細は、以下HGPIウェブサイトをご覧ください。
詳細を見る
HGPIウェブサイトへ
アドバイザリーボードメンバーによる賛同
本声明の作成にあたっては、HGPIプラネタリーヘルスプロジェクトのアドバイザリーボードにご参加いただいている有識者の方々より、ご助言をいただきました。深く御礼申し上げます。このうち、本声明の趣旨にご賛同いただいた方々は、以下のとおりです。なお、本声明は、ご助言いただいたアドバイザリーボードメンバーおよびその所属機関・団体の公式見解を示すものではありません。(敬称略・順不同)- 中野 夕香里(公益社団法人 日本看護協会 専務理事)
- 近藤 尚己 (京都大学 大学院 医学研究科 社会健康医学系専攻 社会疫学分野 主任教授)
- 櫻井 勇介(一般社団法人日本ゼロカーボン・ウェルフェア協議会 事務局長)
- 菊池 栄作(北海道大学 One Healthリサーチセンター社会・国際連携統括室長・特任准教授(大学院国際感染症学院、獣医学部兼任))
- 松浦 広明(松蔭大学副学長・常任理事/世界保健機関(WHO)環境・気候変動・健康経済学に関する技術諮問委員会 委員長)
■日本医療政策機構(HGPI):https://hgpi.org/
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、2004年に設立された非営利、独立、超党派の民間の医療政策シンクタンクです。市民主体の医療政策を実現すべく、独立したシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供してきました。特定の政党、団体の立場にとらわれず、独立性を堅持し、フェアで健やかな社会を実現するために、将来を見据えた幅広い観点から、新しいアイデアや価値観を提供しています。設立以来、女性の健康、がん対策、認知症、薬剤耐性、再生医療、グローバルヘルスなど、当時は十分に議論されていなかったテーマをいち早く政策課題として提示し、法制度や国家戦略の形成、国際的な政策議論に反映されるなど、具体的な政策の前進に寄与してきました。こうした継続的な取り組みは、国内外の政策関係者や国際機関からも一定の評価を受けており、日本発の医療政策シンクタンクとして国際的な対話の場に参加し続けています。日本国内はもとより、世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、地球規模の健康・医療課題を解決すべく、これからも皆様とともに活動を続けていきます。
■アジア医学生連絡協議会日本支部(AMSA Japan):https://amsajapan.wixsite.com/amsajapan
AMSA (Asian Medical Students' Association; アジア医学生連絡協議会)は、 1980年に発足したアジアの医学生を中心とした学生団体です。 アジアの保健医療の向上を目指し、医療を軸に学生のつながりを作りあげていくことを目標としています。日本支部は国際本部の支部として、アジアの保健医療の向上を目指した提言や、医療者間のネットワーク構築に参加してきたほか、日本独自の主題として、災害医療に関する発信・教育を続けてまいりました。国際会議や留学プログラムなど国外イベントだけでなく、ヒューマンネットワーク作りを目指した国内イベントや医学研究を通して日本人同士の交流も盛んに行っています。■国際医学生連盟 日本(IFMSA-Japan): https://ifmsa.jp/
IFMSA-Japanは、「社会貢献や国際社会とのつながりの下、幅広い視野を持った医療人を育成し、よりよい社会を目指す」ことを理念に活動しています。本プロジェクトを担当したStanding Committee on Public Health / SCOPH 公衆衛生に関する委員会では、「公衆衛生を通して地域社会に貢献し、幅広い視野を持った医療人を目指す」ことを理念として、人々が健康になればより良い世界が実現できるという想いを持ちつつ、啓発活動や健康教育などを通して、さまざまな視点から人々の健康に対しアプローチしています。■日本国際保健医療学会学生部会(jagh-s): https://jaihsstory14.jimdofree.com/
日本国際保健医療学会・学生部会(Japan Association for Global Health - Student Section:通称 jagh-s ジャイフエス)とは、学生を対象に「国際保健に関わる人材育成」に取り組んでいる学生団体です。全国にいる国際保健に関心を持つ様々な分野の学生に対して、地域格差のない情報や機会の提供を行い、世界で活躍できる人材を育成することをもって日本及び国際社会に貢献することを目指しています。 世界の健康格差を是正することを目的とした学問「国際保健」=「グローバルヘルス」を学びたい学生のプラットフォームを構築しています。企業プレスリリース詳細へ
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