「スモールティーチング」で授業が変わる!

東京書籍株式会社は、2026年8月6日に書籍『学習の科学に基づく最新の教え方』(ジェームズ・M・ラング/著 岡崎 善弘/訳)を発売いたしました。
解説
認知心理学や神経科学などの研究に基づいた「学習の科学」。膨大な時間やエネルギーを費やすことなく、小さな変更で授業の質や学習効果を飛躍的に高める授業方法を提案している。これまでの教育改革はゼロからの再構築を求めていることが多いため、多忙を極める教員にとって実践は容易ではなかった。しかし、本書のスモールティーチングによって、教師たちは、授業の一部を変更するだけで学生たちの学習成績にポジティブな影響を与えることができる。このような戦略を著者は「スモールティーチング」と呼んでいる。
スモールティーチングはアメリカのプロ野球で生まれた堅実な戦術「スモールボール」に基づいている(低コストで大きな結果を得る戦略)。これらの方法は準備や採点に時間がかからないため、明日の朝の授業から試すことができる。また、数式を扱う授業、ライティング、対面講義、オンライン授業、ハイブリッド型にいたるまで、授業形態を問わず応用可能な普遍性を備えている。「授業を全面的に作り直す時間はないけれど、学生たちの学習がより深くなるような授業にしたい!」と願うすべての教育関係者に対して、本書は強力な指針を示す。
"小さな変更"と"少ない負担"で
- 授業と学習の質を大きく向上させるティーチングスキル集。
- 野球・ソフトボールから着想を得た、最小限の工夫で学習効果を最大化する「スモールティーチング」を解説。
- 既存のカリキュラムを大きく変えずに「学習の科学」を取り入れる具体的な事例が満載。

Contents もくじ

Chapter 1 予想する

Chapter4 つなげる

Chapter7 所属する
序文―――日本語版刊行にあたって
大学院生の1年目の秋頃、はじめて講義を担当しました。非常勤講師として医療系の専門学校で心理学の講義を担当することになったのです。依頼してくださった先生の期待に応えたかったので必死で準備しました(1週間の約半分を講義準備に割いていました)。しかし、講義準備は難航しました。そして、授業準備から授業方法まで、数えきれないほどの失敗を重ねてきました。1つ目の失敗は「授業の基準」です。誤解を恐れずに言うと、当時は「面白いか、面白くないか」だけが基準でした。「授業で笑った回数が多いほど記憶に残るだろう」と単純に思い続けていたので、バラエティ番組で面白かったトークの構成を文字に起こして眺めてみたり、司会が上手な芸能人の話し方を録画で何回も見直して分析してみたり、あらゆる方法で「面白さ」を追求しようとしていました。改めて思い出してみると、「講義」を作っているのか、「漫談」を作っているのか、迷走していたように思います。
2つ目の失敗は「『なぜ重要なのか』を伝えなかった」ことです。専門用語の解説やユニークな心理学実験の紹介に終始しており、「どのように役に立つのか」「明日から何をすれば良いのか」など、日常と講義内容をつなげて説明していませんでした。日常的な具体例も十分に紹介していなかったので、理解が追いつかなくなってしまったのでしょう。たくさんの学生たちを睡眠学習に導いてしまったこともあります(眠らせたかったわけではないのに!) とても気持ちよさそうに眠っているので、「心理学よりも睡眠学習をマスターさせてしまったのだろうか」と自信を喪失しかけた日もありました。
3つ目の失敗は「過去の経験に頼り過ぎた」ことです。非常勤講師1年目の頃は、「学部生・大学院生のときに受けた講義をベースにして作れば大丈夫だろう」と安易に考えていました。つまり、講義の最初から最後まで文字がぎっしり詰まったスライドを見せて説明していたのです(スライド文字詰め選手権が開催されていたら優勝していたことでしょう)。文字を詰め込んだスライドで難解な専門用語を淡々と解説する講義は学生にとって苦痛であり、「十分な学習効果は見込めない」とわかるまで長い時間がかかりました。
「このままではダメだ」とわかっていても、改善策がわからず、煩悶する日々でした。当時は「講義の作り方」を教わる機会や環境もなかったので、「自力で道を切り拓く」以外の選択肢はありませんでした。しかしながら、現在は「学習の科学(The science of learning)」があります。認知心理学や神経科学の発展により、効率的で効果的な授業方法や学習方法が確立され始めているのです。
私と同じような失敗経験を積む必要はありません。「学習の科学」の知見を参照すれば、私が長い時間をかけて得た知見を効率的に学ぶことができるのです。教育関係者でなくても、誰かに何かを教える立場になる機会があれば、ぜひ活用するべきです。近い将来、「学習の科学」は教育関係者にとって1つの指針になるでしょう。
「講義を全面的に作り直さないといけないのか?」と不安に思う方もいるかもしれません。どうか心配しないでください。本書が主張しているように、すべての授業をゼロから作り直す必要はありません。授業方法や授業形式を少しだけ変更すれば良いのです。本書が提案している「スモールティーチング」の原則を利用して、講義の「最初」や「最後」の数分を改善するところから始めてみましょう。苦行のような日々から得た教訓は、本書にすべて書いてありました。教育関係者であれば誰でも利用できる方法です。
教育関係者のみなさまに本書が届きますように!
授業の準備で困っている先生たちに本書が届きますように!
2026年7月
訳者 岡崎善弘
著者情報
著者ジェームズ・M・ラング(James M. Lang)
アサンプション大学英語学教授、およびダムール教育卓越センター(D’Amour Center for Teaching Excellence)所長。これまでに5冊の著書を出版している。高等教育における教え方と学習方法のスペシャリストとして、講演やワークショップの依頼が絶えない人気講師でもある。
「Chronicle of Higher Education」誌で教育に関する月刊コラムを執筆するほか、高等教育を支援する学習コミュニティOneHEのシニア・アカデミック・コンサルタントを務める。
公式サイト:http://www.jamesmlang.com
訳者
岡崎善弘(おかざき よしひろ)
岡山大学学術研究院教育学域准教授。2012年、広島大学大学院教育学研究科博士課程修了、博士(心理学)。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2022年より現職。教育学部で教育心理学や児童心理学の講義を担当している。令和3年度岡山大学ティーチング・アワード表彰を受賞。訳書に『認知心理学者が教える最適の学習法 ビジュアルガイドブック』2022年、『科学的エビデンスに基づく最適の教え方 実践ガイドブック』2025年(ともに東京書籍)。
コンテンツ
Contents もくじ序文――日本語版刊行にあたって
はじめに――第2版
Introduction スモールティーチング Small Teaching
Part1 知識 Knowledge
Chapter 1 予想する|Predicting
Chapter 2 思い出す|Retrieving
Chapter 3 混ぜ合わせる|Interleaving
Part2 理解 Understanding
Chapter4 つなげる|Connecting
Chapter5 練習する|Practicing
Chapter6 説明する|Explaining
Part3 インスピレーション Inspiration
Chapter7 所属する|Belonging
Chapter8 モチベーションを引き出す|Motivating
Chapter9 学習する|Learning
総括 ここから始まる実践
参考文献
索引
謝辞
訳者あとがき
著者紹介
著者略歴
訳者略歴 校閲協力者
<概要>
『学習の科学に基づく最新の教え方』
「スモールティーチング」で授業が変わる!
■ジェームズ・M・ラング/著 岡崎 善弘/訳
■定価3,960円(本体3,600円+税10%)
■A5・312頁
https://www.tokyo-shoseki.co.jp/product/books/81897/
東京書籍株式会社
東京書籍は1909(明治42)年創業。「教育と文化を通じて人づくり」を企業理念とし、新しい時代に挑戦する個性的、創造的な人材の育成を目指しています。小・中・高等学校の教科書発行部数が最多の教科書業界最大手の出版社です。近年、デジタル教科書など教育用デジタルコンテンツの開発・販売にも注力しています。その他、教育総合ポータルサイト運営、学力・体力テストなどの各種評価事業、一般書籍の発行など教育と文化に係る幅広い事業活動を行っています。
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