9月21日(月)は世界アルツハイマーデー(日本では「認知症の日」)!


撮影/村田克己

9月16日の新刊発売日に記者会見を実施!
認知症の母、ダウン症の姉、酔っぱらいの父との同居をつづる連載「ポンコツ一家」。これまでに『ポンコツ一家』『ポンコツ一家2年目』と書籍になっているシリーズの最新作にして最終章『ポンコツ一家 最後の2年』が発売となった。発売日の9月16日、17日はAmazonの「闘病記」「介護」「高齢化社会」などのカテゴリーで1位となっている。9月16日には秋原原の書泉ブックタワーでサイン会&トークイベントが開催。イベント前に行われた記者会見をリポートする。
いつもの「挨拶」からスタート
にしおかすみこさんの会見はいつもの「挨拶」から始まった。
「あ~! にしおかあ~すみこだよっ
一発屋と文豪の二足の草鞋を履きたいと思ってるのは、どこのどいつだ~い?
あたしだよっ」



登場したときの「あ~っ」撮影/村田克己

「どこのどいつだ~い」 撮影/村田克己

ここで思わず拍手が起きた。

「まず『ポンコツ一家』をご存じない方もいらっしゃると思うので、説明させてください。私は2020年のコロナ禍に実家に戻りました。母が認知症で、姉がダウン症で、父が酔っぱらいで、私が一発屋という家族構成で、ジタバタ暮らすさまを書いたものなんです。最初は連載でスタートして、それをまとめたのが、『ポンコツ一家』、2冊目が『ポンコツ一家2年目』、そして今回の3冊目『ポンコツ一家 最後の2年』となります。本日はどうぞよろしくお願い致します!」

この段階で、すでに集まったメディアの表情が和らいでいる。一発屋のネタというのは「誰もが知っているもの」だということを改めて感じさせられる。強い。
さらに撮影タイムでもその強さを感じさせられた。笑顔の記念撮影のあと、にしおかさんが「『あ~』はいらないですか? いつでもやりますよ」と言うと、「じゃあぜひお願いします!」「こちらも!」と手が上がったのだ。


希望者すべてのメディアに「目線あり」の「あ~っ!」撮影/村田克己

音のないカメラ撮影なのに「あ~っ」「あ~っ」「あ~っ」と叫び続けること10回以上。「のどは大丈夫ですか?」と言われるくらい毎回全力の「あ~っ」を見せた。イベントを知らない人からしたら、この雄たけびは一体なんだろうと思ったことだろう。

そして囲み取材が始まった。

――自身三作目となる『ポンコツ一家 最後の2年』が発売されました、率直な感想を教えてください。
「すごく嬉しいです。2年前に2冊目を出した瞬間から、何の確約もないのに3冊目を出したいと豪語していたので夢が叶いました。もちろん一言一句書いているのは私ですが、書籍って本当に多くの方の力が合ってできるので、改めて感謝、感謝です」

――2作目からは少し間が空いて、本書刊行となりました。新刊を待っている声もあったとのことですが、発売が決まったとき周りからの反響などはありましたか?
「周りは『待ってました』とか『おめでとう』とか言ってくださいますけど、そりゃあ私に直接言う方はなかなか面と向かって悪口は言わないじゃないですか。だからちょっと今、いい気になって天狗になっている最中です。あとは、全国の書店員さんがコメントを送ってくださいました。こちらは『3冊目も大爆笑です』とか『感動しました』とか、実際に介護を担ってらっしゃる方が『私のバイブルです』と書いてくださったり。母のキャラクターが大好きとか、母をしのぶお声もいただきました。それもとっても嬉しくて、いろんな方に愛されてしのんでいただいて良かったねと、母に報告したいです」

――帯には「最終章」と書かれています。それも含めて本の内容を教えてください。
「去年の11月に母が亡くなりまして、84歳で老衰だったんですね。その亡くなった時のことと、母も一緒に4人で暮らした最後の2年間をつづっています。書いているときはまさか亡くなると思っていなかったので、そのエネルギッシュな感じとか、母と共に戦う臨場感や迫力ある綴りかたはこの3冊目が最後です。だから最終章になるかなと思っています。それと、書籍の終わりに番外編を1本書き下ろしてます。月に1回の連載では書くか書かないかを迷ったものなんです。このエピソードだけを読んだら誤解を招く可能性があるので、そのときは出すのをやめました。で、今回の書籍だと、うちの家族のことを知ってくださった上で番外編に辿り着くので、大丈夫かなという判断です」


――番外編はちょっと衝撃が走る内容でした。
「『ポンコツ一家』を好きで読んでくださっている方々は、父がずっと酔っぱらっているので、この人なんなんだろうと思ってるかなと。番外編ではだいぶ父が登場しますので、そのあたりも読みごたえがあるかなと思います。“らしさ”が全開です(笑)」


――お母さまが亡くなられて、ご自身に変化はありましたか?
「変化はありました。もともと連載も書籍も“きれいごとじゃない”ということと絶対に“盛らない”ということは気を付けているんです。特に私が盛ることによって、家族がこんなことを言うのか、やるのかと思われるもの嫌だし、認知症の方や障害のある方々がこういう言動をするんだと勘違いされることも嫌なので。家族が喋ったこと、会話は携帯のメモアプリに入れてあって、それを見ながら書くんですね。
連載って1年前のことを書くんですよ。例えば1年前のメモを見て『腹が立った』と書いてあったら、1年後の私も腹が立つんですよ。でも母が亡くなってからは、『すごく腹が立った』と書いてあっても、現在の私は腹が立たないんですよ。亡くなって1年経っていないんですが、懐かしかったり、さみしかったり。けっこうしんどいこともあったはずなのですが、勝手なもので、なんでもいいから生きていてほしかったなと思います。
連載は今も続いていますが、こちらは、母が亡くなったと知って書いているので、綴り方が書籍とは違いますねえ」

――家族の在り方に変化はありましたか。
「はい。母が亡くなって、葬式を終えて早々に私と姉は実家を出ました。現在は私が一人暮らしで、姉は施設にいます。その距離は近いので、しょっちゅう行き来をしてやり取りしています。母との時間が空いたので、姉と動物園や水族館に遊びに行ったり、美味しいものを食べに行ったりもしています。そういうことができるのも福祉の方々のおかげです。私と姉は福祉の方々に全面的にお世話になりながら、毎日マイペースに元気に暮らしています。
実家には父が一人で暮らしています。元サラリーマンなので少なくない年金があります。
姉の施設代や生活費諸々、生涯は私がみますので、父はやっていけるだろうという私の選択です」


――本書をお読みになる方の中には介護に携わる方や、これから携わっていく方もいるかと思います。時には疲れてしまうことやイライラしてしまうこともあるかと思いますが、にしおかさんはそうした時、どうしていますか?
「母と5年半暮らしたんですが、なるべくこまめに息抜きするようにはしていました。疲れてすごく病んでしまうと、なかなか元に戻ってくるのが難しいかなと思うので。
どういう息抜きかというと、たまにですが高いランチを意味もなく都内に出て食べるとか。お刺身が好きなので、高くても3500円までに決めて食べます。そうしたからって、全てが解決するわけではないし、すごくスッキリはしないですよ。でもちょっとした気分転換にはなります。大事なことだと思います。あとは時間がなくても、無理にでも自分の時間を作って、ちょっとウォーキングします。汗をかいたら、なんか単純にスッキリするじゃないですか。
あとは趣味でベジタブルカービングをやっていまして、ご存じですか? 野菜やフルーツをナイフでカットしたり彫ったりするんですけど。大根の花とか。中国料理でにんじんの龍とかありますよね。ああいうのを黙々と作っている時間が無になれていいんですよね。できたものは作品として写真を撮ります。それだけのインスタもあるんですよ。それがものすごく人気がなくて(笑)。最後は全て崩して食べます。この趣味で野菜をたくさん食べるようになって、肌荒れが少なくなりました。やっぱり内側からのケアも大事だなあって思います」

にしおかさんが作ったベジタブルカービング 写真提供/にしおかすみこ

――1冊目では、壊れていた洗濯機を購入されていました。シリーズ2冊で77000部を超え、3冊目を入れると累計10万部が目前ですが、達成されたら買いたいものなどはありますか?
「あの、お金、お金って感じがして。あくまで一番はたくさんの方に笑っていただきたいということが目的ですよ。でもやっぱり印税はありがたいです。確かに、大切な生活費です。
3冊目の印税をどう使うかですよね……私、五十肩なんですけど、けっこうひどいんですよ。で、3冊目を書くときにパソコンに向かって、ずっと作業してたら、体が固まってガチガチになるじゃないですか。肩も、その周辺も、老いもどえらいことになったんです。なので、ちょっとでも体にいいバカ高い枕とか、バカ高いパジャマとか寝具類を買ってみたいです。
あとは高級旅館で源泉かけ流しで肩を癒したい。これは姉と行きたいですね。ちょっとでも肩をなんとかして、次の執筆につなげていきたいです。やる気満々です(笑)」


――9月21日が世界アルツハイマーデー「認知症の日」ですね。
「からめるものはすべてからめたいです」


――これからの仕事の目標やプライベートでやりたいことはありますか。
「2冊目を出したときも言ったんですけど、映画化したいです。2冊目のときに監督さんを三谷幸喜さんか宮藤官九郎さんでお願いしたいと言いまして、実はですね、そこからオファーが全く来ないんですよ。なので、引き続きお待ちしています。それと今回はせっかく3冊目の最終章になりますので、3部作にしたいです。シーズン1を三谷幸喜さん、シーズン2をクドカンさんで、シーズン3を是枝監督にお願いしたいなと思っております」



撮影/村田克己

――現在介護されている方へのメッセージをお願いします。
「私は常に自分ファーストを心掛けています。自分が一番元気でないと大切な人を幸せにできないと思っています。それと、私は雑なのでそうでもないんですが、優しい方や誠実な方ほど、家族を背負ってしまったり、我慢をいっぱい抱え込んでしまうと思うんです。それをちょっとずつでいいので、勇気を出して、手放すことも大切だと思います。例えば私が外で笑ったり楽しい時間を過ごすことは、家族を見捨てることではないんですよ。でも日々の生活に流されて、それすらわからなくなっちゃったりするんですよ。なので、そうなる前にちょっとでも息抜きをして、自分の元気を一番に、その上で大切な人にそのときできることをしてあげればいいのかなと思います」


――シリーズを通して一貫して伝えたいことはなんですか。
「シリーズを通してオール愚痴なんですよ。とにかく爆笑していただきたい。悩んでいる方や疲れている方の箸休めになればいいなと思います。
3冊出たからといって1冊目から読まなければいけないわけではないですし、どこから読んでいただいても、どのエピソードからでも大丈夫です」


――ということは4冊目も?
「わー。それあと100回くらい、いろんなところで言ってください。私には何の権限もないので。そうなるといいなと思っています」


――いま3人の監督の名前が出ましたが、ほかの方から映像化のお話が来たら断るんですか。
「ええ!?それはもうパニックです。……もしポンコツ一家争奪戦になったら。……じゃんけんでお願いしたいと思います」


――表紙を見ると女王様の恰好ですが、今日の服装のポイントは?
「ポイント……できるだけみなさまの前で感じ悪くないように…みなさんが一発屋の女王様の恰好を望まれるなら、ボンデージでもいいんですが。……そうですね。今回は清楚な感じにしてみました」


――一発屋と文豪と言っていましたが、比率はどれくらいですか?
「芸人と文化人の比重100%100%なのですが、芸人として需要がないので。気持ちは100%100%です。需要があればいつでも。あ、いや、でもネタが枯渇しているのでオファーがきましたら、そこから作るということになります」


――映画化するとしたら、にしおかさんの役を誰に演じてもらいたいでしょう?
「私の役ですか。私、吉瀬美智子さんに髪型を寄せてるんです。千葉在住なんですが『千葉の吉瀬美智子』っていつも勝手に言ってるんです。浸透してないんですが。なので自分で決めていいとなれば吉瀬さんで」

――吉瀬さんが冒頭SMやってくれたら話題になりそうですね。演技指導はどうしますか。
「めちゃくちゃありがたいですね。アドバイスなんてめっそうもないです。今、お名前を出させていただくだけでもおこがましいのに……。あ、でも『あー!』と最初に叫ぶとこと、『にしおか~すみこだよっ』と『この豚野郎』だけはこだわりがあるので、マンツーマンで伝授したいです」


――この年齢になると介護に悩む人も多くいますが、実家じまいの片付けで悩む人もいます。お母さまが亡くなられて実家の片付けはどうされていますか。
「母と過ごした期間が5年半あったので、その中で母が必要なもの、古くてボロボロでも、あると安心かなと思うものは残しつつ、絶対にゴミだなというのは少しずつ処分していました。ただ、今は父が実家にいますし、父が暮らしやすいように、まだまだそのまま残しています」


――最後にメディアの方にメッセージをお願いします。
「誰も取材に来てくださらなかったらどうしようって思っていたので本当にありがとうございます。みなさんのお顔は覚えたので、ぜひ4冊目のときも来てください」

@講談社

【書誌情報】

タイトル:『ポンコツ一家 最後の2年』
仕様:四六判256P
発売日:9月16日発売
版元:講談社
ISBN:978-4065446799
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これまでの2冊も合わせて10万部目前!

にしおかすみこ『ポンコツ一家』(講談社)

にしおかすみこ『ポンコツ一家 2年目』(講談社)

にしおかすみこ『ポンコツ一家 最後の2年』(講談社)

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