小瀧望【ヘアメーク:佐々木麻里子/スタイリスト:村田友哉(SMB International)】 (C)エンタメOVO
小瀧望が主演する舞台「ロックンロール」が、11月6日から上演される。本作は、世界的な劇作家トム・ストッパードが祖国チェコスロバキアを舞台に、20年以上にわたる歴史のうねりを描きながら、自由の尊さをうたう物語。愛するロックンロールと母親を守るためソ連軍の侵攻に揺れる祖国への帰国を決意するケンブリッジ大学の留学生ヤンと、ヤンの大学教授であるマックスの対照的な信念を持つ二人を中心に、激動の時代を生きる姿を描く。演出は、小川絵梨子が務める。小瀧に本作への思いや役作りで訪れたプラハの思い出、自分らしさについてなどを聞いた。
-出演が決まったときの気持ちを教えてください。
小川さんともう一度、ご一緒できるということで、ぜひと思いました。そのときは、概要しか聞いていなかったので、まさかこんなにも難しい作品とは思わず、後になって知ったのですが(笑)。
-小川さんの作品は、2021年の「検察側の証人」が初めてでしたが、小川さんの演出の魅力はどんなところにあると感じていますか。
僕はあまり多く舞台をやれるわけではないので、1本1本を大事に「ぜひ、お願いします」とお答えするようにしてきましたが、そうした中で、小川さんとの出会いは、僕の人生において大きな転機になったと思います。小川さんの演出や引き出し方は、自分に合っていたのだと思います。ただ、前回ご一緒したことで、自分の稽古動画を見るようになり、動画を見ることで分かることがあるのだと気付くようになりましたし、自分はまだまだ足りていないものがあると改めて感じました。小川さんは、そうした自分を諦めずに引っ張り続けてくれて、その懐の深さにも魅力を感じました。すごくはっきりした性格の方なので、そういうところも僕は好きです。
-台本を読んだ最初の印象は?
「なんじゃこりゃ」となりました(笑)。どういうことなんだろうという場面も多くて。もちろん、劇場で見れば、演出や装置、照明などで分かりやすく表現されるのだと思いますが、細かいところを見落とすと、急に違う場面になっていることもあるんです。そもそも、ぶつ切りの印象のある台本なので、場面が変わったら子どもが生まれていたり、いつの間にかフィアンセがいたり、言葉で説明がないことも多くて、「ちょっと待ってくれ」という展開もあります(笑)。最後も、あっという間に状況が変わっていくので、説明が欲しいところもありましたが、でもそれがこの作品の魅力の一つでもあるんだと思います。そうした時間の隙間をこちらで埋めていき、板に立っている俳優の芝居によって、「こういうことがあったのかな」と思ってもらえばいいのかなと。個性的な作品だとは思いますが、このチームで作っていけることにワクワクしますし、また一つステップアップできる作品が目の前にあるなと感じます。大変だとは思いますが、逃げずに、必要な情報を落とし込んで、チャレンジして、小川さんの要求に応えていきたいです。
-小瀧さんが演じるヤンという役柄に対して、魅力に感じたところや表現したいと考えているところは?
素朴でまっすぐなところは自分と重なるところがあるのかなと思います。ただ、僕だったら、この時代に「ロックが好きで、ロックこそ自分の生きがいだ」と言えただろうかと考えました。それくらい、当時の時代背景や文化は、今とは違うということを理解して演じないと、この戯曲の意味がない気がします。なので、時代背景や情勢、主義の違いがあって、対立する二つのものがあるという単純な構造ではなく、さらにその中にもいろいろな派閥があるということなど、細かいディテールも届けないと面白い作品にならないと思うので、丁寧に作っていかないといけないなと思っています。それは、すごく大変なことだと思うので、ワクワクと同時に、本当にできるのかなという思いもあって。人としてのエネルギーが必要な作品だと思いますが、小川さんの演出を受けて、集中して挑みたいと思います。
-前回ご出演された「うま‐馬に乗ってこの世の外へ‐」とも通じるエネルギーを持った主人公なのではないかという印象がありましたが、アプローチは全く違うものになりそうですね。
(「うま‐馬に乗ってこの世の外へ‐」で演じた)太郎はどちらかというと人を巻き込んでいく人物ですが、今回のヤンは巻き込まれるタイプなのかなと思います。秘密警察や政治などいろいろな時代背景がある中で、ヤンはただロックが好きで、ロックを聞き続けたいという思いからの選択だった。そうした巻き込まれた側なのかなと思っています。それは二人の違うところですね。もちろん、演じる上では、同じようにエネルギーは必要です。(大鶴)佐助くんとは「うま」でも一緒だったので、稽古中にいろいろな話をしたんですよ。佐助くんは、その時点で、すでに「ロックンロール」の台本も読んでいて、「のんちゃんはずっと話しているよ。僕はのんちゃんとしか話していない」と言っていたので、それは大変そうだなと思いました。でも、ヤンの22年間を演じることで、それぞれの役との関係性も変わってきたり、それぞれの交流の仕方も少し変わったりするのかなと思うので、それも楽しみです。普段聞き慣れない言葉が雨のように降ってくるので、それを一つひとつ、僕たちは理解しないといけない。お客さまがそれを全て理解する必要はないと思いますが、僕たちは、時代背景やそこで生きた人たちが何を考え、なぜそうしたのかということをきちんと理解して作っていかないといけないと思います。
-そうした難しい役どころゆえ、共感はなかなか難しいのでは?
それはあまり心配していないです。先日、トム・ストッパードの「ハード・プロブレム」という作品を観劇したんですよ。その作品も、日本人とは違う感情の変化が描かれた作品でした。楽しく会話をしていたと思ったら、急に嫌みなことを言って、感情の波がすごく激しいんです。そうした流れも、文字で見ていると難しく感じますが、役者の声を通して聞くと、バカバカしく思えたり、シニカルだったり、より立体的に立ち上がってくるので、今回もきっと皆さんの声で立ち上がってくることで、変わると思います。
-本作の舞台となるプラハにも実際に足を運ばれたそうですね。
視察という名の旅行でしたが(笑)。本当は、今回は行くつもりなかったんですよ。でも、「うま」の稽古中に、佐助くんが「ちょっと分からないから、行ってくる」と言っていたので、「佐助くんが行くなら僕も行かないと」と思って。歴史的な建造物や劇場を見たり、プラハ城や大聖堂に行ったりと、観光してきました。プラハ城は、高台にあるので、そこからプラハの街並みが見下ろせるんですよ。すごく美しかったです。すごくいい思い出になりましたし、街並みを見られて良かったなと思います。楽しかったです。
-ところで、小瀧さんは、7月に30歳を迎えられましたが、心境の変化はありましたか。
「男は30から」とよく言いますが、これ以上ない30代にしたいと思っています。30歳を迎えるタイミングで、こうしたチャレンジングな舞台に出演させていただけることは、とても幸せです。しかも、大好きな小川さんの演出で大好きな役者さんもたくさん出ていて、僕史上最難関の作品です。せりふを覚えることも、言葉の意味や比喩を考えて、調べて、覚えていくのも大変だと思いますが、自分は何事も理解してからでないと気が済まない性格なので、この膨大な情報量とせりふ量を処理しながら、頑張りたいと思います。
-ヤンにとってのロックンロールは、自分らしさや自由、生き方につながっているように感じましたが、小瀧さんにとって「これがあるから自分らしい」というものはありますか。
表現、パフォーマンスは僕の根底にあり続けるものだと思います。そして、そうした表現で、ファンの方に喜んでいただくということはこれまでも、これからも変えるつもりはありません。映像も好きですし、映像にしかない良さもあると思いますが、今回の舞台のように生で見ていただくというのも好きなんです。劇場に足を運んで、役者たちが役を生きる姿を見るというのは、風情があると思いますし、舞台やミュージカルでしか感じられない良さがあると思います。表現の場はいろいろとありますが、いずれにしろ、表現者、アーティストであることが自分らしいと思うものです。
-表現をしていない自分はこれまで考えたことがなかった?
デビューしてからは、迷うことはなく。これからもファンの皆さまの声に応え続けたいという思いです。
-公演を楽しみにされているファンの方にメッセージをお願いします。
今回、東京建物 ぴあ シアターという劇場に初めて立ちます。初めての場所に立てるということもすごくうれしいです。敬愛する小川絵梨子さんの作品で、ファンとして憧れていた役者さんとも再共演できます。少し難しい戯曲かもしれませんが、この人たちの生き様や信念、理想、主義がどう交差して、導かれていくのかを目撃していただければと思います。もしかしたら、ある程度、時代背景や当時の流行の音楽、当時の人物などに触れておくと、よりこの「ロックンロール」の世界観を体感できるのではないかと思いますが、あまり難しく考えすぎず、楽しんでいただけたらと。ぜひ、僕たちの芝居とともに、当時のロックミュージックも楽しんでいただけたらうれしいです。
(取材・文・写真:嶋田真己)
「ロックンロール」は、11月6日(金)~8日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月13日(金)~12月6日(日)に都内・東京建物 ぴあ シアターで上演。
公式サイト https://rocknroll-stage.com







