(左から)川口春奈、高杉真宙【ヘアメーク:高村三花子/スタイリスト:緒方なぎさ】 (C)エンタメOVO

 大腸がんによって24歳で他界した遠藤和(のどか)さんが亡くなる10日前までつづり続けた手記を映画化した『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』が、10月2日から全国公開される。本作で、主人公の和と夫の将一を演じた、川口春奈と高杉真宙に話を聞いた。


-最初に脚本を読んだ印象から伺います。


川口 お二人のことは以前から知っていましたが、原作と脚本はお話をいただいてから、読ませていただきました。和さんが、若くしてさまざまなことを経験されて、それでも強い覚悟を持って進んでこられたのが、とてもリアルに伝わってきました。それと同時に、日記には将一さんとのかわいらしいやり取りや、ご家族の愛があふれる温かいお話もしっかりとつづられていて、和さんを支えたご家族の熱量や愛も含めて、こんなすてきな家族の形もあるのだと、感じることができました。


高杉 この原作を残すことを選択したお二人の覚悟に対して、本当にすごいことだなという気持ちと、尊敬の念が湧きました。これは、残された皆さんに対する、和さんからのメッセージだと思いましたし、それが、これを残すことを選択したお二人の気持ちなんだろうなと思いながら、読ませていただきました。格好をつけていないというか、自分が今思っている気持ちの全てをつづった日記だと思いました。書いているうちに、気持ちが揺れることはたくさんあったと思いますが、それでも書き続けたのは、全て家族やお子さんのためだったと思います。本当に愛が詰まった、和さんの言葉の数々だと思いながら読ませていただきました。


-演じたキャラクターについて、どう捉えましたか。


川口 すごく明るくて、天真らんまんで、かわいくて、等身大で、親しみやすい女の子。三姉妹の長女ということもあり、責任感があって面倒見もいいのかなと感じました。家族の中でも、頼りになるような存在だったのかなと思います。


高杉 原作を読んだり、映像を見た時も、将一さんのおちゃめさが際立っていて、そこに彼のキャラクター性があると思いました。でも、和さんのことを考え続けて、真摯(しんし)に向き合っていく真面目な姿は、彼女のためだけではなくて、自分のためでもあったと思いますが、そういう彼の真っすぐさにも心を動かされました。


-実際に演じてみて感じたことや、役作りの上で気を付けたことはありましたか。


川口 和さんのチャーミングな女の子の顔、家族の中にいるときの一面、家族には見せない将一さんといる時の様子、ママになり、将一さんとぶつかる描写など、2時間の映像の中で、彼女のさまざまな人間性や覚悟をどう映し出せるのかと考えた時に、体も変わっていくけれど、それに伴って彼女自身の葛藤や気持ちも少しずつ変化していく。その過程が、見てくださる方にも伝わればいいなと思っていました。ただ、それは自分1人でできることではなくて、一緒にお芝居をしてくださるキャストの皆さんがいて、スタッフの皆さんがいてくださったからこそできることだったので、皆さんと一緒に作り上げた、作ってもらったという感覚があります。


高杉 いろいろなことを考えながら現場に向かいましたが、今川口さんがおっしゃったように、結局多くのことは周りの方が作ってくださいました。一番気を付けたことは、頑固にならないことでした。今回の現場では、「自分はこうだと思う」とか「こうでなければいけない」みたいな気持ちを伝えていくというよりは、全てが周りの方たちとのやり取りによって変わっていったので。そういう気持ちの流れに身を任せてやるべき作品だというのは撮影の初日から感じていましたし、それは(山戸結希)監督からも感じました。自分が持っていけるものは持っていったけど、ほとんどのことは身を任せてやらせていただけたのかなと思います。それはすごく幸せなことでした。

-実在の人物を演じる難しさは感じましたか。


川口 彼女が残した日記や言葉、映像も少なからずありましたが、自分なりの解釈はせず、監督を信じて飛び込んでみるという感じでした。本当に一つずつ模索しながら作っていったという感覚でした。


高杉 こういう役を演じるのは、あまりない機会だと思いながらやらせていただきましたが、実在している方を演じることと、完全なフィクションの人物を演じることの差はあまり感じませんでした。でも、不思議な感じはしました。現場に、「将一さんからの差し入れです」と書かれたものがあったのですが、僕が差し入れたものだと勘違いをされて、お礼を言われたこともありました。


-初共演での夫婦役でしたが、お互いの印象はいかがでしたか。


川口 役柄的にも支えてもらう役でしたし、個人的にも、大変な撮影の中でいつもそばにいてくださったのは、精神的にもすごく助けられた部分が大きかったです。将一さんの誠実さや優しさ、包容力とリンクする部分も多くて、和さんには将一さんでなければ駄目だったんだなと感じましたし、最初の出会いから、チャーミングな一面、男らしい一面と、本当に将一さんご本人とリンクするような感じがしたので、すごく助けられたと思います。


高杉 今回初めてお会いして、川口さんの人柄に魅了されましたし、多くのことに対して、すごいと思う瞬間がたくさんありました。川口さんが心身ともに一番大変な役柄なので、僕もスタッフ、キャストの皆さん全員が、フォローできることはしようと思っていましたが、川口さんが現場のことを一番考えていて、逆に僕らが支えられたというか、フォローする間もなく川口さん自身が多くのことに気付いてフォローしている印象でした。何より監督との話し合いの中で、監督に負けないくらいの気持ちでぶつかり合っている姿を見て、作品に対する思いの強さが伝わってきました。それで僕自身ももっと作品に対して何かできないかと思わされ、引っ張っていただいたと思います。また違う作品でもご一緒したいと思いましたし、こんなすてきな役者さんはいないと改めて思いました。


-完成作を見た感想と、これから映画を見る観客や読者の方に向けて一言ずつお願いします。


川口 最初に作品を見させていただいた時から、どこか客観的に見られない部分がありました。自分自身では、「これで良かったんだ」と簡単に答えを出せるものでもないと思っています。だからこそ、この映画を見てくださった方が、それぞれに何かを感じ、受け取ってくださることが一つのゴールなのかなと思います。この映画が、1人でも多くの方に届いて、和さんや和さんのご家族の存在を知っていただけたらうれしいです。そして、見終わった後に前向きな気持ちになっていただいて、明日から、改めて自分自身や家族、周りの人たちを大事にしようと思うきっかけになったら、何よりうれしく思います。


高杉 撮っていたものからは想像もつかないぐらいの映像になっていました。これは、本当に和さんの日記の映画化なんだということを強く感じました。多くの方に、日常生活や、何げない一言やあいさつの素晴らしさを感じていただける作品になったと思います。将一さんが、おっしゃっていたんですけど、和さんがいたことを皆さんが知ることによって、それがめぐりめぐって、お二人のご家族やお子さんのところに、和さんがそばにいる感覚が戻ってくるのかなと思います。僕も、愛が回ってくるという気持ちになっているので、多くの方にもそれを感じていただけたらと思います。


(取材・文・写真/田中雄二)