ドラマにはタイプというものがあって、評判が良い作品が複数あっても、視聴者があまりかぶっていない場合がある。今期で言えば『ラッキーセブン』と『最後から二番目の恋』などがそうかもしれない。好き嫌いと言い換えてもいいが、どちらかに興味があれば、もう一方はそうでもない、という人はけっこう多いんじゃないだろうか。まあ、ドラマ好きは何でも見るんだけど。
『最後から二番目の恋』は、6話まで終わって視聴率が11.4~12.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。平均視聴率順位としては『ストロベリーナイト』『ラッキーセブン』『ハングリー!』『理想の息子』についで5番目の人気だが、『最後から二番目の恋』の視聴率は極端に上がることもなければ、一気に下がることもない。大人の固定ファンがしっかり付いている感じだ。
ということで、今回は毎週『ラッキーセブン』を楽しみに見ている若い人に向けて、大人たちが楽しんでいる『最後から二番目の恋』(長いので、以下『最恋』)がどんなドラマなのか、ちょっとレポートしてみよう。
まず、今期の見どころ情報でもお伝えしたように、このドラマは前フリとして『まだ恋は始まらない』(以下、『まだ恋』)という作品がある。1995年10~12月期の月9で、『最恋』と同じ、岡田惠和脚本、小泉今日子・中井貴一の主演のドラマだった。残念ながらビデオ化もDVD化もされていないが、常盤貴子、竹野内豊、坂井真紀、草なぎ剛なども共演する印象深い作品だった。
最も印象的だったのは、その構成。『まだ恋』の主人公は、もともと江戸時代に身分違いの恋をして、生まれ変わったら一緒になろうと心中をした2人だった。その2人が現代で出会うまでの話だったので(もちろん昔の記憶はない)、小泉今日子と中井貴一は主演にもかかわらず、終盤までほとんど絡むことはなかった。
中井貴一が演じていた幸一郎は、ずっと真面目に働いてきたのに、突然、妻から「面白くない人だから」と離婚を言い渡された男で、一人娘の父親。小泉今日子が演じていた茜は、同じ会社の後輩で年下の永井(竹野内豊)からプロポーズされ、結婚の準備を進めているOL。そんな2人が、運命に導かれるように少しずつ近づき、最後に出会って、これからやっと本当の恋が始まる、という物語だった。
じゃあ、今期の『最恋』はどんな話なのかーー。『まだ恋』の続編というわけではないし、時空を超えたファンタジーでもない。とりあえず見ていない人のために、ここまでの流れを簡単に説明しておこう。
中井貴一が演じる長倉和平は、鎌倉市役所の観光推進課に勤務する4人兄弟の長男。妻とは死別し、一人娘がいる。正しいことしか言わないのでつまらない人間だが、両親を早くに亡くし、兄弟の親代わりをしてきたので、それも仕方ないといった状況。そろそろ体力の衰えも感じて、また誰かと恋をするなんて面倒くさいと思っている。
小泉今日子が演じる千明は、テレビ局に務めるドラマのプロデューサーで、45歳独身。ひとりきりの老後という未来も見え隠れしてきて、鎌倉の古民家に引っ越してきた(長倉家の隣)。そこで出会ったのが、和平の弟・真平(坂口憲二)だ。真平は特定の女性と付き合うことなく、すべての女性を幸せにしたいと考えているが、それは長くは生きられない(と思われる)病気を抱えているからだった。病気のことは知らず、しかし、他にも女性がいることを承知の上で、千明と真平は深い仲になる。
一方、和平は知り合いの住民からお見合いの話を持ち込まれるが、途中からその見合い相手・秀子(美保純)の娘まで立候補してくるという事態におちいる。その娘というのは、なんと同じ観光推進課に務める部下・知美(佐津川愛美)。和平は当然、お見合い自体を断るが、秀子とは成り行きで食事に行くようになり、知美からはデートに誘われと、いいんだか悪いんだか分からない状況になってしまう。
そんな和平と千明は、事あるごとに衝突して、言いたいことを言い合ってきた。しかし、そんな2人を見て、真平は生まれて初めて嫉妬をする。そして、自分の本当の気持ちに気づき、千明に他の女性とは別れてくるから真剣に付き合って欲しいと告げる。思いも寄らない展開に千明は驚くが、若い年下の男からの告白が嬉しくないわけもなく、OKをする。ただ、目の前で他の女性の話をされても、千明には嫉妬心が湧いて来ないのだった--。
とまあ、そんなような流れで、次回は真平の病気のことがくわしく明かされるだろうという状況になっている。
『まだ恋』との共通点は、中井貴一が演じる役に一人娘がいること、小泉今日子が演じる役に年下の恋人がいることなどがある。ただ、それよりも共通しているのは、やっぱりまだ恋は始まっていないということだ。『最恋』は初回から中井貴一と小泉今日子ががっつり絡んでいるが、現時点で2人が恋愛関係になっているわけではない。それがどういう形で恋になるのか。さらに、真平にとっては千明との恋が最後の恋になるかもしれないが、じゃあ最後から二番目の恋とはどういうことなのか。そのあたりの落としどころも気になるところだ。
『最恋』は、基本的に大人の恋愛を描いているが、登場人物が大人だらけというわけでもない。真平は30代で、双子の姉・万理子(内田有紀)という登場人物もいる。万理子は心が不安定なフリーターで、抱えきれない問題が起きるとパニックになって部屋に閉じこもってしまうキャラクター。ただそれは、双子である真平がいつかいなくなると感じてのものなんだけど……。とにかく、このドラマにおいての30代は、恋愛したくてもできない世代として出てくる。
和平のお見合いに立候補した知美は20代。もうひとり、千明が一緒に仕事をする若手美人脚本家・栗山ハルカ(益若つばさ)というのもいて、この20代は恋愛にも積極的で行動力がある世代として描かれている。大人から見ればちょっと軽くも見えるが、もちろん何も考えていないわけではない。