柚香光【ヘアメーク:SAKURA/スタイリング:大園蓮珠】 (C)エンタメOVO
作・中島かずき、演出・いのうえひでのりによって生み出された劇団☆新感線を代表する演目である「髑髏城の七人」。7年ごとに繰り返し上演され、そのたびにさまざまな工夫を凝らし進化をし続け、これまで11バージョンが上演されてきた。そして、今回「髑髏城の七人 LAST STAND」と題し、劇団☆新感線としては最後の上演として11月14日に開幕する。極楽太夫を演じるのは、宝塚歌劇団退団後、最初の演劇作品として新感線初参加で主演を務めた「紅鬼物語」や、ミュージカル「十二国記 -月の影 影の海-」など、従来のイメージにとらわれない役に挑み続ける柚香光。柚香に出演への思いや作品について、宝塚歌劇団退団後の心境などを聞いた。
-新感線作品への出演は「紅鬼物語」以来となりますが、今作の出演が決まったときの率直な気持ちは?
初めてお話をいただいたのは「紅鬼物語」から1年後のことで、再びご縁があればと思っていたこともあり、すごくうれしかったです。それに、出演する作品が「髑髏城の七人」という、自分が初めて新感線さんを見たときの作品で、しかも「髑髏城の七人」の最後の上演とお聞きして、当時の自分を思い出し、その年月がたったことも思いながら、不思議なご縁も感じましたし、ありがたいことだと身の引き締まる思いでした。
-初めて「髑髏城の七人」を見たときの思い出は?
まず、ロビーに流れている音楽です。宝塚歌劇では、開演前のロビーの音楽は「すみれの花咲く頃」という、優雅な音楽ですが、「髑髏城の七人」ではロビーに入った瞬間、ヘビメタが流れていて、このような世界があるのかと驚きました。そして、開演すると、コンサートが始まるのかと思うぐらい照明が客席まで縦横無尽に動いて、その瞬間に、魅了されたのを覚えています。その中で、個性的な登場人物たちばかり集まっているのがすごく楽しくて、人物としても情報量が多く、衣装も色彩豊かで、せりふのテンポと応酬から、真面目と笑いの緩急によって夢中になり、心地よく振り回される感じもありました。そして、そこまで描くのかというぐらいの立ち回り。迫力だけではなくて、生々しく目を覆いたくなるぐらいのリアルさで、長くて手数が多く、感情がこもっていて、重みがある立ち回りに衝撃を受けました。
-初めて見られた「髑髏城の七人」が“ワカドクロ”だそうですが、そのときの極楽太夫役は小池栄子さんでした。
かっこよくて、姉御肌で、でも色気があって、非常に熱い印象でした。自分の中で初めて見た極楽太夫が小池さんなので、今でも脳裏に焼き付いています。
-今回、その極楽大夫を演じますが、役柄の印象は?
まず、極楽太夫と聞いたら、歴代のそうそうたる俳優さん方のお顔が並ぶぐらい、本当に素晴らしい方々が演じてこられた役だという印象があります。だから、最初に皆さんのお顔がよぎりました。その中で、極楽太夫に対する印象は、つややかで、あでやかで、華やか、そして情に深いということです。強さも印象的ですが、それは情の厚さから備わったのではないかなと感じます。
-「つややかで、あでやかで、華やか、そして情に深く」という点で、どのような役作りを考えていますか。
つややかさ、あでやかさ、華やかさに関しては、所作や立ち振る舞い、話し方やいなし方がとても重要で、極楽太夫の全てにそれらの説得力を感じていただけるように作っていきたいです。情の深さということに対しては、女衆たちを引き連れて無界の里のトップに立つ太夫ですので、きっぷの良さやトップに立つものの器というものを表しつつも、彼女の選択と行動というものが、情の厚さから来ているものだと、お客さまにキャッチいただけるようなお芝居をしなくてはと考えています。
-稽古はこれからということですが、「紅鬼物語」では新感線の稽古場をどう感じていましたか。
笑い声が本当にあふれていた稽古場でした。しかも、(演出の)いのうえ(ひでのり)さんから生まれる笑いが本当に多くて、まさに、いのうえさんワールドでした。いのうえさんがいろいろな役を体現してくださって、実際に演じてくださるのですが、その台本からそのような演出になるのかというサプライズが稽古場に満ちていました。しかも、いのうえさんが演じる姿が本当に面白くて、パワーもすごい。それが深く印象に残っています。
-役者としては、そのいのうえさんが提示したものを超えるというのは大変だったのでは?
いのうえさんがやると稽古場がドカンと揺れるぐらい周りにいる皆さんが笑うので、いのうえさんの後にやるというのはなかなかのプレッシャーでした(笑)。
-今作の製作発表会見で、「紅鬼物語」を終えて「もっとこうしたかったという思いがあった」という話をされていましたが、具体的にはどのようなことがあったのですか。
皆さまに喜んでいただいたからこその「もっと」という役です。演じた紅子は鬼であり、娘であり、妻であり、母でありという役どころで、いろいろな面を見えるように描いてくださったのですが、母とはどういうことか、鬼とはとか、1人の娘が1人の男性に命を救われ、戦場の屍の中で出会うということとか、一つひとつを積み上げて、もっと物語の世界で、紅子を演じ続けていきたかったというのもありました。立ち回りに関しても、今作でも共演させていただく早乙女友貴さんを子分に持つ最強の鬼という役でしたので、早乙女さんが演じる鬼よりも強く、彼に鬼として尊敬されなければいけなかったのです。お客さまに物語に入り込んで楽しんでいただくためにも、その説得力は何よりも私の立ち回りに懸かっていたこともあり、そこを任せていただけることにありがたさを感じながらもっとできると、千秋楽まで追い求めていました。
そして、“いのうえ歌舞伎”ということで、かぶくとか、見得とか、決めぜりふとか、そういうことは劇団☆新感線さんならではの醍醐味ですので、一つひとつの効果音や演出が、改めてありがたい時間だったと、千秋楽を終えてからも、何度も頭を巡っていました。
-立ち回りに関しては、「戦う極楽太夫」と言われるぐらいの役なので、注目したいところです。
武器も違いますし、そもそも人間ですし、いろいろなものが紅子とは全く違いますので、太夫の戦い方、彼女の守り方というものを、立ち回りで自分が表現を追い求めなくてはと思っています。
-ご自身の役も含めて、今作のアクションの見どころは?
まず、量の多さだと思います。今までの「髑髏城の七人」の中でも立ち回りが多い作品になるのではないかと感じています。殺陣好きのお客さまにはとても喜んでいただける最後の「髑髏城の七人」だと思います。太夫としては「戦う極楽太夫」と伺っていますが、これまでと比べると、仲間を守るために彼女が戦うシーンにおいて、それが彼女の無界の里に対する思いなのか、それとも彼女が失ったものに対するものなのか、相手への思いに思いをぶつけるものなのか、太夫の思いが立ち回りとして表現されるところが多いのも見どころになると思います。
-宝塚歌劇団を卒業してからの現在地における現実をどう感じていますか。
今まで男性の役ばかりを演じてきましたが、女性の役を演じるようになり2年がたちました。見た目も少し変わり、細かな変化ではありますが、少し女性らしい形になってきたのではと思います。顔つきが変わったりとか、使う筋肉が違うので体つきが変わったりとか、単純に髪の毛が伸びたりとかもあります。着る服も、以前は絶対にスカートを履かなかったのですが、今ではパンツスタイルだけでなく、スカートも履くので、ファッションにおいても幅が広くなりました。そういう意味でも、普段から身にまとうものが変わると、雰囲気が変わったと自分で実感するところもあるので、2年の変化というものを感じます。2年前では絶対に想像しなかったような自分の姿というのもあり、それは内面から出てくるものも含め、想像しなかった自分の姿や、お役との出会いがあります。
-役者として、今後に思うことは?
男役をやめて女性として演じるという中で、女性を演じるということに対しては、もともと女性なので、その気持ちや、そういうお芝居というのはどうなるのだろうかという不安と、未知のところもありながらやってみようという感じでしたが、思った以上に難しいところもありました。女性の役を演じるということについて、女性ですけど、男性の役でしか芝居をしてこなかったことから、意外と自分の女性像に対する思いで作ってしまいそうになることもあるのだなと知り、もっと、自分自身を含め、人間を学びたいと思っています。
(取材・文・写真/櫻井宏充)
2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演 いのうえ歌舞伎「髑髏城の七人 LAST STAND」は、11月14日(土)~12月25日(金)に都内・新橋演舞場ほか、長野、金沢、大阪で上演。







