~学生19名へのインタビューを通じて、成熟度の分布とそれを分ける要因を明らかに。学生の現在地を起点とした大学の教育プログラム改善を支援 ~

発表ポスター(日本教育工学会 2026年度秋季全国大会 一般研究報告6 ポスター発表)
ReBear合同会社(所在地:東京都目黒区、代表:荒川力哉、以下、ReBear )は、新潟大学と共同で「分野横断教育プログラム受講学生の初期状態」に関する調査研究を行いました。その成果を、2026年9月26日(土)~27日(日)に札幌市教育文化会館で開催された「日本教育工学会2026年度秋季全国大会」で発表しました。
ReBearは、大学の教育プログラムについて、学生へのインタビューをもとにした調査・分析を行っています。本研究では、新潟大学の「NICEプログラム」の入門科目を履修する1年次学生19名を対象に、「未来をデザインする力」が履修開始時点でどのような状態にあるかを分析しました。あわせて、成熟度を分ける要因と、NICEプログラムの改善に向けた示唆を整理しました。
発表の概要

NICEプログラムとは
新潟大学の「NICEプログラム(全学分野横断創生プログラム)」は、学生が所属学部の専門分野に加え、学部の枠を越えて多様な分野を学ぶことができる教育プログラムです。学生自身の興味・関心に応じて学びを選択できる「メジャー・マイナー制」を導入しており、専門性を深めながら幅広い知識や視点を身につけることで、複雑化する社会課題に対応できる人材の育成を目指しています。
NICEプログラムHP:https://www.iess.niigata-u.ac.jp/niceprogram/
ReBearが行った調査・分析
背景近年の大学教育では、専門分野の知識に加えて、分野横断的な能力の育成が求められています。そのためには、学生が自ら将来像を描き、その実現に向けて主体的に学修や経験を選ぶ力を育てる必要があります。NICEプログラムでは、この力を「未来をデザインする力」と位置づけています。一方で、受講学生が履修を始める時点でこの力をどの程度持っているのかは、十分に把握されていないという課題がありました。
そこでReBearは新潟大学と共同で、学生へのインタビューを通じて「未来をデザインする力」の初期状態とその形成要因を明らかにし、プログラム改善への示唆を得ることを目的に調査・分析を行いました。
調査概要
- 対象:入門科目「分野横断デザイン」を履修する1年次学生19名(学部・居住形態・入試形態・出身地に偏りなし)
- 方法:グループインタビュー
- 実施期間:2026年5月7日~8日
- 実施形式:1グループ2~3名、計6セッション(各約90分、事前説明を含む)
- 主な調査項目:対象学生の基本情報/価値観/人間関係/高校時代までの成長要因/未来をデザインする力/文理複眼の視野/協働の経験
- 分析方法:「未来をデザインする力」を「1.理想の自分を持っている」「2.現在地を把握している」「3.ギャップを行動に変えられる」「4.道筋を自分で引ける」の4要素で定義しました。そのうえで、4要素の充足度に応じて学生をStage1~4に分類し、各Stageをさらに3段階のレベルに分けました。
※研究参加への同意を得たうえで、発言内容は匿名化して扱う
【補足】Stage分類による整理
分析では、4つの要素の充足状況に応じて、学生をStage1~4に分類しました。

インタビュー調査の結果
インタビューで得られた学生の声を、「Stage別の分布」「各Stageにおける学生の特徴」「成熟度を分ける要因」の3つの観点で整理しました。1. Stage別の分布
19名の分類結果は、Stage4が2名、Stage3が4名、Stage2が9名、Stage1が4名でした。約半数(9名)がStage2に当たります。レベル別に見ると、全体の約3割(6名)がStage2-1に集中していました。
同じ1年次の学生でも、「未来をデザインする力」の状態には大きな幅があることが分かりました。
2. 各Stageにおける学生の特徴

3. 成熟度を分ける要因
Stageごとの特徴を比べると、成熟度を分ける要因として、次の3点が浮かび上がりました。
- Stage4:高校時代までに、異なる価値観や背景を持つ人と接した経験があり、それが将来像を具体化するきっかけになっていた
- Stage3とStage4の分かれ目:他者との接触経験を、自分の現在地や将来と結びつけられるかどうか
- Stage1・2:人間関係が自分の身近な範囲で完結している傾向があり、多様な他者と接した経験が限られていた
特に、他者との接触経験の有無と、その経験をどう意味づけているかが、Stageの差に表れていました。
調査結果を通じた考察と今後の課題
考察1. 多様な他者との接触経験が「未来をデザインする力」の成熟度に関与している調査結果から、「未来をデザインする力」の成熟度には、多様な他者との接触経験が深く関わっている可能性が示唆されました。Stageごとの特徴を比べると、次のような違いが見られます。
- Stage4:高校時代までに、異なる価値観や背景を持つ人と接した経験があり、それが将来像を具体化するきっかけになっていた
- Stage3とStage4の分かれ目:他者との接触経験を、自分の現在地や将来と結びつけられるかどうか
- Stage1・2:人間関係が自分の身近な範囲で完結している傾向があり、多様な他者と接した経験が限られていた
このことから、Stage1・2の学生には接触経験の「量」を増やすことが、Stage3・4への移行には接触経験の「質」を高めることが重要だと考えられます。
考察2. 力の差は個人の能力差ではなく、接触経験の差異に起因する可能性がある
特に地方大学では、学生が接する他者が相対的に限られます。そのため、自分の現在地から離れた理想像に触れる機会が少なく、現在地を認識しにくくなります。その結果、理想とのギャップを埋めようとする動機も生まれにくいと考えられます。「未来をデザインする力」の差は、個人の能力差ではなく、接触経験の差から生じているのではないかと考えています。
考察3. Stageの移行に応じた段階的な支援が成長の鍵になる
分析結果をもとに、Stageを一つ上がるごとに必要な支援の方向性を、次のように整理しました。
- Stage1→2:自分と異なる経験・価値観を持つ他者と出会い、問いを投げかけられる人や場を提供する
- Stage2→3:経験を振り返り、「起こったこと」に加えて「そこで何を学んだか」まで言語化する機会を提供する(スチューデント・アシスタントによる伴走支援の強化)
- Stage3→4:理想から逆算した履修設計を支援し、理想と行動を意図的に結びつける(アカデミック・アドバイザーによる履修相談)
入門科目「分野横断デザイン」だけで終わらせず、その後も続く継続的な支援プログラムを開発することが求められます。
今後の課題
本調査は19名を対象とした質的調査であり、ここで示した支援の方向性は、今後検証していく仮説です。今後は、入門科目の修了後や1年次の修了後など複数の時点で追跡調査を行い、NICEプログラムを通じて「未来をデザインする力」がどう変化するかを縦断的に検討していく予定です。
ReBearは、新潟大学での取り組みで培った調査・分析の知見をもとに、他の大学の教育プログラムについても、学生の声を起点とした調査・分析を通じて、高等教育の改善に貢献してまいります。
本調査についての詳細な結果や調査に関心のある方は以下よりお問い合わせください。
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