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「ディスクロージャー・デイ」(10月1日公開)★★★★
宇宙人の存在を知った人類は…
地球外生命体を巡る秘密と、その開示に迫るスティーブン・スピルバーグ監督のSFサスペンス。「未知との遭遇」から約50年。宇宙からの来訪者を描いてきた監督が、今、未知の先へと目を向けた。「未知との遭遇」が宇宙を見上げ、「E.T.」が宇宙人と心を通わせ、「宇宙戦争」が9・11後の世界で宇宙からの脅威におびえた映画だったとすれば、本作は、宇宙人の存在を知った人類社会はどうなるのかを問いかける映画だ。
情報が瞬時に世界を駆け巡り、真実と偽情報の区別さえ難しい時代。宇宙の真実を人々はどう受け止め、社会はどう変わるのか。過去の作品との連続性を感じさせながら、その問いを現代へ引き寄せたところに本作の新しさがある。未知への憧れや恐怖、尽きない好奇心は健在だが、宇宙人との遭遇が人間に何をもたらすのかへと関心は広がっている。宇宙を描くことで、地上に生きる自分たちを見つめ直す。そこにSF映画の巨匠の現在地が映し出されている。
「バイオハザード」(9日公開)★★★
情けない主人公に声援を
医療品の配達人ブライアン(オースティン・エイブラムス)が、想像を絶する災難に巻き込まれる一夜を描く。ザック・クレッガー監督が、人気ゲームを映画化したサバイバルホラー。次々と厄介事に見舞われ、文句を言いながら危機を切り抜けていく姿は、「ダイ・ハード」のジョン・マクレーンを思わせる。ただし、ブライアンには腕っぷしも機転もない。対処のまずさにいらいらするが、その情けなさゆえに、いつしか「何とか頑張れよ」と応援したくなる。ヒーローらしからぬ主人公の造形が面白い。
物語は彼の視点で、約90分にわたりリアルタイムで進む。先の読めない危機を共にくぐり抜ける感覚は、ゲームの世界に放り込まれたようだ。目を背けたくなる残酷描写も、随所のユーモアが生々しさを和らげる。ただ、ブライアンに感情移入していた身としては、ラストに納得しがたいものが残る。応援してきた主人公の行く末をどう受け止めるかで、評価は分かれるだろう。
「わたしの知らない子どもたち」(16日公開)★★★
子どもの生命力と大人の責任
戦争で家族を失った12歳の琴子(小八重葵美)は、身を守るため少年として生き、孤児たちと出会う。一方、かつて女学校の教師だった曽根(二階堂ふみ)は、軍国主義教育に加担した責任と向き合う。
西川美和監督が描くのは、戦争孤児の悲惨さだけではない。仲間と知恵を絞って生き抜く姿には、冒険物語のような躍動感もある。前作「すばらしき世界」の製作を通じてその存在を知った戦後の数多くの孤児たち。その生きる力が映画を動かす。そこには、ディケンズの小説「オリバー・ツイスト」やスピルバーグの「太陽の帝国」にも通じるものがある。さらに、子どもの琴子と大人の曽根を軸に据えたことで、なぜ子どもたちがこの境遇に追いやられたのか、大人の責任を問う視点が加わった。曽根も敗戦に傷ついているが、それで過去の責任が消えるわけではない。その複雑さが作品に奥行きを与える。少女が少年として生きる切実さを見事に体現した小八重の演技も鮮烈だ。
「クジラに落ちた男」(16日公開)★★★
父を知り、父を乗り越える
巨大なマッコウクジラに丸のみにされた17歳のジェイ(オースティン・エイブラムス)が、亡き父の教えを頼りに脱出を図る。ブライアン・ダッフィールド監督が描くのは、「ピノキオ」を思わせる空想を、切迫した生身の危機に変えたサバイバルだ。映像技術と実物の造形がクジラの体内に生々しさを与え、途方もない状況なのに、こちらも脱出の手だてを考えてしまう。
興味深いのは、危機を切り抜ける過程が、確執のあった父との絆を捉え直す物語と重なること。命をつなぐのは、その父から授けられた知恵なのだ。巨大クジラは、ジェイにとっては父そのものにも見える。その内側で父の記憶と向き合い、外へ出ようともがく姿は、父を理解し、乗り越えて自分の人生を歩み始める若者の姿でもある。「バイオハザード」に続いて不運な若者を演じるエイブラムスがいい。戸惑いと必死さが際立つ演技が、荒唐無稽な脱出劇を、父を失った青年の切実な自立の物語に変えている。
「クレイフェイス」(30日公開)★★★
顔を失った俳優の悲哀
襲撃で顔に大けがを負った俳優マット(トム・リース・ハリーズ)は、実験的な治療に望みを託すが、副作用で顔が生きた粘土のように変貌していく。ジェームズ・ワトキンス監督が、「バットマン」のヴィラン誕生の経緯を描く心理スリラー。
容姿の良さを武器とする俳優が、崩れる肉体に抗い、かえって自分を追い詰める構図は、デミ・ムーア主演の「サブスタンス」と重なる。両作の主人公が取り戻したいのは美しい顔だけではない。それによって得た仕事や名声、また自らの存在価値なのだ。そこに俳優のさががあらわになり、恐怖とともに哀れさが募る。もう一度俳優として生きたいという願いが理解できるだけに、「ジョーカー」の主人公より感情移入しやすかった。ハリーズも容姿への執着と喪失の恐怖を巧みに演じている。暗く重苦しい復讐劇が、その悲劇性を際立たせる。超人的な能力が救いになるとは限らない。怪物の誕生以上に、顔を失った俳優の悲哀が心に残る。
★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価。
(映画ライター 田中雄二)







