対話プログラムの学習ログを定量分析し可視化 ― 国際学会ICQE26(広島)でポスター発表

~早稲田大学所属の研究者 正司先生・東京大学所属の研究者 鈴木先生との共同研究。探究学習・キャリア教育の「プロセス評価」に新たな視点~

中高生が全国の同年代や社会人コーチとの対話を通じて自己理解を深め、自分の軸(アクシス)を見つけるプログラムを運営する一般社団法人アクシス発見スクール(所在地:東京都千代田区、共同代表理事:吉田直哉、小林伸輔)は、早稲田大学の研究者 正司先生および東京大学の研究者 鈴木先生との共同研究として、対話型アクシス発見プログラムにおける中高生の学習ログデータを定量分析しました。
その結果、生徒の「自分軸(自己評価・価値観・メタ認知の結びつき)」の核が構築されるのは最終発表の場面ではなく、プログラムの“中間フェーズ”の対話であることが示唆されました。

本研究は、量的エスノグラフィーおよび学習データ分析分野の主要国際学会「ICQE(International Conference on Quantitative Ethnography)」において査読を経てポスター発表演題として採択され、2026年11月9日~13日に広島で開催される「ICQE26」にて発表します。

本リリースのポイント

1. 自分軸の構築は「最後」ではなく「途中」で起きる:中高生の対話ログを分析した結果、自分軸の核となる「自己評価・価値観・メタ認知」の結合が形成されたのは最終発表ではなく、プログラムの中間フェーズだった。


2. 将来像(ビジョン)は構築された自分軸を土台として接続される:対話の中間段階で価値観やメタ認知が深まることで自分軸が構築され、それを土台として最終的に将来のビジョン(未来像)が語られるプロセスが見えた。


3. 探究学習・キャリア教育の「プロセス評価」に新しい視点:成果物や最終発表だけでは見えない学びの深まりを、学習ログから定量的にとらえる手法を提示。


4. 国際学会ICQE26(2026年11月・広島)でポスター発表:早稲田大学・東京大学の研究者と当団体の共同研究として、査読を経て採択。

■ 背景:「最後に何を語ったか」だけでは、生徒の変化は見えない

探究学習やキャリア教育の広がりとともに、中高生が自らの価値観や生き方の指針となる「自分軸」を育むことの重要性が高まっています。一方で、その評価は最終発表やレポート、事後アンケートといった「結果」に頼りがちで、生徒の中で考えや経験がどのように結びつき、自分軸が形づくられていくのかという「過程」を捉えることは難しいという課題がありました。 「どのタイミングで、どんな関わりをすると、生徒の考えは深まり軸が作られるのか」。これは、多くの教員や教育関係者が日々向き合っている問いでもあります。

■ 研究の概要

本研究では、自己概念の言語化を「時間や他者との関係の中で紡がれていくもの(ナラティヴ・アイデンティティ理論)」と捉え、対話データの分析手法である「認識ネットワーク分析(ENA:Epistemic Network Analysis)」を応用しました。プログラム中の中高生の発話を次の8つの要素に分類し、それらがどのように結びついて自分軸が構築されるかをネットワークとして可視化・比較しています。
- 過去の具体的経験
- 自己の能力・特性評価
- 感情状態の言語化
- 価値観・判断基準
- 他者との関係・影響
- 未来への投射
- 具体的行動選択
- メタ認知・自己反省

分析は定量・定性の両面から行い、プログラムの各フェーズにおける対話構造の変化を検証しました。

■ 主な結果

1. 自分軸の核は「最終発表」ではなく「中間フェーズ」で構築される
認識ネットワーク構造の最も大きな変化(自己評価・価値観・メタ認知の強力な結合)は、最終日の成果発表ではなく、プログラムの中間フェーズで起きていることが分かりました。生徒が自分軸を言葉にしていく上では、発表に向けたまとめの段階よりも、途中の対話で自分の価値観や過去の経験を掘り下げる時間が軸の構築に決定的な役割を果たしている可能性が示されました。

2. 将来像(ビジョン)は構築された自分軸を土台として接続される
最終フェーズで語られる「将来の計画やビジョン」は単独で生じるのではなく、中間フェーズで構築された「自己評価・価値観・メタ認知」のフレームワークに接続される形で表現されることが分かりました。これにより、成長は単に「過去から未来へ一直線に進む」のではなく、内面で軸が構築された上で未来へ展開していくプロセスであることが示唆されました。

■ 教育現場への示唆

本研究は探索的な分析ですが、学校や教育プログラムの設計に向けて、次のような視点を提示しています。
- 「振り返り」を最後に置くだけでなく、中盤に深い対話を挟み「自分軸の核」を構築する時間を設計することの重要性
- 生徒の成長を、成果物だけでなく対話・記述のログから「過程(構造変化)」として評価するアプローチ
- 一時的に考えが揺れたり整理がつかなくなったりする時期を、つまずきではなく軸が再構築される兆しとして捉える見方


アクシス発見スクールにおける「アクシス(自分の軸)」の考え方

■ 学会発表の概要


※本研究は中高生8名の対話ログを対象とした探索的分析です。今後、対象を広げたより大規模なデータでの検証を進めてまいります。

■ 代表コメント

一般社団法人アクシス発見スクール 共同代表理事 吉田直哉
私たちが現場で大切にしてきた『対話を通じた自分軸の発見』が、早稲田大学・東京大学の研究者の皆さまとの共同研究、そしてENAという先進的な手法によって、構造変化のパターンとして可視化されたことを大変嬉しく思います。単に“将来の夢”を語ってもらうのではなく、途中の対話の中で自身の価値観や過去の経験を掘り下げるプロセスこそが、自分軸の言語化において重要であることが示唆されました。この知見を学校や教育関係者の皆さまとも共有し、より多くの中高生に質の高い対話と自己発見の機会を届けてまいります。

■ 共同研究者コメント

早稲田大学・正司豪:探究学習の学習プロセス支援に関する研究者として、アクシス発見スクール様との共同研究ができて大変嬉しく思います。特に、学習プロセス支援で重要となる「どのタイミングで学習者の学習(本研究では自分軸)をみとるか」という問いにおいて、ENAを用いて「最終発表」ではなく「中間フェーズ」という一つの答えがわかったことは重要な知見だと考えております。この知見は、今後探究学習・キャリア教育だけでなく教科横断的な学習などさまざまな教育評価にも応用可能だと考えられます。

■ 今後の展開とお問い合わせについて

当団体では本研究の知見をもとに、次の取り組みを進めてまいります。関心をお持ちの教育関係者・研究者・報道関係者の皆さまからのお問い合わせをお待ちしています。

教育関係者の皆さまへ
- 学校・自治体・教育団体向けの対話型プログラムの実施・導入相談
- 教員研修・探究学習担当者向けの研究内容のご紹介(オンライン可)
- 対象を広げた共同研究・データ提供へのご協力のお願い

報道関係者の皆さまへ
- 代表者・共同研究者への取材(研究内容、教育現場への示唆)
- 参加経験のある生徒・保護者への取材(ご本人・保護者の同意を前提に調整いたします)

■ 一般社団法人アクシス発見スクールについて

中高生が全国の同世代や社会人コーチとの対話を通じて自己理解を深め、自分だけの軸「アクシス」を見つけるプログラムを提供しています。アクシスとは、日々の選択や思考の土台となる「自分らしさ」のこと。誰もが持っていながら、普段の生活では言葉にすることが難しいこの軸を、対話を通じて言語化することを目指しています。


団体名:一般社団法人アクシス発見スクール
所在地:東京都千代田区九段南1-5-6 りそな九段ビル5F KSフロア
代表者:共同代表理事 吉田直哉、小林伸輔
設立:2022年8月8日
URL:https://axis-school.or.jp/

■ 本件に関するお問い合わせ先

団体名:一般社団法人アクシス発見スクール 運営事務局
担当者:武内
E-mail:info@axis-school.jp
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