LightningとUSB Type-Cのどっちにも対応したパイオニアのRAYZ Pro

2018年はiOSデバイスに大きな変化があった。デジタル接続端子にアップル独自規格のLightningではなく、汎用性の高いUSB Type-C(以下:USB-C)を採用するiPad Proが発売されたのだ。これから発売されるiPadやiPhoneがすべてデジタル接続端子をLightningからUSB-Cに移行することになったら、いま使っているiOS対応のアクセサリーが使えなくなるのか、不安にもなる。この移行期のタイミングにいち早く、LightningとUSB-Cのどちらでも接続できるイヤホンがパイオニアから発売された。今回はその新製品「RAYZ Pro」をレポートしてみよう。

iPhoneで有線で音楽を楽しむ人はまだ多い

USB-CはAndroidスマホやWindows PC、ワイヤレスイヤホンなどさまざまなデバイスに採用が広がっている。iOSデバイスの充電に、ほかのデジタル機器と同じケーブルや充電プラグが使えるようになれば、旅行や出張の時に持ち運ぶ荷物が簡略化できてうれしい。でも一方で、これまでのLightning対応のアクセサリーはどうなるのかといった問題が生じる。

そこに目を付けたパイオニアのイヤホン、RAYZ ProはiPhoneやiPad Pro、Androidスマホなどのデバイスにケーブルを直接つないで音楽再生が楽しめるデジタル接続のイヤホンだ。ワイヤレスイヤホンの注目度が高まっているいま、わざわざ有線接続のイヤホンを選ぶ理由もないだろうと思うかもしれない。

でも実はiPhoneに付属するLightning接続のイヤホン「EarPods」や、アップルのアクセサリー「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」を介して使い慣れているイヤホンやヘッドホンで音楽を聴く人は多い。

ワイヤレスイヤホンが必要とするスマホとのペアリングや本体の充電など、音楽が聴けるようになる手前の面倒な準備が不要なところは有線接続のイヤホンならではのメリットでもある。Lightning端子、またはUSB-C端子を採用するデジタル接続のイヤホンはいくつかのブランドが商品化してるが、その中でもRAYZ Proはユニークな特徴を数多く備える。その中から大きく3つの点に注目したい。

一つは音が良いことだ。本体にはスマホやオーティオプレーヤーからデジタルで入力された音楽信号を内部でアナログに変換して出力するためのDAコンバーターと、ヘッドホンアンプを内蔵している。CDからリッピングしたファイルやダウンロード音源、音楽配信のストリーミングを再生すると、解像度が高くパワフルなサウンドの違いに気が付くはずだ。

ヘッドホンアンプ回路の段から音声信号の左右チャンネルセパレーションを高めて、明瞭な立体的なサウンドを再現するためのバランス駆動処理を行なっていることも音に差がつく理由だ。

二つめの特徴として、専用アプリの「RAYZ」を使うと、ただ音楽を聴くだけでなくノイズキャンセリングにイコライザー、音楽を聴きながら外の音も取り込める「ヒアスルー」など便利な機能が使えるようになる。

パイオニアからは2017年の春にデジタルイヤホン「RAYZ Plus」が発売されている。本機はLightning接続専用のモデルだったが、新しいRAYZ Proはプレーヤー側のアダプターを変換してLightning/USB-C接続が選べるようになった。ここが最も注目したい三つめの特徴だ。

ケーブルのインラインに設けたUAC(Ultra Accessory Connector)端子から先の変換ケーブルを交換して、さまざまなデバイスにつなぐ。ふだんからiPhoneとiPad Proを両方持ち歩きながら、それぞれで音楽やカメラ/ボイスレコーダーで録音した音をイヤホンで聞いたり、筆者のように記者・ライターの仕事に携わる者には便利さが実感できるイヤホンだ。

Lightningの変換アダプターは、本体にメス型のLightning端子も搭載されている。ここにLightningケーブルをつなぐとiPhoneで音楽を聴いたり、動画を視聴しながら充電もできる。

RAYZ Plusに比べると、RAYZ Proは付属するアクセサリーが充実している。特に遮音性の高いComplyの低反発フォームチップや、耳元の装着を安定させるスタビライザーが付いてくるので、ぜひ活用したい。

音質はバランスに偏りがなく、メリハリの効いた力強く立体的なサウンドが楽しめる。ノイズキャンセリングの効果も高く、騒音に囲まれがちなアウトドアでの音楽再生がさらに心地よくなる。消音効果をオフからオンに切り替えてみても、とても自然に感じられるのがよい。さらに音楽を再生していない状態でも消音機能がはたらくので、耳栓がわりにもなる。

イヤホンが駆動に必要な電源はスマホから給電する仕様だが、消費電力容量が驚くほどに小さいので長時間でも安心して使える。RAYZ Proを使って音楽を聴いている時にも周りからの呼びかけに反応できるようにしたい場合もある。そんな時はアプリからヒアスルーの機能をオンにしよう。イヤホンに搭載されているマイクが周囲の音を拾ってくれる。再生中の音楽のボリュームだけを小さくするようにセッティングも変えられる。

商品のパッケージにはソフトペンケースのようなキャリングポーチが付属する。変換アダプターやイヤーチップをまとめて、RAYZ Proをどこにでも軽快に持ち運べる。

便利なRAYZアプリが、現在はまだiPhoneと旧来のLighitning端子を搭載するiPad、iPod touchとThunderbolt(USB-C)端子を搭載するMacにしか対応していないため、新しいUSB-C端子を搭載するiPad ProやAndroidスマホで使えないのが残念だ。イヤホンを装着すれば音楽を聴くことまではできる。近くアプリも提供されることを期待しよう。

2019年はRAYZ Proのようにスマホとデジタル接続をしながら、ノイズキャンセリングなどユニークな機能が使えるイヤホン、ヘッドホンが各ブランドが登場することも考えられる。アップルも19年に発売するiPhoneのデジタル接続をUSB-C端子に切り替えるのではないかというウワサもある。

そうなったとしても互換性が確保されているRAZY Proを選んでおけば安心だ。RAYZ Proはペアリングや充電が要らない有線イヤホンの魅力を多くの方に再認識させてくれるイヤホンだ。(フリーライター・山本敦)