東芝のBS/CS 4Kチューナー内蔵液晶レグザ「Z720X」

2018年12月1日に始まった「新4K8K衛星放送」。開始から2か月が経過しようとしているなか、NHKや民放各局は旅番組やオリジナルドラマなどを提供し続け、世間での認知度も上がってきた。この影響は薄型テレビ市場にも出ている。家電量販店・ネットショップのPOSデータを集計する「BCNランキング」から、4K/8Kテレビ市場では、新4K8K放送に対応したチューナー内蔵テレビの販売台数構成比が増加していることが分かった。

新4K/8K衛星放送対応チューナーを内蔵したテレビは、2018年6月に東芝から初めて発売された。発売当時は4K/8Kテレビの中でも販売台数比率はわずか1.2%程だったが、9月には三菱が、10月にはシャープが4K衛星放送対応チューナー内蔵テレビを発売、新4K/8K衛星放送が開始した12月時点では24.1%まで上昇している。

4K衛星放送対応チューナー内蔵テレビメーカーの中でも圧倒的に販売シェアが高いのは、東芝だ。大手テレビメーカーの中では最も発売が早かったとはいえ、液晶テレビ市場で最大手であるシャープを抑え、63.1%という高いシェアを維持している。

東芝のシェアが高い理由の1つは単価だ。4Kテレビの中でも構成比の高い40~49インチと、50インチ以上のサイズ別で、4大メーカーの4Kテレビ、4K放送対応有/無別の平均単価を見てみる。なお、新4K/8K衛星放送対応チューナー内蔵製品を4K放送対応とする。

4K放送非対応のパナソニックやソニーの製品は、18年12月の平均単価が約10万3000円~7000円程度なのに対し、東芝の4K放送対応製品は10万1000円。東芝は4K放送対応製品でもパナソニックやソニーよりも単価が低くなっている。シャープの4K放送対応製品は13万7000円となっている。

続いて4Kテレビ50インチ以上で比較すると、こちらも18年12月における東芝の4K放送対応製品の平均単価は約12万2000円、同じくシャープは17万5000円で、4K放送非対応のパナソニックは16万円、ソニーは18万円と、東芝は圧倒的に単価が低いのがわかる。

東芝の単価が低いことについて考えてみると、ソニーやパナソニックのように、別途、新4K/8K衛星放送対応チューナーを消費者に買わせるのではなく、4Kチューナーを内蔵したうえで価格を抑え、他社との差別化を図り、消費者に購入メリットを提示しているように見える。

実際、東芝の4Kテレビのなかでは、4K衛星放送対応製品の比率は9割以上だが、別売りの4K/8K衛星放送対応のデジタルチューナー市場では、東芝はシャープ、ソニー、パナソニック、ピクセラに次いで5番手で、シェアは8.6%と低い。これらのデータから、東芝はデジタルチューナー市場では積極的にシェアを取りに行く方針ではない、と考えられる。

19年初頭現在は、新4K/8K衛星放送もまだ始まったばかり。時間が経過するにつれ、各放送局もさらにコンテンツを拡充していくだろう。消費者が「4K/8K放送を見たいからテレビを買い替えよう」と考えた時に、選択されるメーカーはどこか、東芝の戦略が支持されるのか。今後も行く末を見届けたい。(BCN・栃木亮範)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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