『みんなの戦艦2012』~『SYNCHRONICITY’12』~『StarFes』と、最近たて続けに良質なフェスを体験しているせいか、脳内が完全にお祭りモードに突入している自分。というわけで今回もフェスネタで失礼いたします。これまでフェスカタログやレポートなども紹介してきたが、今回はちょっと違う角度からフェスを楽しめるDVD作品を紹介しようと思う。

フェスはたいてい多くのアーティストが参加するので、テレビで放映することはあってもなかなかソフトになりづらい印象があるが、最近はフェスにスポットをあてたDVD作品も幅広くリリースされている。通常のワンマンライブに比べ、自分のファンだけでない大勢の観客を相手にしているためか、比較的アグレッシブなプレイが見られることが多く、オーディエンスや会場の磁場が一体となり“フェス・マジック”としか言いようのない神懸り的名演が繰り広げられることも少なくない。

フェス参加予定がある人は来たる本番へのイメトレをするもよし、色々な事情で今年はフェス参加が難しい人は自宅で擬似フェス体験をするもよし。というわけで、ひとつのフェスの模様をまとめた<フェス・ピックアップ系>と、特定のアーティストのフェスでのライブ映像をまとめた<アーティスト・ピックアップ系>、ふたつのタイプに分けて紹介していこう。

<フェス・ピックアップ系>

FUJIROCKERS ~THE HISTORY OF THE FUJIROCK FESTIVAL~

日本のロックフェスのパイオニア、『FUJI ROCK FESTIVAL』。本作は’97年の初開催から’07年までの11年間をライブ映像とドキュメンタリーでまとめた、2枚組・5時間長の大作だ。ライブの模様は演奏途中で途切れるものがほとんどで、じっくりライブを楽しむというよりはフジロックの雰囲気を丸ごと体感できる内容となっている。というか、さんざんフェス好きとのたまいつつ実はフジロック童貞な自分は、このDVDを見ながら未だ見ぬフジロックを妄想している。今年こそは苗場の土を踏んでやる! ドラゴンドラにも乗ってやる! オールナイトフジで踊り狂ってやる!! と意気込むフジロック未体験の人も、これを見れば立派なフジロッカーズを名乗れるであろう、フェス好きなら必携の1枚だ。


 

グラストンベリー・アンセムズ ザ・ベスト・オブ・グラストンベリー 1994-2004

そんなフジロックがお手本にしたと言われている、世界的に有名なイギリスのフェス『グラストンベリー』。初開催は驚きの’70年! 本作には’94年から’04年に行われたライブから、フランツ・フェルディナンド、ケミカル・ブラザーズ、コールド・プレイ、モービー、レディオヘッド、ポール・マッカートニーなどなど厳選ラインナップのステージを収録している。さらに主催者サイドへのインタビューや、’71年開催時の模様も収められており、巨大フェスを多角的に楽しむことができる。上のフジロックと合わせて鑑賞すれば、“フェス”という概念をひと通り理解できるのではないだろうか。もちろん自分はグラストンベリーも未体験。ハードルはフジロック以上に高いが、生きているうちにいつかは行ってみたいという人も多いのでは? まずは本作を見て、彼の地への憧れをさらに膨らませるべし。



 SMTOWN LIVE in TOKYO SPECIAL EDITION <数量限定生産>

続いてはガラッと趣を変えて、勢いの増すK-POPシーン最大級のフェスティバル『SMTOWN LIVE』の最新公演を収めたDVDをご紹介。その名の通り大手事務所“SMエンタテインメント”所属アーティストが大集結し、ヒット曲はもちろん貴重なコラボなどを惜しげもなく披露するもので、アジア各地はもちろんロサンゼルスやニューヨーク、パリでも開催されている、とにかくスケールの大きなフェスなのである。本作では少女時代、東方神起、BoA、SHINee、SUPER JUNIORら、K-POP好きにはたまらない面々のスペシャルなステージを楽しむことができる。フェスの雰囲気をより濃く味わいたいなら、本編2枚+ボーナスディスクにフォトブックとTシャツまでついた、初回限定盤のメモリアルボックスがオススメだ。




グループ魂の秩父ぱつんぱつんフェスティバル(雨)

ここからはアーティスト主催によるフェス作品を紹介する。まずはグループ魂が’08年に埼玉は秩父の奥地で2日間にわたって開催した『ぱつんぱつんフェス』の模様を収録した本作。怒髪天や向井秀徳アコースティック&エレクトリックなどゲスト部分は除き、グループ魂と「ナイス警察」「いわき兄弟」「ライムサワー」などの別ユニットのステージを収録している……って改めて見返すとすごい名前ばかり。そして名前以上にインパクト大のステージとなっているのがさらにすごい。出ている人たちはめちゃ豪華なのにやってることはめちゃ下らない、でもエンタテインメントとしてのクオリティはめちゃ高いという、もはや分類不可能なステージは、あなたのフェス観をひっくり返すこと請け合いである。




フジファブリック Presents フジフジ富士Q ‐完全版‐

 フジファブリックが静岡・富士急ハイランドにて開催した野外フェス。志村正彦の急逝を受け、彼やバンドにゆかりのあるフロントマンをゲストに迎え、フジファブリックのレパートリーを披露していくという内容で、吉井和哉、奥田民生、くるり、PUFFYなどいずれ劣らぬアーティストたちがそれぞれのフジナンバーを歌い奏でる。これだけのメンバーを揃えたにも関わらず自身の曲は一切やらず、フジの曲だけをやるところに、各人のバンドに対する愛とリスペクトを感じるし、他の人が歌うことで「あ、この曲ってこんな顔も持ってたんだ」と再確認させられる面も。志村正彦の不在の大きさよりも、フジファブリックというバンドの輝きや魅力を感じることができる感動的なフェスを、DVDで追体験していただきたい。


TONOFON FESTIVAL & SOLO 2011

こちらはトクマルシューゴが主催したふたつのフェス、所沢・航空記念公園の野外ステージを舞台に山本精一+Phew、パスカルズ、王舟らが出演した『TONOFON FESTIVAL 2011』と、“ソロ”をテーマに池袋・自由会館にてAlfred Beach Sandal、さや(tenniscoats)を迎え開催された『TONOFON SOLO 2011』の模様をパッケージングした作品。発売は5月16日(水)のため内容はお伝えできないが、『TONOFON FESTIVAL 2011』に行った友人が「いや~最高だったよ~」と本当に幸せそうに言っていたので、DVDの方も間違いないはず。さらにリリース記念ライブも決まっていて、こちらは5月25日(金)に恵比寿LIQUIDROOMにて開催。対バンにはd.v.dを迎えるとのことだが、DVDの発売記念だけに、ということだろうか。だろうな。トクマルさん最高です。


HERBESTA FES’11(タイトル未定)

ジャム・サイケ・バンドDachamboが’03年から自主開催してきたイベント『HERBESTA』が、昨年バンドの結成10周年を記念して拡大版で開催。長野県こだまの森にて3日間にわたって行われた模様をライブ&ドキュメンタリーでまとめたDVDのリリースが決定している。THE SUNPAULO、WRENCH、(仮)ALBATRUS、RANKIN TAXI、渋さ知らズをはじめ、のべ70組以上のアーティストが参加し、なんと入場無料で行われたこのフェス。ボランティアスタッフとともに開催前に募集していた、“素人デジカメ撮影隊”による映像も含まれていそうだ。大手スポンサーがついた大型フェスが当たり前に存在するいま、ここまで徹頭徹尾D.I.Yで作りあげたフェスの全貌がDVDとして記録されることは、この国のフェス文化の成熟においても、とても大きいことだと思う。リリースの詳細は今後発表される予定なので要チェック。