自分の気持ちを言葉にするのが苦手な中学生の琉花は、夏休みの初日の部活でチームメイトと問題を起こしてしまう。母親と距離を置いていた彼女は、長い夏の間、学校でも家でも居場所を失うことになる。そんな琉花が、父が働いている水族館へと足を運び、両親との思い出の詰まった大水槽にたたずんでいたとき、目の前で魚たちと一緒に泳ぐ不思議な少年“海”とその兄“空”と出会う。“14歳の少女”と“ジュゴンに育てられた2人の兄弟”とのひと夏の出会いを描いた『海獣の子供』(6月7日公開)で琉花の声を演じた芦田愛菜と、海の声を演じた石橋陽彩に、作品への思いや見どころについて聞いた。
-完成した映画を見てどんなことを感じましたか。
芦田 音楽や映像、全てが互いに引き立てあって命が宿っているような気がしました。私を含めて映画を見る人によって感じることが違ってもいいと思えるような作品です。
石橋 収録前に原作を読んだときに、自分の頭の中で動きなどを想像しながら読みましたが、実際に映画を見てみると、自分の考えていたものを遥かに上回る映像や音楽に圧倒されました。
-この映画には「親子」「出会い」「生と死」などいろいろなテーマがありましたが、最初に脚本を読んだときに印象に残ったテーマはありましたか。
芦田 私は「命あるものにいつか死は来るもの」だと思っていて、琉花は生の立場から死を見ているけれど、海と空は「自分たちはもう長くない」と分かっていて、死の立場から生を見ている。生と死は正反対のように感じるけれど、隣り合わせのものなのかな?と思ったので「生と死」かなと思いました。
石橋 僕にはそこまで難しいことは言えない(笑)。僕は「新たな世界」だと思います。自分たちの知らない海の世界や海の生き物の神秘がこの作品で見られるので。
-印象に残ったシーンは?
芦田 海くんと水槽の中で出会うシーンです。音楽がどんどん盛り上がっていくのもそうなんですけど、琉花が「不思議なものに出会っちゃったぞ」という、何かが始まるような、自分では気付いていない高揚感や期待感などが表現されていて大好きです。
-お二人が演じた琉花と海について共感する部分などはありましたか。
芦田 琉花は言葉では多くは語りませんが、心ではいろいろなことを思っているけどそれをうまく言葉にできないもどかしさを抱えている女の子で、私自身もそういう気持ちはすごく共感できるなと思いました。
石橋 海くんは自分の考えに素直で、思いついたらすぐに行動したり表情に出たりする子。自分の考えに素直というところが僕と似ていると思います。
-石橋さんも海のように感情豊かなんですね。
石橋 いや、あそこまで激しくはないです(笑)。でも、悲しいときは思いっ切り泣くし、楽しいときは思いっ切り笑うのでやっぱり海くんと似ているかも(笑)。
-今回の映画は、夏休み中に起こった出来事でしたが、お二人は夏休みで忘れられない思い出や出来事はありますか。
芦田 小学校低学年のときに、友達と秘密基地を作って遊んだことがとても懐かしくて、いい思い出だったなぁと思いました。
石橋 特別な思い出ではないですけど、毎年夏に家族やいとこと一緒に大きなプールに行くことが一大イベントです。
-芦田さんはこれまで劇場版のアニメ作品や吹き替えで声優を経験し、ドラマのナレーションもしていますが、アフレコの現場にはもう慣れましたか。
芦田 まだ慣れないです(笑)。でも、とても楽しいです。声のお芝居とナレーションではまたちょっと違うかなと思います。アフレコは声だけで全てを伝えるということがとても難しいけれど、自分でキャラクターを作り上げていくというところがとても楽しいです。ナレーションはお芝居の雰囲気を壊さないように、第三者の目線で、少し離れたところから見守るような存在になることができるように心掛けています。
-今回の舞台である海や水族館について何か思い出はありますか。
石橋 小学生の頃、家族で海へ遊びに行ったときに、時期が悪かったのかクラゲに刺されて…。「チクッ」とした思い出があります(笑)。
芦田 私にはそんな面白い話はできません(笑)。思い返すと最近海とか水族館に行ってないです。でも、潮干狩りとかに、ゴールデンウイークに家族で行ったりするので、今年も行けたらいいなと思います。
-本編には収録されなかったけど「このシーンが好き!」という原作のシーンはありますか。
芦田 原作では話と話の間にインタビュー形式の小話が入っていて、その小話で知る新たな情報や海の神秘を知ることができてとても好きでした。
石橋 映画では説明がなかったんですけど、琉花はとても視力が良くて、海の中でもはっきりと景色を見ることができるという部分がとても印象的でうらやましいと思いました。僕は海水の中だと「(目が)痛っ!」ってなっちゃいますから(笑)
-最後にこの映画を楽しみにしているファンに一言お願いします。
芦田 この映画は明確な答えがない作品だと思っていて、実際に見て感じたことが違っていてもいいと思います。正解や答えを求めるのではなく、そのときに感じたことを大切にしていただけたらうれしいです。
石橋 言いたかったことを言われてしまった(笑)。(本作は)映像がとても美しくて、舞台になっている江ノ島エリアの情景がとても繊細に描かれているので、この映画を見て「江ノ島に行ってみたいな」と思っていただけたらとてもうれしいです。
(取材・文・写真/丸山有咲)