NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の、第11代たいそうのお兄さん(2005年4月~2019年3月)・小林よしひささんと、身体表現「パント!」のお姉さん(2012年4月~2019年3月)・上原りささんが、今年3月、そろって卒業した。それぞれ14年間と7年間努めたお兄さんやお姉さんという仕事への思い、子どもたちとの時間、健康維持などについて、話を聞いた。
―戸惑いや悩みも少なくない小さな子どもの子育て。わが子が番組を見ながら身体を動かしている様子に励まされるなど、お兄さんやお姉さんは、親たちにとっても大きな存在であったのでは?
よしお兄さん(よしひさ) これまでも番組を見ている親子が声を掛けてくださることは時折ありましたが、今回卒業というタイミングで、「14年間助けていただきました」などとたくさんのお声をいただきました。うれしさの反面、「本当に大丈夫だったのかな? 助けることができていたのかな?」と反省の思いもありました。今後も体操を通じた活動で、皆さんの助けになれるよう頑張っていきたいなあと思っています。
りさお姉さん(りさ) 私もよくお手紙を頂くのですが、「パントの影響でお手伝いをしてくれるようになったんです」「助けになりました」「元気になりました!」と言っていただいたことがすごく励みやパワーになり、それが番組の方でも出たと思っています。
―お2人同時のご卒業。率直なご感想は?
よしひさ 14年の長きにわたってやらせていただいたので、やりきれたなあという思いが一番最初に来ました。風邪をひいて収録に穴を開けるということもなかったですし、「やりきれた自分をほめてあげたい」というようなホッとした感情が大きかったですね。
りさ 番組から卒業すると、子どもと関わることが本当になくて。あんなにたくさんの子どもたちに囲まれて一緒に遊べた7年間は楽しかったなあって。幸せな世界にいられたんだな、そこに7年間もいさせてもらえたんだなってことにありがたさを感じましたね。本当に、「幸せな時間をありがとうございました」という気持ちです。
―たくさんの子どもと向き合う時間、大変だったこともありますか?
よしひさ たいそうのお兄さんになる前にも、もちろん子どもの指導をしたことはあったんですが、こんなに毎日、必ず新しい子が来る。毎回いろんなことがあるんです。最初のうちはすごく考えて考えてやっていたんですが、ある日、俯瞰で見られる瞬間があったんです。接する子どもたちは、3歳~4歳ぐらいなんですが、もう、大人と一緒だなあと。子どもとして接するというより、1人1人との人間関係なんだと。子どもをどうするかではなく、初めて出会った人とどう楽しむか、という感覚に変わっていったら、楽になりました。
りさ 私が常に意識していたのは、「子どもたちと遊ぶ」ということです。子どもたちも、楽しいところに遊びにきたという感覚で来てくれていたと思います。とはいっても、さみしくなっちゃう子もいるんですが。さみしくて泣いていても、楽しい世界を続けていくことができたかなと思っています。途中で泣いてお母さんのところに戻っちゃった子でも、最後には戻ってきて「今日楽しかったんだー」って笑顔で言われたときは、よかったなって思いますね。
―収録中に予想外の行動を取る子どももいるかもしれませんが、どんなふうに対応していましたか。
よしひさ そもそも、もう、大体毎日予想外なので、逆に驚かなくなってくるというか(笑)。何かハプニングが起きたときは、個々の判断で対応していくんですが、終わった後にチームで振り返る時間を持ちます。例えば、私が変装しているときに転んでしまった子がいて、りさお姉さんが入ってきて、助けてくれたことがありました。「ありがとう助かった! でもあの位置関係だったらあつこお姉さんが入った方がよかったのかな!?」とか。自分たちで、プログラミングというか、反省の時間を経て常に更新をしていました。
―ハードなお仕事、体調管理はどうされてきましたか?
よしひさ 食事面には重きを置いています。料理は好きで、自炊します。こだわりとしては、季節の野菜とか食材を取り入れること。最近「腸活」とかもはやってきているので、話題の乳酸菌製品なども取り入れたりしています。
りさ 私も、食べられるときにしっかり食べること。食が細くなってくると、弱ってる証拠だなって。そんなときはおなかに優しいものを食べたり。力をつけたいときはお肉をたっぷり食べたり。マスクやうがいなどの対策もしっかりしていました。特にインフルエンザにかかってしまうと番組に出られなくなってしまうので、怖かったですね。
―気分転換にはどんなことを?
よしひさ 私の場合は、趣味と実益が一致していて、筋トレなんです。筋トレをやればすっきりするし、疲れていてもジムに行くとテンションが上がっていくんです。料理もそうですが、自分で決めた目標に向かって黙々と作業していくのは、かなりリフレッシュになるんです。時にはあまりに疲れてテンションが落ちていても、子どもたちがいるとテンションが上がるので、子どもたちに助けてもらっていたというのもありましたね。
りさ 私は観劇ですね。大学でミュージカルをやってきたので、気になる作品や、気になる人が出ている舞台などを見にいって、英気を養っていました。最近はずっと家でアニメを見ていましたね。「Free!」とか、「うたの☆プリンスさまっ♪」とかを見ていました。あとはスイーツを作るのが好きで。チーズケーキと、パウンドケーキと、クッキーが得意です。
よしひさ 現場にもよく持ってきてくれたんですが、プロ級ですよ。僕は料理は好きだけどきちんと量るのが苦手で目分量なんですが、りさお姉さんはきっちり量るのがすごいなあと思います。
―2人同時卒業に当たり、(第12代目うたのお兄さんの)花田ゆういちろうさん、(第21代目うたのお姉さんの)小野あつこさんと交わされた言葉は?
よしひさ 楽屋で「卒業、決まったよー」と。もともと入ってきた頃から頼りになる存在だったので、「何の心配もないし大丈夫だよ」と伝えました。
りさ あつこお姉さんからは、「寂しいですね…」というお話ももちろんありましたが、「こういうとき、どうしていましたか?」と、私たちが気を付けていたことや意識してやっていたことを、聞いてくれるようになりましたね。彼女自身がしっかり解釈して子どもたちに伝えようとしてくれているんだなーと。「あなたたち2人なら絶対大丈夫だよ」と伝えました。
―ところで、番組内で見せる“変顔”というか、とてもユニークな表情をされますね。
よしひさ うたのお兄さん、お姉さん中心で進めていく番組なので、私はそんなにセリフが多くなくて、話さないこともあるんです。「そのときに、自分がいるポジションってなんだろう?」と。お兄さんたちの言葉に対する反応を表情で示したり、表情や動きでセリフを言っているような感覚でした。子どもたちが席に戻って手遊びをするときも、僕たちは歌わないけれど、もうひとアピールした方が楽しいなと思って。変な顔をしていたというよりは、表情豊かに反応していたという感じですね(笑)。
―りさお姉さんは、もともとパントマイムをやられていたんですか?
りさ 「パントマイムのお姉さん役を募集します」ということでオーディションを受けたんですが、合格してから初めて、しっかりレッスンをしていただいたんです。私も初心者だったからこそ、「子どもたちにどうやったら分かりやすく伝わるのかなー」「どういうふうにやったら、『楽しい!』『やってみたいな!』という気持ちが起こるのかな」などとすごく考えながらやっていました。あとはやっぱり、顔と体で楽しさを表現するのは大事なので、表情の豊かなお兄さんたちから勉強していました(笑)。
―今後挑戦したいことを教えてください。
よしひさ このまま体操の指導は続けていきますが、プラス、事務所に入ってテレビに出たりメディアの仕事などもやっていくので、より、できることも増えていくと思います。選ばず、どんどんチャレンジしていきたいなあって思っています。例えば、今までけがのことなどを考えてできなかったようなスカイダイビングなんかも積極的にやっていきたいです。
りさ 私はミュージカルを勉強してきたので、7年間やってきたことを生かして、最終的にミュージカルの方面に行けたらいいなあと思っています。また、7年間歌う仕事をしていないので、そちらも、再スタートを切るような感じで、新しい世界に一歩踏み出せたらいいなと思っています。
(取材・文・写真/千葉美奈子)