柚希礼音(ヘアメイク:CHIHARU/スタイリスト:YOSHI MIYAMASU(SIGNO))、ソニン(ヘアメイク: ERIKO ISHIDA(Air Notes.)/スタイリスト:Die-co★(ダイコ★))

 ブロードウェーの新進気鋭の作曲家コンビ、クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーと演出家の板垣恭一をはじめとする日米のクリエーティブチームが共作する、A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」が世界に先立って上演される。自由を求めて闘った女性たちを描く本作に主演する柚希礼音と、共演のソニンに意気込みを聞いた。

-日米共作の新作ロックミュージカルを日本で初演するという珍しい企画です。出演が決まったお気持ちは?

柚希 メーンキャストが全員女性というミュージカル自体が珍しく、興味深いなと思いました。恋愛ものの作品が多い中で、女性の労働問題を描いている作品も珍しいので、楽しみです。

ソニン 私自身は、(本作のように)一から作り上げていくというタイプのオリジナルミュージカルに参加するのが初めてなので、プレッシャーがありながらも、ただただ楽しみです。緻密に作り上げていければと思いますし、繊細さがブロードウェーの楽曲とうまく融合すればいいなというワクワク感もあります。

-お二人は本作が初共演だそうですが、お互いの印象は?

ソニン めちゃめちゃチャーミングな方だと思いました。実際にお話させていただくと、舞台上で見るかっこいい雰囲気とはまた違って、とてもフレンドリーに接してくださって、一気にファンになってしまいました。

柚希 すごくうれしい! 舞台で拝見するソニンちゃんは、いつ見ても素晴らしくて、私もリスペクトしています。相乗効果が生まれて、お互いに学びながら作っていけると思うので、お稽古が楽しみです。

-それぞれが演じる役柄について教えてください。

柚希 私が演じるサラ・バグリーは、知性と文章の力で(労働争議を)闘う女性です。しっかりと学んで作り込まないと納得して演じられない役柄だと思うので、知的な人がどんな思考を持っているのか学んでいこうと思っています。

ソニン ハリエット・ファーリーはサラとは反対の性格で、保守的で現実主義であり、それでいて、リーダー的な貫禄も持っていないといけない役どころです。自立した女性の強さは意識しようと思います。でも、柚希さんのサラとの対比が出たら面白いと思うので、柚希さんが作り上げる“強さ”とはまた違った“強さ”を作り上げていこうと思っています。

-柚希さんが演じるサラは実在の人物なんですね。

柚希 そうなんです、ですのでしっかり調べて取り組まなければと意気込んでおります。私は、実在の人物を演じるのはすごく好きなんです。例え、皆さんがその人物のことをイマイチな人だと思っていたとしても、最終的に(演じる自分だけは)一番の味方になることができる。だから、実在の人物を演じるのは楽しいですし、うれしいんです。

-今回は圧倒的に女性キャストが多い作品ですが、女性が多い稽古場は男性が多いときとまた違った楽しみがありそうです。

柚希 宝塚とはまた違った雰囲気になるのかなとは思いますが、女性だけの稽古場は、女子高みたいなノリで楽しいですよ。グルメや美容や、そんな話題で盛り上がります(笑)。

ソニン 私は女性ばかりの作品は今までないと思います。だから、どうなるんだろうって未知で、楽しみです。

-本作では、「女性」が一つのキーワードになっています。そこで、お二人が女性という性について考えていることを教えてください。

ソニン 数分で語れる質問じゃないですね(笑)。でも、柚希さんがどう考えているのか、すごく興味があります。柚希さんはそれを超えた世界出身ですが、「女性」について考える機会はありました?

柚希 宝塚を辞めたときに、「女性になったから髪を伸ばすんですか? スカートを履くんですか?」ということをたくさん聞かれて、そうしなくちゃいけないのかなって自分でも分からなくなったことはありました。でも、退団して4年がたって、自由でいいんだなと身をもって知りました。スカートをずっと履かなきゃいけないわけでもないし、女性らしくいなくちゃいけないわけでもない。退団当初は、女性だからなるべく小さく見えるようにと気にしていましたが、「これが私」でいいんだなと思っています。

-宝塚時代は、あえて女性を消そうという意識があったんですか。

柚希 確かに、女性らしい丸みのあるラインが出ない洋服を選んだりということはありました。でも、女性を消すというよりは、(男役は)女性が考える「こうだったらいいな」をいっぱい詰めることだと思います。女性が作るから男役も楽しいんです。ずっと女性のソニンちゃんはどうなの?

ソニン 私は、女性は一歩下がってついていくみたいなタイプではなく、女性を尊重してほしいという気持ちが強いんです。私、理想の男性のタイプはレディーファーストをマストでしてくれる方なんですよ。

柚希 うんうん、分かります、それ。

ソニン レディーファーストにしてもらうと、女性を敬ってリスペクトしてくれているんだなっていうのが伝わってきます。女性は、生物学的に男性より弱くできていると感じます。だから、男性と同じように生きているってこと自体、やっぱり女性の方が頑張っているってことだと思うんです。例えば、同じ舞台をやっていても、俳優さんより女優さんの方が絶対にスタミナをつけなくちゃいけないものです。そういった努力や背負っているものを男性に分かってもらえるのともらえないのではすごく差があると感じます。だから、女性としては、レディーファーストにしてもらえると、尊重してもらえる気がしてうれしいなと思います。

-読者へのメッセージを。

柚希 すごくすてきな曲と、女性たちの活気ある舞台となると思います。これだけ女性がそろう作品はなかなかないと思うので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

ソニン 世界初演の作品なので全貌が分からないとお思いの方も多くおられると思いますが、この作品を見て良かったと思っていただけるような作品を作りますので、見にいらしてくださるとうれしいです。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」は、9月25日~10月9日に都内・TBS赤坂ACTシアター、10月25日~27日に大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演。
公式サイト https://musical-fg.com