八嶋「8歳の息子には塊として持って帰ってほしい」
――子どもに見せるとしたらどのようなポイントを見てほしいでしょうか。
八嶋:この後行われる試写を8歳の息子が観にくるんですけれど(インタビューは『アーロと少年』プレミア試写会の1時間前に行われました)、本人もパンフレットを読み込んできているんで。
大きい塊としてとらえてもらいたいですね。
友情の物語もあるし、親子の関係もあるし、本当の強さとは何か、個人の問題もあるでしょうし。
塊として持って帰ってくれて、それがうまく言葉にできなかったり、いろいろあるとは思うんですけれど、そういう塊を受け取ったという経験が彼に返ってくるんじゃないかな、トータルとして塊を持って帰ってほしいなと思います。
松重:子どもは素直な気持ちでこういう映画は2人の友情というところからでてくる登場人物との関係とかを素直に受け止めるので。
素直に見てください。
僕はたまたまついてきちゃったお父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃん、それかたまたま暇だったから観ちゃった思春期とか新社会人とか。
そういう人たちが「えーこんなところで俺泣いちゃう」というか「こんなところで胸に刺さっちゃう」というところが仕掛けられているので。
子どもと一緒についてきた大人がざまみろというところはありますね。
そこを願いたいなと思います。
片桐:最初に『101匹わんちゃん』を観たときに、街に出たら日比谷の街がロンドンに見えたことがあって。
それくらい映画に浸ってもらいたいというか。
隕石が通り過ぎて恐竜が畑耕したり牛追いしたりしているなんてありえない世界じゃないですか。
そういうありえない世界を想像する―文字もこんなんだったらとか、いやもっとこうなっているはずだよとか―そういう想像をする楽しさをいっぱい持って帰っていただきたいです。
「恐怖を受け入れる」というメッセージ
――吹き替えをしてみて印象的なセリフはなんですか。
八嶋:松重さんの「恐怖を受け入れる」というセリフです。
アーロのお父さんは恐怖を乗り越えるためにもっと頑張れ、というのがどえらい振りなんですよね。
受け入れると言うのは大人に響くと思います。
松重:『アーロと少年』では、相手を許して受け入れるということが言葉を通さずに行われます。
人間は言葉を駆使してもお互いを理解できない、許せないということに満ち溢れています。
言葉じゃなくてお互いの関係性の中で少しずつ近付いていくということが言葉の無さの強さというか、僕らに対して言葉を使っても何もできない無力感があると思います。
片桐:最初声優の配役について、少年は誰がやるんですか? と聞いたら「ないです」と言われて(笑)。
もしかしたら言葉が無い方が人間たくましくなったのではと思えるのが面白いと思います。
セリフだと松重さんの「恐怖を受け入れる」でしょうね。
地球上で一番強い恐竜に怖いものがあるというのがいいなあと思いました。