東京の都心から外れたエリアに注目の施設が登場する一方、都心の一大ターミナル駅・渋谷もまた大きく変わろうとしている。そのきっかけとなるのが、かつて渋谷を代表する文化発信基地であった東急文化会館の跡地に建設された、地下4階、地上34階の高層複合施設・渋谷ヒカリエだ。4月26日(木)にオープンする渋谷駅直結の本施設は、オフィス、商業施設「ShinQs」、劇場をはじめとする文化施設から構成され、新しいファッションや文化の拠点を目指す。

「渋谷ヒカリエは、若者の街というイメージがついたことで渋谷から離れていた大人、特に減っていた30代以上の女性を呼び戻す存在として期待されています。副都心線の開通によって、池袋の劇場で飽き足らない人々や、新宿の百貨店のお客さんも総取りできるアクセス手段も完成しています」(森野さん)

押上、お台場、渋谷に誕生する3つの施設の特徴は、オフィスと商業施設を組み合わせた複合商業施設であるという点だ。六本木ヒルズや新丸ビルなど、ここ10年、複合商業施設が街の再開発の大きな柱となってきた。この春に新しく完成する施設によって、それぞれの地域に新しい価値が生まれ、大きな発展が期待できる。

 しかし、これらの施設を一時的なブームに終わらせないためには、さらに一歩進んだ開発が必要になると森野さんは言う。

 「江戸以来、東京は水辺都市として栄えてきました。江戸から持っている東京の本来の魅力を活かし、水路を楽しませるような街づくりに可能性を感じます。渋谷の地下では渋谷川の流れが見えるような空間づくりが望ましい。スカイツリーは隅田川を、ダイバーシティ東京は東京湾を利用し、ツアーにして提供すれば、海外に向けて水辺都市・東京をアピールできる。これが'12年以降の東京の都市開発のミソとなるでしょう」(森野さん)

東京の街づくりは将来的には“水辺都市への回帰”がテーマになると森野さんは語る。この春、新施設の誕生によって大きく動き出した東京は、水の都として生まれ変わることができるのだろうか。