その中でも、津堅さんが注目作として挙げるのは、『おおかみこどもの雨と雪』『宇宙戦艦ヤマト2199』『サカサマのパテマ』の3作品だ。『おおかみこどもの雨と雪』の監督は、『時をかける少女』『サマーウォーズ』などで知られる細田守。3年ぶりの新作に期待するファンは多いはずだ。また、『宇宙戦艦ヤマト2199』は、『機動戦士ガンダムΖΖ』などのメカニックデザインを手がけた出渕裕が総監督を務め、SFファンの心を掴む作品となることは間違いないだろう。
そして、注目の若手・吉浦康裕の監督作『サカサマのパテマ』は、現代の日本アニメの特徴が色濃く表れている作品だと、津堅さんは指摘する。
「世界の標準であるフル3DCGアニメとは異なり、日本では2Dのセル画タッチのキャラクターと3DCGで描いた背景とをミックスする手法が取られています。『イヴの時間』で2Dキャラクターと、実在の風景を精緻に再現した3DCGの背景とを絶妙にミックスした吉浦さんが監督を務める本作は、これからのアニメシーンを語るうえでは見逃ない作品。web配信アニメの『イヴの時間』で固定ファンを掴みながら、一般の劇場作品へ進出を果たした吉浦さんのプロセスも現代的です」
また、昨年は『TIGER & BUNNY』が作中で実在企業のロゴを登場させたことでも話題になった。今年も新しい仕掛けを持つ作品は登場するのだろうか?
「現在、アニメは新しいビジネスモデルを模索している最中です。その中で、昨年はオリジナル作品の増加や企業とのタイアップなどの特徴が生まれました。今後数年は新しい形を提案し、スタンダードになり得るかを見極めていく時期が続くでしょう」
アニメ界は進化を遂げるための、激動の時期を迎えそうだ。